翌日。
入荷するのが12時半か、遅ければ2時過ぎになるので、届き次第連絡する、ということだったが、11時頃だったか、電話がかかってきた。
急ぐ必要もないし、今日はこれだけが目的のショートツーリング。
12時半頃、今度はSRで出た。
品物を受け取り、消費税併せて一万円少々を払い、引き返す。
早く使ってみたいから、寄り道をせず帰るつもりだが、一件だけ例外。
昨日の喫茶店。自慢しに行かなければ。
予定通り、喫茶店の前にSRを駐め、サイドバッグから買ってきたものを取り出す。これを忘れちゃ自慢できない。
意気揚々(?)と店に入ろうとしたら間が悪かったみたいで、今日はカウンター席は一杯。これでは自慢話ができない。
しょうがないからテーブル席・・・と思ったら、四人掛けの席は葬式の帰りらしい喪服の、高齢の御婦人方が占拠している。
四人掛けの席は二つある。一方の四人掛けはテーブルが壁に付けられている。もう一方の壁に付ける形で、向かい合わせの二人掛けの席がある。
御婦人方は中央の四人掛けに、行儀よく荷物を足元に置いて座っている。
さあ、どうしよう。折角来たんだ、コーヒーを飲みながら説明書を読んでみるか。で?どこに座る?
空いてる四人掛けは明かりが弱いみたいだから、説明書の小さな字(と言うほど小さくはないけど)は、近視で乱視で老眼で、何より薄暗いと字が見えにくくなっている身には不安だ。
当然、壁際の向かい合わせの二人掛けになる。
「女三人寄れば姦(かしま)しい」という。そこから「♪うちら陽気なかしまし娘 ♪~」というお笑いトリオのテーマソングもできた。
三人だって姦しいんだから、四人になったらそりゃもう・・。
四人掛けの席に四人で行儀よく座ってる御婦人方だって、その範疇から外れることはない、みたいだ。空いている席へ自分たちの荷物を置く御婦人方が多い昨今にもかかわらず、ちゃんと狭い席の下に置いているから、と言って三人の上をいく四人なんだから。うるさくてエアポンプの説明書が読めない。
いや、読めないのは修業が足りないんだから。集中力に欠けてるのは己の恥。昔のそろばん教室なんか計算しているときに太鼓を叩いて敢えて邪魔をする、なんてことをしたらしいけど。(ホントはムエタイの鳴り物みたいに精神を鼓舞するためだったのかも。)
聞く気はなくとも御婦人方の声が耳に入ってくる。説明書よりずっと推してくる。気が付いた。
四人が四人とも喧しいわけではない。主導権を握る人物が一人いて、それが一方的に喋る。そして合間に他の三人に合槌を求める。
特に求めなくとも、程よい間合いで三人の誰かが頷いたり、「それで?」と呼び水を掛けると「そうなのよぉ~、それでね」とまた一方的に喋り出す。喧しく感じるか否かは、この呼び水や共感の嬌声の音量の大小に拠る。
喧噪の中で、何とか説明書を読んでみた。充電器が必要、とある。これ専用の別売器なら、普通一緒に売っているから買っているわけだが、汎用の充電器があるらしい。汎用だから何処でも売ってるわけで、でもメカ音痴にはその「何処でも」が分からない。「『何処でも』の『何処』ってどこだ!?」
日を改めて、なんて言ってたらそのままになる。まずはセットだ。帰り掛け、家電量販店に寄り道しよう。
説明するより説明書を渡す方が早い。接続コードと充電器併せて三千円弱を払い、急いで帰る。とにかくセットだ!!