高山正之
《新聞が「投書欄」を巧みに使っているのを御存知?》
の続きです。
20年8月15日敗戦。
20年10月。GHQから新憲法を作るよう命じられる。
21年2月初め、松本烝治が試案を提出。が、相手にされず。
同年2月13日、GHQから英文で書かれた新憲法案を渡され、
同年2月22日の閣議で承認するよう、命じられる。
9日間で検討も審議もなし、「承認するよう命じられ」ている。
これが「政府はGHQと共同で天皇制と民主化を模索し、議会も審議を尽くした」と、どこをどう見たら言えるのだろうか。
「 加藤某76歳」は吉田清治並みの大ウソつき、ということになる。
加えて「マッカーサーは新憲法にGHQが関与したことを一切報道しないよう命じていた」。
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草案を審議する帝国議会も同じ。GHQに逆らえば議場から摘まみだされ、戻ってくる者はいなかった。
議員は変節していく。かくて直訳型GHQ欽定憲法が両院を通過した。
GHQは成立を待って新憲法の公布日を11月3日に指定してきた。この日付は近代日本を築かれた明治天皇の誕生日、明治節だ。その日に滅びの新憲法を日本に与える。マッカーサーの陰湿な笑みが見えてきそうだ。
つまり朝日が載せた投書には真実の一片もない。担当デスクもそれは百も承知で、でも朝日を読む者の大方は馬鹿だから嘘はバレないと思っている。
ただ読者もまるっきりの馬鹿ばかりではなく、首を傾げる者もいる。朝日はそれにも手を打った。8月15日付の評論家柄谷行人の憲法談議がその次の一手だった。
柄谷は「憲法が押し付けか自発的か」は問題ではないという。だって朝鮮戦争のとき「米国が再軍備を持ちかけたが、日本は抵抗した。日本は自発的に9条を選んだのだ」と。
これも尤もらしいが、米国の意図を無視している。
あの国の戦争は昔から形がある。ピークォート族をやるときはモヒカンに銃を持たせてやらせた。日本をやるときは支那人やフィリピン人に銃を持たせた。
目下の朝鮮戦争にフィリピン人を連れてきて戦わせるワケにはいかないから自国の黒人を使ったが、それが品薄になってきた。で、日本人を武装させて戦わせる気になった。
吉田茂はそれを知っていた。「お前が創った憲法に軍隊も交戦権も認めないとあるじゃないか」と言って拒んだ。米国に勝手な憲法を押し付けた責任をはっきり問うた。お前たち自ら血を流すがいい。
日本にとっては白人の横暴を免れる緊急避難行為だった。
それをもって国民があの愚かな憲法を「納得した証拠」とは柄谷もよく言う。
(2015年9月10日号)
高山正之著
変見自在
「朝日は今日も腹黒い」より
新潮文庫
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(妄言と言われそうだけど)
折に触れて思うのは、日本国憲法の前文中にある「諸国民の公正と信義に信頼して我らの安全と生存を保持しようと決意した」という文言だ。
「公正と信義『を』信頼して~」ならば意味ははっきりする。はっきり言えば「諸国」に我々の安全と生存を委ねる、全てお任せします、煮るも焼くも自由です、と言っていることになる。
つまり、世界(諸国)の被統治国となりますと宣言していることになる。「安全と生存」を自らの手で守るのが独立「国」だから。
それが「公正と信義『に』信頼して~」となると妙なことになる。意味が通じない。そういう言い回しは日本語にはないからだ。早い話「てにをは」が間違っている。
でも、「憲法」でそれは(たとえ英文の直訳であっても)決してあってはならないことだから、「『に』信頼して~」というのは間違った言い回しではなく、何か言葉が省略されているのだと取るしかない。
そうなると「諸国民の公正と信義【の全きこと】に信頼して我らの安全と生存を保持しようと決意した」とでもすれば、なんとか意味は通る。
「あなた方は神のごとき完璧な公正と信義を行うのでしょうから」と少々嫌味ながら、釘をさすことになる。
勿論、こんなのは冗談ですよ。ふざけて書いて見たただけです。
「諸国民の公正と信義に信頼して我らの安全と生存を保持しようと決意した」?
こんなでたらめな文言の憲法なんかあってよいわけがない。
それこそ「心の持ち様」の問題です。