「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和四年(2022)4月4日(月曜日)弐
通巻第7286号
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(読者の声4)
戦前の新聞でウクライナ問題に触れたものがある。
神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫 軍事(国防)(34-105)
満州日報 1934.10.8-1934.10.21 (昭和9)
【国防の本義と其強化の提唱】
http://www.lib.kobe
u.ac.jp/das/jsp/ja/ContentViewM.jsp?METAID=10184765&TYPE=IMAGE_FILE&POS=1&LANG=JA
紙面イメージ12ファイル中の4ファイル目「人口及民族問題」
・精神要素に就ては既に述べた。次に考慮すべきは人的要素としての人口及民族の問題である。人口は今や日本内地にのみで六千五百万、全国で九千二百万、満洲国と共同防衛の場合を考うれば一億二千万に達し、米ソに匹敵する堂々たる世界の大国である。人的要素に関する限りに於ては有利なる状態に在りと謂うべきである。
・次は民族の問題である。ソ国の如きは百八十有余の種族より成り民族間の反目甚だしく、殊に三千万の人口を擁するウクライナ人の如きは機会だにあらば独立せんとの希望に燃えて居る。独国が同化せざる獅子身中の虫たる猶太人に如何に禍いせられたるかはヒットラーの猶太人排斥の徹底せる政策に見るも明瞭である。米国亦各種の民族の混合国家であり、就中一千二百万の黒奴を有することは彼の永久の悩みである。
・国家内の民族を相反目せしめ、独立運動を支援し、母国の崩壊を企図するは、近代戦争に於ける思想戦の重大戦略であることに想到すれば、民族問題は国防国策上軽視すべからざるものである。本件に関しては左記事項に留意を要する。
京城日報 1939.2.23 (昭和14)
【ソ連の穀倉を脅す独逸の東漸政策】ウクライナ問題の登場
http://www.lib.kobe
u.ac.jp/das/jsp/ja/ContentViewM.jsp?METAID=00510118&TYPE=IMAGE_FILE&POS=1&LANG=JA
・ソ連の黒河沿岸からドニエプル河流域並ポーランドのカリチア地方、更にチェッコ、ルーマニアの一部にかけて、少数民族が入り乱れて散在する中欧では珍らしい一民族の大集団が居住している。所謂ウクライナ人がこれであるがその総人口は四千万を超え(略仏伊に匹敵)22万8千平方マイルの広大な地域(ズデーテン地方接収後の大ドイツの総面積は22万9千平方マイル)に集団的に居住している。
・人口一千万に満たない小民族が夫夫独立の一国を形成している時に、かかる大人口を擁するウクライナ民族が異民族の統治下に満たされざる生活を続けているのである。ウクライナ問題は民族問題としてのみでも欧洲の平和を充分に撹乱し得る素質を久しき以前から持っていた。
・ウクライナの独立運動と結びついたのがドイツの東漸政策である。由来ドイツ東漸政策の進路には二方向があった。一つは三B政策の名を以て知られるハンガリーを経て小亜細亜に出る進路であり、他はチェッコ、ルーマニアを経てソ連領ウクライナをゴールとする進路である。
・然しドイツのウクライナ工作はその通路たるチェッコがフランスの衛星国として又ソ連の締盟国として存在した為に久しく阻害されていた。所がズデーテン問題はこの情勢を一変せしめ、解体後のチェッコがドイツの従属国に転化すると共に、ドイツのウクライナ進出の路は拓かれたのである。
・ウクライナはソ連の轂倉である。この黒土帯と称せられる豊沃な土地はソヴェートの主要食料供給地としての役割を果している。ドイツがソ連に代ってこの地域をその支配の下に置くことに成功したならば、ドイツ最大の悩みたる食糧問題は立ち所に解決するであらう。
・ウクライナの資源はただにこれのみに止まらず、世界最大の称あるドネツの無煙炭田を初め、鉄鉱、マンガン鉱等いずれもドイツの近代工業に恰好の原料の供給を約束している。
・ズデーテン問題解決後、ドイツのウクライナ工作が最初に表面化したのは、カルパト・ウクライナ自治政府の誕生である。チェッコ内に居住するウクライナ少数民族
はその居住する地域の名をとってルテニア人と呼ばれていたが、このルテニア人がズデーテン問題の紛糾に乗じて独立運動を起し、ドイツの後援を得て遂に自治政府の樹立に成功した。ウクライナ民族独立運動の口火はかくして切られたのである。以来ルテニア地方はウクライナ独立運動の策源地たるの観を呈し、久しく社会の表面から抹殺されていた独立運動の志士達がこの地を本拠として猛烈な活動を開始している。
・これと相呼応するかの如くドイツの独立支援工作も一段と熾烈化して来た。ナチス党の組織内にウクライナ部の新設はまだしも、最近は政府部内に公然とウクライナ局が設立された。ドイツの各士官学校ではウクライナの青少年が猛烈な軍事訓練を受けつつある。それでドイツからのラヂオが連日ウクライナ語で四千万の虐げられたる民族に呼びかけている。ドイツのウクライナ工作は現在の所着着として進みつつあるかの如くである。
・既にボーランドのウクライナ人はこの工作に反応して独立運動を開始したかに伝えられる。ウクライナ民族の居住地域はソ連、波(ポーランド)、羅(ルーマニア)、チェッコの四ヶ国にわたる。従ってウクライナ独立運動が成功した暁にはこれ等の国はすべて若干の被害を受けなければならない。就中最も影響の甚大なのはウクライナ人の総人口に約八割三千二百万を自国領土内に持ちその居住区域も最も広大なソ連である。
・粛清工作がウクライナ地方に於て特に峻烈を極めているというのも、ソ連当局がその独立運動に極めて神経をとがらせていることを物語るものであり、更に同方面の国境一帯に堅固な要塞を構築中とも伝えられる。
・ヒトラー総統はズデーテン問題の紛糾が最高潮に達した当時「ズデーテン地方はドイツが欧洲に於て求める最後の領土的要求である」と言明した。従ってドイツのウクライナ工作は将来に於ても直接領土獲得政策としては現われず、現在の如きウクライナ人の独立運動支援工作として強行されるだろう。その支配形式は如何なるものであれ、ドイツがウクライナを実質的にその勢力範囲とするまではドイツの東漸政策は続けられると見なければなるまい。
・ドイツのこの工作が直接ソ連領ウクライナで具体的に表面化する時が独ソ衝突の時機である。そしてこの時機はあまり先のことではなさそうだ。ドイツの前進陣地はルーマニアを距ててソ連とは目と鼻の間のルテニア地方にまで進められたのだから。
ドイツのポーランド侵攻以前に独ソ衝突を予測している。日本のアジア民族独立支援と重なるところがありますがドイツはスラブ人など劣等民族と蔑んでいた。ウクライナにおけるドイツの独立支援工作がネオナチにつながり、またガリツィアのユダヤ人がイスラエル建国に関わることになる。ナチスのユダヤ人部隊というイスラエルにとって触れられたくない問題もあるし、ウクライナにおいては反露のユダヤとネオナチは両立するのだ。欧州の民族問題は複雑すぎるので日本は極力かかわらないのが吉。
(PB生、千葉)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
また日記の再掲です。と言っても今年になってからのものですが。
↓
「国があるから国家間で悶着(戦争)が起こる。だから国なんかなくしてしまえばいい」、という考え方があります。そしてその考え方がここ数十年で随分勢力を拡大してきている。グローバル化ってやつです。LGBTQなんてのはその延長線上にある。
言いたいことは分からないでもない。しかし、彼らは大事な問題を考えていない。それは「人間は人として生まれるが、人間として育てられ、人間として社会に参加し、社会を形成していく存在である」ということです。
「世界を形成する『ヒト』という生き物」である期間は全くない。生まれた瞬間から「社会を形成する『人間』という存在」であり、人間として一生を終える。それが人間の在り方です。そしてその『人間』は、それぞれの『国』という社会に所属し、そこで人間となる。目の色、肌の色、骨格、身長等々その社会の中で、それぞれに考え悩み個々に結論を出して、それを以て社会に飛び込んでいく。その大事な生育期間あってこそ、人間です。日本人は日本人、アメリカ人はアメリカ、朝鮮人は朝鮮の、それぞれの考え方、生き方をまずは学んでこそグローバル化に踏みだすことができます。
言いたいことは分からないでもない。しかし、彼らは大事な問題を考えていない。それは「人間は人として生まれるが、人間として育てられ、人間として社会に参加し、社会を形成していく存在である」ということです。
「世界を形成する『ヒト』という生き物」である期間は全くない。生まれた瞬間から「社会を形成する『人間』という存在」であり、人間として一生を終える。それが人間の在り方です。そしてその『人間』は、それぞれの『国』という社会に所属し、そこで人間となる。目の色、肌の色、骨格、身長等々その社会の中で、それぞれに考え悩み個々に結論を出して、それを以て社会に飛び込んでいく。その大事な生育期間あってこそ、人間です。日本人は日本人、アメリカ人はアメリカ、朝鮮人は朝鮮の、それぞれの考え方、生き方をまずは学んでこそグローバル化に踏みだすことができます。