CubとSRと

ただの日記

ML主義による革命とは、まずは社会を破壊することから

2022年04月01日 | 心の持ち様
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
    令和四年(2022)3月31日(木曜日)
        通巻第7280号

書評 BOOKREVIEW 
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 こうやって西側社会の秩序が少数派によって破壊された
  LGBTQもジェンダーもポリコレも根っこに潜むのはマルクス主義だ。
   ♪
ダグラス・マレー著、山田美明訳『大衆の狂気』(徳間書店)
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 ジェレミー・ベンサム(十八世紀から十九世紀の英国の法律家、思想家)は社会の目的を「最大多数の最大幸福」とした。多数派の専制(WINNER TAKES ALL)といったアメリカ的な民主主義を説いたのではなかった。
 世の中は様変わりになった。
 少数派が声高に権利を主唱し、多数派の幸福を破壊し、世論をリードし、政治を鋭角的に巻き込んだ。
 基軸を支えたのは左翼メディア、とりわけ操作された映像だった。
 男女同権など、日本では天照大神の御代から実践されてきた。卑弥呼も推古天皇も持統天皇も女帝だったように。日本こそ自然発生的に「最大多数の最大幸福」を欧米より先に成し遂げていた。このあたりの議論は始めると際限がないので、この稿では触れない。

 この二、三十年ほどの間に、擬制の民主主義は社会の基本にあった何かを壊した。最小の集団が最大の国民を代弁するなどと僭称し、最悪の価値観が幸福だと言ってのける。嫌煙権も禁煙ファシズムである。これは「新興宗教」と言える。

 そして近未来の見通しも著者によれば、暗いのである。
 「社会的公正というこの新興宗教が、重要な問題に関する議論がなされていないこと、矛盾が内在していることを指摘するだけで終わるようなものなら、そもそも始まることさえなかっただろう。内在する矛盾のためにこの運動が収まってくれることを期待する人々は、ずいぶん待たされることになるに違いない。その理由は、何よりもまず、この運動の大部分がマルクス主義的な下部構造をもっているからだ。
 つまり、こうした悪夢のような矛盾に気づき、自分たちが選択した道が正しいのかどうかわからなくなるどころか、むしろ進んでその矛盾に突進していこうとする意思を内在している」(438p)。

 ヘイト、男女差別、少数民族差別、黒人差別、あれもこれもいけない。人前でうっかり何かをしゃべるとヘイトと非難される。まさに行き過ぎた多様性尊重は、ついに白人原罪論を産み、昨今のアメリカではユーモアも通じなくなって「社会は破壊された」。
 この根底に潜むのが著者の指摘するマルクス主義である。
 LGBT、フェミニズムから発生し、暴力的な熱狂を運んだのは、BLM(ブラック・ライブス・マタ−)だった。結果、警官は目の前で黒人が犯罪をおかしていても見ているだけ。いや、見ないふりをするか、現場を離れる。
 全米に多く存在する地域的な左翼首長を選んだ自治体では極端に治安が悪化した。これが米国の現状である。

 マルクス主義者からみれば「革命前夜」。メディアの偏向万歳である。
 口を開けばジェンダー、人種、おまえは差別主義だというレッテル貼り。おまけが地球温暖化、原発反対、不公平、男女同権。
 そのうち「米帝国主義打倒」ってスローガンも復活しそう。本書は、こうした多様性尊重の弊害が、いかに社会を、旧来の秩序を破壊したからを内部から告発する強みがある。著者自身がゲイであることを認めている。

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 いつも思うことだけれど、民主主義という社会体制の中で(その社会体制に守られながら)その社会を破壊するための活動をする。それが社会主義革命運動だ。
 「社会主義社会を打ち立てるためなんだからそれは正しいことなのだ」。
 「そのためには暴力を用いても構わない」。
 「何故なら現体制だって自身、常に警察や自衛隊という暴力組織を用いているのだから」。
 しかし「日本共産党は昔から武力革命を否定している。それが証拠に9条を護れ、と戦後一貫して主張し続けてきた」・・・・・。

 武力を用いない、言論による社会の破壊活動は「言論・表現の自由としてこれを認める」のが民主主義社会。だから事の真偽は別として、共産党は戦後、合法政党として認められ、最も長い期間存続している政党となった。
 
 こう書くと「へえ~、共産党って筋が通ってるんだ。なかなか見どころがあるじゃないか」なんて思う人が一定数いる。
 現社会の破壊が党是であり、仮に現社会の破壊によって新たに社会主義社会が作られたとしたら、そこに「言論・表現の自由としてこれ(社会主義社会の破壊活動)を認める」なんてことは絶対ないのだけれど。
 何故なら「ダメな現社会を破壊して、理想の社会を創ったのだから、それを否定するなんて社会に対する反逆であり、理想の社会に存在することは許されない」のだから。 
 

コメント
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