「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和四年(2022)4月15日(金曜日)弐
通巻第7303号 より
書評 BOOKREVIEW
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なぜミロセビッチ、カダフィ、サダムが悪魔になったのか
いまなぜプーチンだけが悪なのか?
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高山正之『変見自在 バイデンは赤い』(新潮社)
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バイデンは赤い、というより馬鹿である。こんなのが世界一軍事力を持つ国のトップだから、とんちんかんな外交、それも思いつきばかりなのに『戦略』などというから、有権者も愛想をつかす。民主党系の世論調査でもバイデン不支持が六割に近い。つまりバイデン政権はレイムダック入りしている。
評者(宮崎)は、本書を読みながら、オルテガ・イ・ガセットの『大衆の反逆』に書かれた次の箴言を思い起こさずにはおられなかった(神吉敬三訳。ちくま文庫)。
「大衆の反逆とは、人間の生がわれわれの時代にいたって経験した驚異的な成長そのものに他ならないからである。しかしその裏側は実に恐ろしい様相を呈している。すなわち、裏面から見た大衆の反逆とは、人類の根本的な道徳的退廃に他ならないからである」
バイデンが挑発し、まんまとしかけたウクライナ戦争で、英米がしゃかりきにコメディアン大統領を支援するのは在庫武器一掃。英米軍需産業はウハウハ。犠牲はウクライナ国民。そして難民は東欧諸国に引き受けさせた。
似ているなぁ。
日本を挑発して、真珠湾攻撃を誘導し、日本をヒトラーと同一視し、物量で反撃を展開し、無条件降伏に追い込んだ。原爆投下も50の都市の無差別爆撃も戦争犯罪だが、日本だけを悪として、自らの残虐行為はそしらぬ顔をした。
ロシアをいじめ抜き、『正義』と喧伝する英米だが、日本のメディアが裏の意味、本当の英米の意地悪な意図も考慮せずに「プーチンが悪」と決めつけている。洗脳されるほうも、考える力が弱くなった。
それにしてもスラブ民族とは、言語的には「奴隷」の意味であり、ギリシア正教を信仰したがためにカソリック、プロテスタントともどもキリスト教世界からは異端視され、馬鹿にされてきた。
高山氏は言う。
「欧米の白人はロシア人を辱めてよろこぶ癖がある。そのせいか、20世紀、ロシアは共産主義という悪魔と躊躇いなく契約した」
タタールの頸木から離れ、その屈辱の桎梏を跳ね返したピョートル大帝とエカテリーナ女帝を、プーチンは尊敬し、ナショナリズムを基盤にロシアの国益を追求するから、ロシア国内では支持率が82%ほどある。
「米メディアはウクライナが汚職に塗れ、人身売買の拠点として知られた悪徳国家でNATO加盟の資格に欠けるのを十分承知なのに『虐げるロシアから手を切って今度こそ平和国家にしてあげよう』だと」。
中国は老獪に様子見、ウクライナとは密接な軍事技術の絆があり、裏では静かにロシアを支援している。
トルコ、イスラエルは鵺のように動き、BRICSは久しぶりに団結して米国とは異なる路線、ここにハンガリーが便乗した。
いわゆる高山史観の辛口シリーズ第十六弾はバイデンとともに中国、韓国の奸計を俎上に乗せ、舌鋒鋭い批判、基軸は突拍子もない嘘を書き続ける朝日新聞のフェイクを暴くことにあり、日頃の鬱積がすぅーと消えてゆくような爽やかな言葉で紡がれてゆく。
「欧米が善でプーチンが悪という二元論は間違いである」と地政学の権威、ジョン・ミアシャイマー=シカゴ大学教授は指摘している。
(転載了)
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世界は既にプーチン以後の世界について考え、行動し始めているみたいだけど・・・。
「歴史は繰り返す」。
プーチンの首を挿げ替えても、基本同じことが繰り返される。一度「社会主義」という「新しい考え方」で国を創ったからには、そしてそれが70年も続いたからには、その「考え方」は三世代くらいに渡って残存する。
それはバイデンの首を挿げ替えてもやっぱりアメリカは同じことをするということでもある。
加えて、一度先住民から土地を奪い取り、先住民を滅ぼして「合衆」国という美名で国を創ったからには、殲滅思想や人種差別は三世代くらいで消えることはない。LGBTQと人種差別や殲滅思想を同列に考えているのを見れば分かる。