「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和四年(2022)8月8日(月曜日)弐
通巻第7426号
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「クレージー、ナンシー・ペロシ」とトランプが非難
台湾訪問は軍事緊張をもたらし、周辺国を不安に陥れた
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共和党上院議員の過半が、民主党のペロシ下院議長の訪台については意外に褒めた。
「彼女のこれまでの言動は殆ど間違いだが、今回ばかりは褒めて良い」とにが笑いを誘う内容だった。
ただし、ペロシに金魚のウンコのように随行した下院議員五名は全員が民主党で、共和党議員は誰も参加しなかった
中国は軍事威嚇で台湾ばかりか、日本と米国を脅迫した。その軍事演習の実態をみると、戦闘機やドローンの配置の迅速性と、台湾海峡封鎖能力があることがわかる。
8月5日、トランプ前大統領は、ウィスコンシン州の集会で、「狂ったナンシー・ペロシ」と批判のフレーズ、「CRAZY NANCY PEROSI」を口にした。
ペロシの台湾訪問は北京にエスカレートさせる口実を与えたのだ、とし、訪台は「中国の夢」であり、中国が大規模な軍事演習を行う口実を与え、米中の外交関係を断絶させた。ペロシが「大きな摩擦と憎しみ」を引き起こしたと主張した。
トランプは、現在全米各地で開催されている共和党の集会に演説行脚をしており、たとえば6日にはミシガン州で数万の聴衆を前に一時間二十分の大熱演。大歓声に包まれた。2016年の予備選で、熱狂的なトランプブームが巻き起こったが、その再来のようにトランプ支持はまったく衰えていない。
中間選挙の共和党候補指名レースで、トランプが推薦する候補の、じつに90%が当選している。
中国はペロシ訪台を口実に弾道ミサイルを11発発射して、軍事威嚇を開始し、実弾による大規模な軍事演習を展開したばかりか、中国の税関に命令をだして台湾からの輸入品に制限を課した。
さてトランプのペロシ批判の特徴は何かと言えば、中国株がからむスキャンダルである。
ペロシ議長の夫君は中国と広くビジネスをしており、中国銘柄で株取引にも手を出していた。
インサイダー取引を云々されたため、夫君は損切りで関連株を売却したとも伝わる。
バイデン政権は、ペロシ訪台直前の7月28日に、米国の半導体開発のため527億ドルの予算を決定した。このなかにはTSMCのアリゾナ工場誘致補助もふくまれる
ペロシは台湾総統府で、蔡英文総統と面会したときにも五人の随行議員を紹介し、「この議員たちが法案の成立に努力した」とわざわざ説明を加えた。
ペロシの夫ポールは台湾の半導体株を購入していた。
米紙ワシントン・ポストは8月2日付けで、台湾を訪問中のペロシ米下院議長が半導体受託生産世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の劉徳音会長と会談すると報じた。
結局、同紙報道の所為か、翌日(8月3日)のペロシとTSMCトップの会談は台北で実現しなかった。
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「下院議長が帰ってから演習」だ、なんて、何考えてんだと思ったけど、それで前の日記に「誤射撃の心配はなくなったけど」と書いたんだけど、浅慮でした。
アメリカはそれで良いかもしれない。けど、あの演習地域、それもミサイルを飛ばした地域、ミサイルの半分以上は日本のEEZ域内に着弾する、といった計画だったようだし、何よりも台湾の上空をミサイルが通過することや、沿岸からのほぼ上陸作戦の予行演習ってのは、脅し以外の何物でもない。北朝鮮がミサイル持ってるぞと吠えるのとはわけが違う。
ただ、だからと言って演習は演習。仮に実行しても今の戦力で、台湾も当然日本も破ることはできない。
いつも敗北は国民の「意思」にかかっている。「中華民国」派と「中台統一」派がいる限り、脅しの意味合いからいつ実際に軍事侵攻が行われても不思議ではない。(「中華民国」派と「中台統一」派が内通者になり得るから)