朝、刈った草の始末をしていた。
家の裏道に生い茂っていた薄は背丈を超えるほどに伸びていた。
茎も憎たらしいほど太く、刈ったやつを束にして剪定鋏で細切れにしてやろうとするのだが、鋏を広げ切っても挟み切れず、切るのにも一苦労。
細切れにするために、こちらも汗をぽたぽた落としながら頑張るのだがなかなか思うようにいかない。
「ここで意地になって腰を屈めたまま、更に奮闘してもこれは勝ち目がないな、今日はこの辺で勘弁してやろうか」
、と思った時、突然「ミ~ン、ミンミンミン、・・・」という大きな鳴き声。
みんみん言ってるからみんみんぜみ。そこまでは良い。
正式名称は何て言うんだろう、はて?
考えながらどこで鳴いているのか辺りを見回す。蝉の止まる様な木はない。
「おかしいな、この辺り・・・」とみた家の壁に、思った以上に大きな蝉が。
頑張って雌に存在をアピールしてるんだよなぁ。頑張れよ。
・・・・ところで、みんみんぜみの名前。
みんみんぜみはみんみんぜみ。他に名前はないらしい。
昨晩は、はっきりした声(音?)で「カナカナカナ・・・」と鳴く蝉がいた。姿は見てないけど。
あいつは「日暮らし」というんだっけ。「その日暮らし」という怠惰な意味ではなくて、「日を暮れさせる」という、何だか時の使いみたいな別名があるのに、みんみんぜみは別名がない(らしい)。
みんみんぜみ、蝉の代表選手みたいな気がしていたけど、なんかちょっとかわいそうというか気の毒というか。
まあ、あの力強いけど妙な倦怠感を残す鳴き方に好意を持てないのかな?
スロットルを急に回してエンジンの回転を一気に上げるみたいに「ミィ~ン!ミンミンミンミンミン・・・・」と初めはびっくりするほど力強く喧しい。
・・・のに、終いになると音程はそのままながら息が続かず、最後に失速して「ミンミンミン、ミィ~~ン・・・」、と急激に音を下げ、死んだように静かになる。
その静寂を「石に染み入る蝉の声」と感じることもあれば、最後に情けないくらい音程を下げる終わり方に「何だよ、最後まで鳴き切れよ、怠け者が」と思うことも、また、全力を振り絞って鳴き続けたことに感銘を受けることも。
でも、「みんみんぜみ」の名前しかない。
それでいいのかな。蝉の「代表」なんだから。
何かの拍子に、夜、家の中に蝉が紛れ込んで、鳴き出した日には、そりゃあもう「喧しい」なんてもんじゃない。気が狂いそうになるくらいうるさい。「夏の風物詩」だ、なんて収まりかえっているわけにはいかない。叩き出さねばならない。そんなときの蝉はやっぱりみんみんぜみ?
いやいや、そういう時はアブラゼミが多いような・・・。
そうだ!気分転換に風鈴を買いに行こうか。