8月21日(土)
目が覚めたのが9時だった。
起きて朝食を摂ったら10時を過ぎるだろう。その時間になって家を出たんじゃ葡萄はきっと売り切れている。
だからと言って、朝食も摂らず勿論ストレッチも取り敢えずやったことにしても、9時半過ぎに家を出られればいいところ。
これはもう、今日は駄目だな、と思いながら、「それでも買い物だけでも行こうか」と思っているうちに昼。
「やっぱり今日は寝坊が全てに尾を引いた。止めるしかなかったか」
、と思った辺りで突然、雨音が聞こえ始めた。それも相当に強い。
ホントに「バラバラ」というマンガみたいな音を立てて降って来る。
えっ?「降るかも」と予報では言ってたけど、こんな降り方、するか?
まさに驟雨(しゅうう)。
それにしても「驟雨」なんて表現、よくも考えたものだ。
何頭もの馬が一緒になって地響き立てて駆け抜けていく様子、その轟音が短時間の強い雨脚と見事に重なる。
なんてこと書いてはみたが、実はこの「驟雨」という言葉も「驟」の意味も数年前まで知らなかった。
数年前から、あのダム湖のほとりの駐車場に行くようになって、たまたま居合わせた人に
「ここ、良いところだけど、近くにバイクの停められる喫茶店があれば良いですよね」
と話しかけたところ、
「『シュウ』、って喫茶店がありますよ」
という返答があった。
どんな字を書くんです?と聞くと、難しい漢字でちゃんと覚えてないけど、雰囲気のいい店で、とにかく安い、とのこと。
いつもの昔の少年軍団に聞くと、流石にみんな知っている。それでもしばらくかかって、やっと「馬に、聚楽館の聚」ということが分かる。神戸近辺の昔の少年少女ならすぐわかる「聚楽館(しゅうらくかん)」の聚。
全国的には豊臣秀吉の「聚楽第」。(でもあちらは「しゅう」じゃなくて「じゅ」だけど)
後になって気が付いた。「馬」はバイク。「聚」は「衆」と同じく人の集まり。
だからこの喫茶店の店名はバイク乗りが集まる処と連想させるようにつけられた(らしい)。
実際、道路に面したカウンター席の上半分の壁はガラス張りで、その下にバイクを斜めに停めるように作ってあって、コーヒーを飲みながら眼下の自分のバイクを見る、ってのはなかなか気分のいいものだった。
店の表を通るだけでも、整然と並ぶ色々なバイクとその上の大きなガラス窓を持つ洒落た喫茶店を見るのは、バイク乗りならきっと楽しかった筈だ。
どちらも過去形で書いたのは、近所から苦情が出てきた、とかで、もう停められなくなったから。(今は店の裏手に停めるようになって、ライダーズカフェの雰囲気はなくなった)
あれ?えらく脱線して題と全く関係のないことを書いてしまった。
戻ろう。
確かに「驟雨」だった。強くはあったが、短時間で止んだ。
「驟雨」「夕立」。片岡義男のバイク小説にも何度か出てくる情景。
夏でなければ、短時間でなければ、ツーリング時に遭うと間違いなく凹んでしまう雨。けど、驟雨、夕立の場合は妙に気分が高揚する。
残念ながら、この日の雨は夕立のように後は「見る見るうちに雲の切れ間から青空が広がって~」とはならず、止んだ後も曇り空のまま。