MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『まぬけなこよみ』

2024年12月15日 | BOOKS

『まぬけなこよみ』 - 平凡社

 

朝日新聞出版:文庫『まぬけなこよみ』

津村記久子さんの作品が好きだ。
「この作品、好きだなぁ」と思った本が「あれ、これも津村記久子さんだった」と、後から気がついて驚いたことが度々ある。
図書館で何気なく借りた本だったり新聞連載だったり、自分で意識して購入していないときに発生するので、作者にしてみれば失礼な読者である。
ファンタジーものは作家で借りることが多いのだけれど、それ以外は新刊コーナーや返されたばかりの図書を置いてあるブックトラックから選ぶことも多いので作者を気にせず読んで、後から「あ、これ」となったり……。

『まぬけなこよみ』もタイトルに惹かれて何気なく手に取ったような気がする。
平凡社では「芥川賞作家による脱力系歳時記エッセイ」、朝日新聞出版の文庫の帯では「超庶民派芥川賞作家のとほほで可笑しな四季エッセイ」と紹介されているのだけれど、たしかに ゆる〜く読めて ちょっと楽しいエッセイ集なのだ。
タイトルの中に「こよみ」とあるように、季節を感じる言葉についての想いやエピソードがつづられるのだけれども、「芥川賞作家」という堅苦しさは全く感じさせない、きっと何度読んでもクスッと笑ってしまう気がする1冊である。

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『レディ・ムラサキのティーパーティ らせん訳「源氏物語」』

2024年11月15日 | BOOKS

『レディ・ムラサキのティーパーティ らせん訳「源氏物語」』(毬矢 まりえ,森山 恵) 製品詳細 講談社BOOK倶楽部

NHK‐Eテレ「100分de名著」2024年9月放送「ウェイリー版・源氏物語」、NHKラジオ第一「高橋源一郎の飛ぶ教室」に著者出演で話題! 源氏物語はなぜ「世界文学」になったのか?...

講談社BOOK倶楽部

 

 源氏物語が苦手な人にこそ読んでいただきたい1冊です。
 私もこの本を高校生までに読んでいたら、古典の授業での光源氏への印象が大きく違っていただろうと思いますし、これから古典の授業を受ける若い人たちにも知らせたい気持ちでいっぱいです。とりあえず、本好きの中学生の姪っ子には要点だけでも伝えなければと思いました。

 まず「英訳された源氏物語を日本語に再翻訳する」という意義が全く理解できていなかった私ですが、この本を読んでいて本当に興奮さえ感じました。
 ウェイリーの「翻訳」は、ただ日本語の物語を英語にするというだけではなくて、英語版が作成された当時の文化・宗教だけでなく、彼の持つ膨大な多言語の知識と文学や詩への深い造詣を総動員した結晶といえる「発展的翻訳」であること。
そして、ウェイリーが『源氏物語』込めたものを再発見していく著者姉妹(毬矢・森山姉妹)のやり取りのワクワクとドキドキ。なんて、知的で高尚で……楽しそう!
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 千年前の古典語、百年前の英語、現代日本語の三つの世界。加えて、白居易「長恨歌」や『史記』などの中国の古典も現れれば、旧約聖書の世界も、シェイクスピアやイギリスロマン派の詩も、プルーストも現れる。
(『レディ・ムラサキのティーパーティ らせん訳「源氏物語」』p.278から引用)
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 病弱ゆえの膨大な読書量と家庭がバックグラウンドにある宗教知識を共有していたとしても、こんな素敵な交換日記をできる姉妹は他にはいないんじゃないかしら。(うらやましい!!)毬矢さんは俳人でもあり、森山さんは詩人でもあるとのこと。ウェイリーの『源氏物語』を日本語に訳し戻す際に、彼女たちの文化・宗教・言語・芸術の知識が総動員されて、新しい「発展的翻訳」が作り出されたことも素晴らしいですが、その経緯をこうやって本にしてくれたことが素晴らしいと思います。
 私としては、とくに第3章の光源氏と第6章の末摘花についての考察は、まさに目から鱗でした。
 巻末の「主な参考・引用文献」も壮観です。(p.301〜317)
 全部を読むのは無理でも、一つ一つの資料を読むごとに、誰でもレディ・ムラサキのティーパーティに近づけるかもしれません。

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『おいしい旅』と「天守石垣サブレ」

2024年09月15日 | BOOKS
 たまたま本を読んでいたら知っているお店が出てきて嬉しくなりました。

『おいしい旅 しあわせ編』(角川文庫)

心ときめく風景や絶品料理がここに。「しあわせ」溢れる旅×グルメ小説集!
<もくじ>
「もしも神様に会えたなら」大崎梢
「失われた甘い時を求めて」新津きよみ
「夕日と奥さんのお話」柴田よしき
「夢よりも甘く」篠田真由美
「旅の理由」松村比呂美
「美味しいということは」三上延
「オーロラが見られなくても」近藤史恵

KADOKAWAオフィシャルサイト

 

 第2話「失われた甘い時を求めて」に長野県松本市のお菓子屋さん「マサムラ」が登場します。
 松本に住む親戚からのお土産の定番が「マサムラ」の「天守石垣サブレ」。
 私はこれが本当に大好きで、今年の夏も実家への帰省の時に親戚からいただいて子どものように大喜びしてしまいました。

 何年ぶりでしょう。敷紙が金色から黄色に変更になったかな?やっぱり美味しいサブレです。
 冷やして食べることが推奨されていて、私も冷やして食べた方が美味しいと思います。

 お話の中に登場していたのはサブレではなくてシュークリーム。
 なかなか松本に行く機会がありませんが、いつかお店に行ってシュークリームを買いたくなりました。

 ほかのお話も、さすが「しあわせ編」。読後感が良いものばかりです。
 ぜひ旅のお供に持って行ってはいかがでしょう。


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『水曜日のクルト』

2024年08月13日 | BOOKS

『新版 水曜日のクルト』大井 三重子 - 偕成社

ミステリー作家仁木悦子として知られる著者による童話集。

偕成社 | 児童書出版社 -

 


大井 三重子さんがミステリー小説の仁木 悦子さんだと知って驚きました。
ミステリーとは違う趣きの児童書ですが、今の時代に読んでいただきたい一冊です。

とくに「血の色の雲」という1編は、ロシアによるウクライナ侵略やイスラエルのガザ侵攻が起きている今、子どもたちにも大人にも胸に迫るお話になっています。
解説によると、著者は二人の兄を戦争にとられ、上のお兄さまは戦死されたのだそうです。

「血の色の雲」では主人公の友人と二人の兄が戦地へ向かいます。
「戦争に行くのは家族や友人を守るため」という友人に「向こうの国にも、私がいる。いく百人も、いく千人も」という主人公の叫びは、戦争を経験した著者自身の真の言葉でしょう。

武器を持たない一般市民、何の罪もない子どもがいる場所を攻撃する国を止められないのは本当に歯痒いことです。
人々の生活の場を破壊し尽くす行動も「自分の国の人を守るため」という大義で行われています。
国際的な紛争を武力行使ではなく平和的手段によって解決できる世界になるよう、祈るばかりです。
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『 20歳のときに知っておきたかったこと―スタンフォード大学集中講義』

2024年07月13日 | BOOKS
『 20歳のときに知っておきたかったこと―スタンフォード大学集中講義』
ティナ・シーリグ 著
(CCCメディアハウス・旧 阪急コミュニケーションズ)


もう「20歳」どころか、倍以上生きているのですけれど、読む価値のある1冊だと感じました。
メモをとりたくなるような名言が豊富で、「スタンフォード大学集中講義」というタイトルから感じた「難しそう」という印象を良い意味で裏切って、語りかけるような文体で書かれていて読みやすいのもありがたいです。

たくさんの成功者の失敗と成功のエピソードが紹介されていて、生まれながらの成功者はいないことに気付かされます。
幸運にめぐりあうためには常日頃の努力が大切なことも分かります。

私が気に入った箇所は、第7章にある
「よき観察者であり、開かれた心を持ち、人あたりがよく、楽観的な人は、幸運を呼び込みます。」
「運のいい人たちは、(中略)自分の知識と経験を活用し、組み合わせるユニークな方法を見つけています。」
というところ。
私も、運の良さは待っていても得られないもので、幸運を呼び込むための考え方や生き方があるように思います。

第6章の
「キャリア・プランニングは、外国旅行に似ています。どれほど綿密な計画を立てて、日程や泊まる場所を決めても、予定になかったことが一番面白いものです。」
この箇所も、子育てをしている身にとっては響く言葉でした。

20歳のときにこの本を知っていたら私の人生が大きく変わっていたかというと、それほどではないかもしれませんが、「人生にはいろいろなチャンスがある。何度失敗しても世界は可能性に満ちている。」ということを若い人に伝える素晴らしい1冊だと思います。
まずは娘に薦めてみようかな。

<追記>
こちらの本には新版が出ています。
『新版 20歳のときに知っておきたかったこと』 (CCCメディアハウス)
目次を見てみると2つの章が増えているようですし、解説も新しくなっているようです。
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『1(ONE)』(駒子シリーズ4)

2024年04月13日 | BOOKS
駒子シリーズに新刊が出ました。

シリーズの4作目となる新作は、
『1(ONE)』
著者:加納朋子
出版社:東京創元社


『スペース』が2004年の作品で、あれから20年近く。
読者である私たちと同じように駒子さんも大人になって、物語は次の世代に受け継がれていきます。

『ななつのこ』は1992年(平成4年)の第3回鮎川哲也賞受賞作で、主人公の駒子さんは短大生。
気になる本の作者に手紙を書いて不思議な文通による謎解きが始まるというストーリーです。
昭和生まれには懐かしい「短大生」「文通」は今では激減しているものだと思います。

時代はちゃんと平成から動いて『1(ONE)』では、スマホやSNSも登場します。
人の悪意と善意、残忍さと優しさ。弱さと強さ。
時代を超えても変わらない人の心の動きが描かれています。
私にとっては、久しぶりに田舎の同窓会に参加したような、「駒子さん、久しぶり!ご家族は?」とおしゃべりしているような、そんな読書時間でした。

駒子シリーズを読んでいた方は懐かしい登場人物との再会を楽しんで、久しぶりにシリーズ全部を読み返すのがおすすめです。
新しい読者の方は『1(ONE)』から始めて『ななつのこ』に戻ってもいいですし第1作から読んでもいいと思います。
高校生や大学生はお父さんお母さんの若い頃を知るような感覚で読めるんじゃないでしょうか。

<駒子シリーズ一覧>(2024年4月現在)
シリーズ1作目『ななつのこ』
シリーズ2作目『魔法飛行』
シリーズ3作目『スペース』
シリーズ4作目『1(ONE)』
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『八月の御所グラウンド』

2023年11月13日 | BOOKS
『八月の御所グラウンド』
著者:万城目 学
出版:文藝春秋


この1冊に「十二月の都大路上下ル」と「八月の御所グラウンド」の2篇が収められています。
「上下ル」は「カケル」と読むのだとルビがふってあります。

今回はクセの強すぎない、あっさりとしたお吸い物のよな味付けで、でもしみじみと美味しい1冊だと思います。
じんわりと優しくて、心に小さな種火がつく2篇です。

冬の都大路の底冷えも、夏の御所グラウンドの陽炎立つような暑さも、
そこで起こるちょっとした不思議と「ここ、京都だし」「じゃあ、ここが京都だから」という感覚も、
「そうだよね」「わかるわかる」と思いながら読みました。
そろそろ師走の都大路を走る学校も出揃った頃。御所グラウンドの周りはドングリが落ちてるはずです。

『鴨川ホルモー』シリーズ以来の京都を舞台にした万城目作品ということで、ちゃんとあちこちに匂いが付けられています。
これを読むと、また『鴨川ホルモー』シリーズを読みたくなるんじゃないでしょうか。
(私はさっき本棚から出してきました)
年末にかけて、ゆっくり読むのもいいかもしれませんね。
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「頁」「ページ」は新しい訓読み?

2023年09月13日 | BOOKS
『遊遊漢字学 中国語には「鰯」がない』
著者:阿辻哲次
発行:日本経済新聞出版


「頁」の字を漢字変換するとき、みなさんはどう入力しますか?
音読みだと「ケツ」で変換されますが、「ページ」でもちゃんと変換されますね。
(部首名の通称「おおがい」では変換されないんですね…)
でも「ケツ」って音読みを知ってる人の方が少ないような気もします。
前から「『ページ』って音読みでも訓読みでもないよなぁ」と思っていたのです。

今回の本『遊遊漢字学』に「『頁』がページになったわけ」というコラムが入っています。
紙の枚数を数えるときに画数の多い「葉(ヨウ)」を使う代わりに、音が同じ「頁」を「当て字」として使うようになったということだそうです。西洋式の製本技術が使われるようになって、紙の枚数ではなく1枚の表も裏もそれぞれ数えるときにも「頁」の字を使うようになったんだとか。(和綴では「第○葉の表」「第○葉の裏」と言っていたわけですね…)
つまり「ヨウ」という音読みを「ページ」という意味で使っているんですね。

『遊遊漢字学』には「ちょっと大きな漢字辞典には」と書いてありましたが、我が家の辞書(小学館『新選漢和辞典 第六版』1996年第3刷、小学館『現代漢語例解辞典』1999年第4刷)にも、音読み「ケツ」と「ヨウ(エフ)」がありました。
※「エフ」は「ヨウ」の歴史的仮名遣い。

私の住む街の大きめの図書館で、大きな漢字辞書をチェックしてみました。
音読み「ヨウ」が載っていたのは、下記の4冊。
大修館書店『大漢語林』(1992年初版)
講談社『新大字典』(1993年第1刷)
旺文社『漢字典(大活字版)』(2000年発行)
三省堂『全訳 漢辞海 第三版』(2011年第1刷)

とくに「大漢語林」には「1.漢:ケツ・呉:ゲチ 2.ヨウ(エフ) 慣.コウ」と4つの音があって、「ケツ」「ゲチ」のときは、「かしら。こうべ。頭。」「首筋。うなじ。」の意味で、「ヨウ」と読むときは「ページ。書物の紙面で、その片面。またそれを数える語。北方の近代音で葉と同音であることから借り用いた(ただし、葉は枚の意味)。=葉」と詳しく記載されています。「ヨウ」は北方の近代音なんですね。
※「漢」は「漢音」、「呉」は「呉音」、「慣」は「慣用音」。

「訓読み」を「漢字を『和語』で読んだもの」とすると、外来語である「ページ」を「訓読み」と分類できないのでしょうけれど、すでに日本で日常に使われている言葉なので「新しい訓読み」と言えるんじゃないかなぁと思います。
「外来訓」という言葉はないのかもしれませんが、「米=メートル」「麦酒=ビール」も「外来訓」といえるんじゃないでしょうか。
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片仮名のペンネーム?

2023年08月13日 | BOOKS
 つい先日、図書館で見かけた本の作者名が欧米人の名前にありそうな片仮名の名前だったので、勝手に外国人作者だと思って借りて読んでみたら、1ページ目から「ん?日本人?」という感触。
 よく見たら、本の図書分類記号も「913」、つまり「日本語で書かれた物語」です。
(「9」は「文学」、「1」は「日本語」、「3」は「物語」)

 「あれ?日本人作者だった?」と思いましたが、よく考えたら外国人でも日本語で物語を書いていたら「913」になるわけです。
そして、洋風のカタカナの名前でも国籍は日本、つまり「日本人」の人もたくさんいるわけで、「片仮名の名前=外国人が書いている=外国文学」という考え方は偏見だったと反省しました。
 「外国ルーツでも日本生まれ日本育ち、育っていく中で吸収したのも日本文化で、話せるのは日本語だけ」という方もいるんですよね。

 世界では国籍とルーツの国が同じではない人も多いので、図書分類が「日本語」「英語」のように「原著がどの言語で書かれているか」を基準にすることに納得しました。

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未完結なのに「全○巻」?

2023年05月13日 | BOOKS
ネットの本屋さんで本を見ているとき、違和感を感じるのが「全1〜N巻セット」。
(この場合、「N」は自然数です)

私の中では「全N巻セット」は完結しているときに書いてあるもので、未完結の時は「既刊1〜N巻セット」や「以下続刊」のように表示されるものだと思ってました。

私の持っている古いコミックスなどは、本のカバーの袖に著者の既刊本リストがあって、
「〇〇」全5巻
「△△」①〜④
などと書かれているわけです。
この場合、作品「〇〇」は完結していて、作品「△△」はまだ作品が続いていることが分かったんだけど…。

大人買いができるようになってみると「完結しているかどうか」が気になります。
最初から最後まで一気読みしたい!
我がままかもしれないけれど、最終巻には「最終巻」とか「完結」って分かるように表示していただきたいし、「全○巻セット(完結)」と「既刊セット(以下続刊)」は区別していただきたいなぁ。
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『パン焼き魔法のモーナ、街を救う』

2023年03月13日 | BOOKS
『パン焼き魔法のモーナ、街を救う』
著者:T.キングフィッシャー
ハヤカワ文庫

パンの発酵を促したり、ジンジャークッキーにダンスさせたり、そんな ささやかな魔法が使える女の子 モーナ。
ある朝、いつも通りにパンを焼きに厨房に降りていくと、そこには女の子の死体が…。
容疑者として捕まってしまったモーナに、次々と厄介ごとが襲いかかります。
街を守れる魔法使いは次々といなくなり、残った魔法使いはモーナだけ。
モーナは仲間と一緒に勇気と知恵を振り絞って、街を攻撃する敵や内部の敵と向かい合います。

敵を攻撃できるような強い魔法が使えるわけでもない、人を傷つけるような魔法を使ったことも、武器を持ったこともない女の子が戦争に巻き込まれていくストーリーは、とても主人公を身近に感じられると同時に不安感さえ共有してしまいます。
容赦無く近づいてくる敵との戦いがどうなるか。
虚しさはありつつも、モーナや仲間の健闘に励まされる一冊です。

この物語を読んでいるとき、頭の片隅ではずっとウクライナへの侵攻のことがありました。
今回の戦争を見ていて思うのは、英雄が必要となるような戦争なんて起きてはいけないということ。
戦争の中で「君たちは英雄だ」と大統領や国民が讃えてくれることよりも、本当は戦争に行く必要もなく家族と穏やかに暮らしている方がずっとずっと幸せなはずで、自分たちの国と家族を守るためでも誰かが犠牲になることは、どうしても悲しくて悔しい。

考えて、考えて、少しでも より良い方へ。
モーナの物語は「自分で考えること」の大切さを教えてくれます。



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『十二国記』原画展に行ってきました

2023年02月13日 | BOOKS
大好きな『十二国記』シリーズのイラスト、山田章博さんの原画展に行ってきました。

石巻市にある「石ノ森萬画館」での開催で、JR石巻駅から「石巻マンガロード」を歩いて萬画館まで。
2階の展示室で展示されています。
文庫の印刷で見ていた絵が、大きいサイズの原画で目の前に。筆の流れも、色のぼかし具合も分かる距離。
ラフ画も、描き下ろしイラストも見ることができて、なんとも贅沢。
開催期間前半の週真ん中の午前中だったからか、本当に貸し切りのようでした。

初めから最後までゆっくりじっくり見て、スタンプラリーのために石巻の街なかへ。
スタンプ設置場所は一番遠いところでも歩いて15分以内。
初めての街をお散歩するのも楽しい!
散歩して、スタンプを集めて、お昼は「いしのまき元気いちば」で「石巻元気御膳」をいただいて、「石ノ森萬画館」に戻ります。
ちびキャラのスタンプがどれも綺麗に押せて大満足!
3階で「ちびキャラクリアファイル」をもらって、もう一度 原画展を見に2階の展示室へ。

最後に3階の展望喫茶「BLUE ZONE」で、原画展コラボメニューの「函養山パフェ」をいただきました。
パフェについてきたのは泰麒と驍宗さまのコースターでした。

朝9時ごろ石巻に着いて、石巻を出たのが午後4時ごろ。
帰りのJR仙石東北ラインでは『白銀の墟 玄の月』の4巻を再読して、泰麒と驍宗さまの再会シーンで涙。
朝から夕方まで しっかり『十二国記』を楽しんだ1日になりました。

<おまけ>
これから行く方にアドバイス。
『十二国記』の空気感に浸りたい方は耳栓か、イメージに合う曲を聴けるイヤフォンを持っていくことをオススメします。
萬画館の館内は石ノ森章太郎先生のマンガのキャラクターの声、音楽が流れているので、私は少し気になってしまいました。
夢中になると気にならなくなるんですけどね。
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『「うちの子は字が書けないかも」と思ったら 』

2022年06月20日 | BOOKS
『「うちの子は字が書けないかも」と思ったら 
 発達性読み書き障害の子の自立を考える』
著者:宇野彰(発達性ディスレクシア研究会理事長)・千葉リョウコ(漫画)
発行:ポプラ社


 以前記事にした「うちの子は字が書けない」の続編になります。

 前回は息子さんのケースの紹介でしたが、今回は娘さんの発達性読み書き障害のケースを取り上げています。
 この本を読むことで「発達性読み書き障害」にはビックリするほど多様性があることが分かります。
 前回の本を読んで、一つのケースの体験談を知っただけで分かったつもりになるのは危険だと反省しました。

 今回のサブタイトルは「発達性読み書き障害の子の自立を考える」となっています。
 子どもの時期だけでなく、一生続いていく特性に向き合って生きていくことがテーマになっています。

 第3話に、家庭教師からの目線の漫画があります。
 家庭教師をしている人は、多くが「他の人よりも勉強ができる人」です。家庭教師の考え方は、多くの学校の先生方の考え方にもつながると思います。
 「なんで、こんなこともできないんだろう?」「どうサポートしていけばいいか」
 まず、知ることが大切で、知った上で学習者本人に寄り添うことが求められているのだと思います。
 もちろん、現在は教育者を志望する人たちは、発達障害についてもしっかり学んでいると思うのですが、「一人ひとりが違うこと。全く同じケースはないこと」を肝に銘じていないと大きな危険があると感じました。

 残念なことに、まだ「発達性読み書き障害」を知らない人が多いです。
 周りの「この子は勉強ができない」という誤解も、本人の「わたしは勉強ができない」という劣等感も、日本中の学校にあるのだと思います。
 「勉強ができて、良い大学に入って、サラリーマンになる」という画一的な目標・価値観を、そろそろ見直さないといけない時代になってきてるんじゃないでしょうか。
 「できることをして、幸せな毎日を、周りの人と協力して過ごす」そんな世の中になるといいですね。
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『日本語はこわくない』

2022年05月20日 | BOOKS
『日本語はこわくない』
著者:飯間浩明
出版:PHP研究所


 国語辞典の編集委員・「ことばハンター」として有名な著者による、「正しい日本語を使えてるのかな?」と不安になっている日本人への優しいアドバイスの1冊です。
 最近見聞きする「普通においしい」「全然アリ」「こんにちわ」などの言葉の使い方の考察と解説を読むと「なるほど、これも日本語の変化なんだ!」と楽しむ余裕が生まれてきます。

 私もニュースを聞いたり本を読んだりしているときに、「ん?今の表現って違和感があるけど、何でだろう?」と考えてしまうタイプです。でも「自分が正しい!相手が間違っている!」と断言するほどの知識や自信もないので「日本語警察」にはなれそうもありません。

 明治時代の文豪の本を読むと「『全然』+肯定」の形があるということは前から知っていましたが、本当に「言葉は生き物」なので時代によって言い方が変わっていくのは当たり前。
 その時代に「正しい」とされていることも誰がが言い出したことに過ぎなくて、新しい時代ではコミュニケーションも変わって、新しい言葉・新しい言い方が増え続けるのだと思います。
 今、平安時代の言葉を「古典」として学んでいるように、1000年後の子どもたちは令和の時代の言葉を「古典」として、「不思議な言い方してたんだなぁ」と思うかもしれません。(そのころまで日本語が日本語として存在するか、分かりませんが…)

 「正しいか間違ってるか」ではなくて、「自分の思っていることが、相手に誤解なく、不愉快な気持ちにさせないで伝えられる」ことが大事なのだと、あらためて感じました。
 言葉の選び方は、自分の個性。自分を伝えられる言葉を持てるようになりたいですね。

 
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『自分で名付ける』

2022年04月20日 | BOOKS
『自分で名付ける』
著者:松田青子
発行:集英社


 世の中の、そして自分の中にある「偏見」に対する気づきがあるエッセイ。

 なんだかモヤモヤとしていた「結婚・妊娠・出産・子育て」に対する感情が、言葉にされていることが嬉しい。
 この本のあちこちで「うんうん、分かる。でも、私はこの感情を上手く説明できなかったなぁ」と頷きながら読んだ。
 合理的でも優しくもない「常識」だとか「普通」が偉そうな顔をしていることを、私は見ているようで見ないで来たのかもしれない。

 これからの時代は「それは変でしょ」とか「なんで私が我慢してるのかな」と声をあげることが当たり前になってほしいと思う。

 そして、この本では、さらりと子育ての楽しさが書かれていることが良い。肩が凝りそうな子育て論は展開されず、「大変なこともあるけど、面白いよね」という著者の好奇心のおかげで、読んでいて重い気持ちにならないで済む。
 なにより、この本の一番最後、第12章「保護する者でございます」で書かれている想いが、私が思う親の姿と同じで嬉しかった。
 子どもを保護する者として自分も学び成長し、いつか子どもが自分の世界を見つけて羽ばたいていけるようにする「仮どめ」の居場所としての親の役割を全うしたいと思う。

 学び続けること、疑問をスルーしないで言葉にすること、考え続けること。子どもの前に、まず大人から始めることが大切なのだと、感じ入る一冊である。
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