大井 三重子さんがミステリー小説の仁木 悦子さんだと知って驚きました。
ミステリーとは違う趣きの児童書ですが、今の時代に読んでいただきたい一冊です。
とくに「血の色の雲」という1編は、ロシアによるウクライナ侵略やイスラエルのガザ侵攻が起きている今、子どもたちにも大人にも胸に迫るお話になっています。
解説によると、著者は二人の兄を戦争にとられ、上のお兄さまは戦死されたのだそうです。
「血の色の雲」では主人公の友人と二人の兄が戦地へ向かいます。
「戦争に行くのは家族や友人を守るため」という友人に「向こうの国にも、私がいる。いく百人も、いく千人も」という主人公の叫びは、戦争を経験した著者自身の真の言葉でしょう。
武器を持たない一般市民、何の罪もない子どもがいる場所を攻撃する国を止められないのは本当に歯痒いことです。
人々の生活の場を破壊し尽くす行動も「自分の国の人を守るため」という大義で行われています。
国際的な紛争を武力行使ではなく平和的手段によって解決できる世界になるよう、祈るばかりです。