MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『「宗教」のギモン、ぶっちゃけてもいいですか?』

2017年07月27日 | BOOKS
『「宗教」のギモン、ぶっちゃけてもいいですか? 』
著者:島田 裕巳
実務教育出版


 「知らなかった!」ということが盛りだくさん。
 宗教に詳しくない若いカップル 翔太くんとハナちゃん、面倒見の良い居酒屋の大将、そして宗教学者の島田先生が、お酒を飲みながら、ざっくばらんに「あれはどうして?」「なんでこうなの?」と盛り上がります。
 マンガと対話形式で、本当に素朴なギモンに次々と答えてくれる1冊です。
 図やイラストも分かりやすくて、文字も小さすぎず、余白も適度にあるので、読みやすいです。
 日本人と宗教の関わりの歴史から、それぞれの宗教(仏教・神道・キリスト教・ユダヤ教・イスラム教)のおおまかな由来や特徴、日本人の「無宗教」問題など、本当に幅広く取り上げられています。

 もちろん知っていることもありましたが、自分が思い込んでいたことが間違っていたこともいろいろ。
 「日本の古来からの伝統」だとか、「代々受け継がれてきた」とか思っていたことが違ったり……。
 たとえば、
 「昔の日本には葬式はなかった」
 「お墓参りは高度経済成長期・核家族化から」
 「神社での二礼二拍手一礼の参拝方式は明治政府が制定」
 「結婚式場のチャペル・神父・牧師は正当なもの・本物でないことが多い」
 「神道式結婚式ができたのは明治の末」
 「イスラム教のアッラーとユダヤ教・キリスト教の神さまは同じ」……などなど。
 神さまのありがたさが半減しちゃうような気もしますが、「宗教」は人間が作ったもので、古代から人間は「宗教」という「安心できるよりどころ」を求めているということがよく分かる1冊です。

 「盲目に信じる」ということで他国を傷つける戦争を経験した国だからこそ、日本人の多くが「無宗教」にこだわることも分かるような気がします。
 無節操かもしれないけれど寛容で、「どんな宗教も神さまも仏様もよいところがあるよね」という「八百万」な宗教観って、実は一番平和に近いのかもしれませんね。


 ただ、ときどき女の子の口調が乱暴になっているようで気になります。(オバサン目線かなぁ?)
 対話形式だから、他の男性のセリフと混ざっちゃったのかな?
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『メキシコへ わたしをさがして』

2017年07月22日 | BOOKS
『メキシコへ わたしをさがして』
作:パム・ムニョス・ライアン
訳:神戸 万知
偕成社


 原題は「Becoming Naomi Leon」。
 「Naomi Leon」(ナオミ・レオン)というのは主人公の名前。
 「Leon」は「ライオン」とう意味で、ナオミのお父さんの名字でもあります。

 ひいおばあちゃんと弟と暮らしているナオミの元に、今まで音信不通だった母親がやってきて、自分の都合のためにナオミだけを引き取ろうとします。
 今まで通りの暮らしを守るため、母親と同じ権利を持つ父親を捜しにメキシコへ。

 行動力のある ひいおばあちゃんと、陽気なご近所さん、温かい親戚のみんな。
 メキシコでの日々と、お父さんとの再会を通じて、ナオミは自分のルーツを見つけ、自信をつけていきます。

 「毒親」ともいえる母親自身にも、悲しい過去があって、「悪い人」ではないけれど、親としては困ってしまう人。
 ナオミは「ひいおばあちゃんにとっての ひ孫」「お母さんにとっての 娘」だけでなく、「お父さん、そしてレオンの家にとっての 娘 = ナオミ・レオン」という、もう一つの自分を見つけることで、大きく成長します。

 「都合がいい存在だから」でなく、自分をただただ愛している人がいるということ、自分を認めてくれている存在があるということが、子どもたちにとって、どれほど大切なものかを考えさせられる話でもあります。

 各章に動物の名前が入っているのも注目。
 これは、物語を終盤まで読むと「なるほどね」って分かります。

 それにしても、トラックでアメリカ合衆国からメキシコへ行ってしまう感覚って、日本のような島国に住んでいる私からするととっても不思議な感じ。
 「壁を作る」なんて大統領もいましたが、この本を読むとメキシコとアメリカの地理的距離だけでなく心理的な距離の近さも伝わってきます。

 イラストは猫野ぺすかさん。
 前を真剣に見つめるナオミが、印象的な表紙です。
 表紙のライオンも、裏表紙の「ラディッシュの夜」の彫刻も、素敵です。
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『ハッチとマーロウ』

2017年07月17日 | BOOKS
『ハッチとマーロウ』
著:青山七恵
イラスト:田村セツコ
小学館


 イラストが「おちゃめなふたご」シリーズ(ブライトン:著)の田村セツコさんですよ!
 もう、田村セツコさんのイラストの児童書やお料理本などを読んで育った私たちの世代の皆さんには、イラストだけでも見てほしい。
思わず、懐かしさに胸いっぱいになっちゃいます。

 おはなしは、双子の姉妹が主人公。
 11歳の二人が、章ごとに代わる替わる語ってくれるスタイルです。

 双子の11歳の誕生日に飛び出した、ママの「大人卒業」宣言と、子どもたちへの「子ども卒業・11歳からから大人」宣言。
 次の日から、ママは「大人」を辞めて「ダメ人間」を目指し、子どもたちは「大人」として家事を引き受け、学校へ行き、周りの大人たちに助けられながらも、日々を前向きに過ごしていきます。

 それにしても、「おちゃめなふたご」を読んで憧れた、本当に気の合うパートナーとしての「ふたご」の姿に懐かしさがいっぱいですし、うらやましかった気持ちがよみがえります。
 頑張り屋で、真面目で、優しくて、家事もできるし、オシャレで可愛い……、「こんな子、おらへんて」と突っ込みたくなるような良い子たち。もう児童書に出てくるキャラクターそのものですけれど、彼女たちが向き合う問題は、なかなか現代的で、考えさせられます。
 個性の問題、都会と田舎の問題、ジェンダーの問題、「嘘」の問題、「真実」の問題。
 どの問題にも、二人で立ち向かえるんだから、力強いですね。

 登場する人たちがどの人も優しくて、イヤな気持ちにならない本です。
 良い人たちばかりだけれど、「大人も、ダメだなぁ」と、あきれられちゃうかもしれない本でもあります。
 まぁ「パーフェクトな大人なんていない」ってことは、真実ですからねぇ。
 それでも、ダメな大人も、うまくいかない人生も、愛おしいものだと、思えるような1冊です。
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『うちの子は字が書けない』

2017年07月11日 | BOOKS
うちの子は字が書けない 発達性読み書き障害の息子がいます』
著者:千葉 リョウコ
監修:宇野彰(筑波大学教授、NPO法人「LD・Dyslexiaセンター」理事長)
ポプラ社


 「発達性読み書き障害(ディスレクシア)」のことが、本当に分かりやすく、気軽に読める1冊です。
 マンガの部分だけでも、読む価値があります。
 もっともっと多くの人が知識を持っていたら、「困りを抱えた人」を支えられるはず。
 是非、たくさんの人に読んでいただきたいと思います。

 「40人学級で3人の確率でいる」と帯にも書いてありますが、 実際、私が教育支援ボランティアで通っていたクラスにも、数人気になる子がいました。
 「板書や教科書の内容を(見えているのに)ノートにうつせない」「ひらがな・カタカナが思い出せない」「教科書を見ずに記憶で音読する(教科書を見ると読めない)」など。もちろん、テストの時間もつらそうにしています。
 ノートに赤鉛筆で文字や数字を書いてあげて、それをなぞらせるというサポートをすることもありましたが、授業中のちょっとしたサポートでは「焼け石に水」で、虚しくなることもしばしばでした。
 学年が上がると、漢字も増え、板書も多くなり、大変さは倍増します。3年生になる頃には、多くの子が「どうせ僕なんて」「私はやってもできないから」と、劣等感と あきらめを抱えているように見えました。

 この本は、息子さんのことを描いたマンガと、専門家である宇野先生との対談形式の情報コーナー「発達性ディスレクシアのこと、もっと教えて!」で構成されています。
 先生の解説の言葉は、どれも優しくて、とても親身で分かりやすいです。

 息子さんが実際に書かれた字や作文、字の練習のためのトレーニングカードの写真なども非常に参考になりますし、「幼児期・小学生から高校生まで、そして将来の職業選択を考える段階」まで描かれているのが素晴らしいと思います。
 「世の中には、こんな障害があって、こうやって乗り越えてきた先輩がいるんだな」という情報って、悩んでいる親にも子どもにも、本当に貴重です。

 発達障害があるということは、たしかに大変なこともいろいろあります。
 でも、早くに周りが気付いてあげることで、適切なサポートやトレーニングを始めることができたら、「知らないまま」よりも生きやすくなるはずです。
 適切なサポートができるところは、まだ限られていると思います。
 この本でも、適切なサポートが受けられているかというと、必ずしもそうではありません。
 それでも、家族全員が理解して共感して支えてあげているところが、この本の大きな魅力になっています。
 
 ほとんどの漢字に ふりがながあるので、小学生でも読むことができると思います。
 これを読んで、困っている同級生を理解できる子になってほしい……。娘にも すすめるつもりです。


<関連記事>
『ぼくの守る星』 - MOONIE'S TEA ROOM
 難読症(ディスレクシア)の中学生の男の子と、彼のまわりに生きる人を描く連作短編集。
『負けないパティシエガール』 - MOONIE'S TEA ROOM
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「ソーシャル・インクルージョン」 は、「国民総 "生きがい" 社会」 - MOONIE'S TEA ROOM
 「ソーシャル・インクルージョン」についての書籍を3冊紹介しています。
 

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『緑の霧』

2017年07月06日 | BOOKS
『緑の霧』
キャサリン・ヴァン・クリーヴ 作
三辺律子(サンベ リツコ)
ほるぷ出版


 「植物や虫と会話できる女の子」なんて言ったら、もっと子ども向けの魔法少女をイメージしてしまうかもしれないですけれど。
 でも、こちらはもっと複雑。
 もしかしたら、大人になってから読んだほうが分かる部分も多いのじゃないかとさえ思う物語です。
 嶽まいこ(ダケ マイコ)さんの描く表紙とその深い緑色の落ち着いたイメージが、この本に取って大きなプラスになっていると感じます。(挿絵も地図も素敵です)

 主人公のポリーは11歳。口にしないほうが良いことまで口にしてしまう悪い癖がある女の子。
 兄姉には劣等感を感じているし、人間の友だちはいないし、周りにある不思議なことを共有できる人もいません。
 それでも穏やかだった日々が、緑の霧が再び現れたときから、トラブルだらけの日々になってしまいます。
 自分の不安・恐れと向き合って、家族と農場を救うために、成長していくポリー。
 まずはポリーの気持ちで最後まで読んで、今度はもう一度エディスおばさんの気持ちで読んでみることをおススメします。

 臆病で自分に自信がない女の子と、「家族のため、家のため、人生を犠牲にすること」について深く悩む大人の女性。
 この物語は、どちらか片方の気持ちだけでは成り立たないものです。
 自分を大切に思う気持ちと、家族を大切に思う気持ち、農場や家を大切に思う気持ち、そして自分らしい人生を大切に思う気持ち。
 田舎を出て暮らしている私も、共感するところが多い物語でした。

 原題は「Drizzle」、「霧雨」という意味ですね。
 降らなくなってしまった「奇蹟の雨」が生まれ変わる瞬間、そんなイメージを持ちました。
   
 英語版の表紙は、なかなかポップ。タイトルの下に「Welcome to a magical farm where vegetables taste like chocolate!」って書いてあります。「チョコレート味の野菜がある、魔法の農園へようこそ!」ってところでしょうか。

 アニメ映画とかにも向いてるんじゃないでしょうか。
 高学年から中学生の読書感想文にもピッタリだと思います。


 
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『ときどき旅に出るカフェ』

2017年07月01日 | BOOKS
『ときどき旅に出るカフェ』
著 : 近藤史恵
双葉社


 いろいろな国の美味しそうな料理・スイーツが出てきます。
 表紙の写真は、第1話に出てくる「苺のスープ」。
 こんなカフェが近くにあったら、私も常連さんになりたい、そんなカフェを舞台にした「小さな謎解き」のおはなしです。

 「ビストロ・パ・マル」シリーズとは違って、今回の料理人は女性。
 語り手は、謎解きに同席する年上の元同僚女性で、お店の常連さん。

 職場での謎、友人が持ちかける謎、お店のお客さんにまつわる謎、ご近所さんに関する謎、そして家族の謎。
 第9話までと最終話の合わせて10話。
 少しずつ、読んでいる私もお店に馴染むように、最後には「ふふふ」と笑顔になれる物語です。
 いい人ばかりではないけれど、好きな人を大切にできる、優しくて強い女性たちに励まされます。

 それにしても、第2話「ロシア風チーズケーキ」に出てくる「ツップフクーヘン」も気になります!
(ドイツ語だと、「Russischer Zupfkuchen」と綴るらしいです)
 レシピを探して作ってみようかな。
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