『鹿の王』 上 ‐生き残った者‐
『鹿の王』 下 ‐還って行く者‐
上橋菜穂子
角川書店
昨今のエボラ出血熱や、新型インフルエンザやデング熱などのことも思い起こさせるストーリーです。
異なる文化を持つ国同士の駆け引き。
国の政をつかさどる上流階級と使役される側の思惑のすれ違い。
「獣の奏者」と「守り人」シリーズに通ずるものがある、様々な価値観の衝突がこの物語でも描かれています。
「913」の分類で児童書の書架に置かれていることが多いと思いますが、一般の書架においても良いと思う「大人」の物語になっています。
今回は、大きな悲しみと大きな使命感を持つ男性2人のダブル主人公になっています。
生まれも育ちも違う2人が、別々の場所で自分の人生と向き合い懸命に生きる姿が代わる代わる描かれていきます。
その2人の男性それぞれに、恋人でもなく夫婦でもない微妙な立場の女性が登場します。何かを求めずに相手のことを思って、そっと「寄り添う」愛……、「大人」ですね。
何よりも印象的だったのは、「大人」の愛憎と覚悟が重苦しく切ない結末へと進んでしまいそうなところを、小さな少女が希望の光で照らしてくれる後半。
幼い生命の輝きが、大人たちに与えてくれる力の大きさを改めて感じる1冊です。
『鹿の王』 下 ‐還って行く者‐
上橋菜穂子
角川書店
昨今のエボラ出血熱や、新型インフルエンザやデング熱などのことも思い起こさせるストーリーです。
異なる文化を持つ国同士の駆け引き。
国の政をつかさどる上流階級と使役される側の思惑のすれ違い。
「獣の奏者」と「守り人」シリーズに通ずるものがある、様々な価値観の衝突がこの物語でも描かれています。
「913」の分類で児童書の書架に置かれていることが多いと思いますが、一般の書架においても良いと思う「大人」の物語になっています。
今回は、大きな悲しみと大きな使命感を持つ男性2人のダブル主人公になっています。
生まれも育ちも違う2人が、別々の場所で自分の人生と向き合い懸命に生きる姿が代わる代わる描かれていきます。
その2人の男性それぞれに、恋人でもなく夫婦でもない微妙な立場の女性が登場します。何かを求めずに相手のことを思って、そっと「寄り添う」愛……、「大人」ですね。
何よりも印象的だったのは、「大人」の愛憎と覚悟が重苦しく切ない結末へと進んでしまいそうなところを、小さな少女が希望の光で照らしてくれる後半。
幼い生命の輝きが、大人たちに与えてくれる力の大きさを改めて感じる1冊です。