MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『九十九藤』

2016年05月16日 | BOOKS
『九十九藤』(ツヅラフジ)
西條奈加 著
集英社


 「つくもふじ」とも読んでしまうそうですが「つづらふじ」。
 「九十九折り(つづらおり)」のほうの「九十九」ですね。

 江戸の人材派遣業「口入屋」をまかされるようになった差配のお藤。
 店は傾きかけているうえに、一癖も二癖もありそうな奉公人たち。
 しかし、お藤の斬新なアイデアと、人を大切に扱う誠実さ、権力にひれ伏さない強さが、商売を上向かせ、次第に周りの人たちの心をも変えていきます。

 ハラハラドキドキさせ、最後は感涙。爽快な読後感です。

 男も女も、魅力的な登場人物がたくさん出てきます。
 この時代では「年増」、20代後半バツイチの主人公 お藤。
 江戸中の男も惚れる 黒羽の百蔵。
 威勢が良くて頑固な手代頭 島五郎。
 天女のようなおかみさん お品。
 懐の広い旦那さん 太左衛門。
 そうそう、大工の芝源さんと、木場の幡蔵さんや、奉公人たちも。
 脳内ドラマ化キャスティングが随分楽しめる物語です。

 けっして幸せばかりであったとはいえない人生の一つ一つの経験が彼女を成長させて、仕事にも恋にもつながっていくさまは、まさに「つづらふじ」の蔓のようなものなのかもしれません。
 人生の失敗を乗り越える強さ、「大年増」の私も見習いたいものです。

<参考>
 ちなみに、「ツヅラフジ」は「葛藤」とも。蔓が「葛籠(つづら)」の材料になるからだとか。
 蔓が似ているので「フジ」とつくけれど、花も全く違う別の科のつる植物なんですって。
「ツヅラフジ」- 松江の花図鑑
コメント
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