MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『おばちゃんたちのいるところ』

2017年01月26日 | BOOKS
『おばちゃんたちのいるところ』
松田青子(マツダ アオコ)
中央公論新社


 この本は、17の短編からなる連作集です。
 少しずつ重なるように登場人物が出てくるので何度も前に戻りつつ、ふしぎな設定にわくわくして、最後まで新鮮な気持ちで読みました。
 どの話も、幽霊が出てきたり、恨みつらみもあるのに、なんともユーモアがあって、優しくて、面白くて。
 小幡彩貴さんのイラストも、可愛くて楽しげで、物語にぴったりです。
 人間の困ったところ、良いところ。そして、いろいろな出会いのふしぎ。
 ダメな人間社会も、ちょっと愛おしくなるような1冊です。

 17の短編はそれぞれ、落語や歌舞伎、民間伝承などをモチーフにしています。
 知っているモチーフは「あれだな」と思いつつ、知らないものは「どんなモチーフなんだ?」と調べたり。
 巻末にそれぞれのモチーフの一覧があるのが、ありがたいです。

 そうそう。表紙の下のほうに「Where The Wild Ladies Are」って書いてあります。
 これ、絵本『かいじゅうたちのいるところ』の原題「Where The Wild Things Are」ですね。
 「Wild」って、この本では「野生の」「自然の」って感じでしょうか?
 現代の「縛り」、現世の「縛り」から自由な、自然に生きる「おばちゃん」って素敵です。
 淋しいときに寄り添って、一緒に踊ってくれる「かいじゅう」に負けないくらい。


 それにしても、パワフルな「おばちゃん」って減ってないでしょうか?
 「オバタリアン」と言われても「亭主元気で留守がいい」と言い切れる、そんな自信たっぷりの「おばちゃん」減ってるような気がします。
 今や「三食昼寝付き」なんて言ったら、「女性総活躍」を目指す方々からは白い目で見られてしまいそうです。
 私も四十路に入ったものの、いまだに周りを気にしているし、堂々とする自信もなく、自分が子どもだった頃の「おばちゃん」にはまだまだ追いつけないような気がします。
 いつか、あんなふうに強い「おばちゃん」になれるのか……。
 なりたいような、なりたくないような。
 
コメント
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