ギュスターヴ・クールベ、19世紀フランス、写実主義。
クールベはナルシストであったらしい。自画像をたくさん描いているが、このように傷ついた姿で自分を描くというのも、誰かに甘えて自分を愛してもらいたいという気持ちの表れだろう。だがこの姿は本当の自分ではない。この男の本当の姿は、もっと小さく醜いのだ。そんな本当の自分を隠して、他人の姿を借りて生きている。それをことさらに見せて、愛を得ようとする。そんな男は多い。ナルキッソスが愛しているものは、本当の自分ではない。水に映った影なのだ。形だけのものなのだ。そんなものを愛して報われるわけがない。
本当の自分を愛するということは、もっと別のことなのだ。