
フランス・ハルス、17世紀ネーデルラント、バロック。
集団肖像画の典型であるが、この絵の中に登場する男はみな偽物である。本物の人間は一人としていない。これらはみな、他人から富と美を盗み、他人の人生を奪っている馬鹿なのである。それが養護院などという福祉施設の理事として働き、善人のふりをして生きているのである。なぜこんなことになるかというと、人間は自分がいやだからだ。本当の自分は馬鹿なことをしてしまった罪の人だからだ。だから罪のないように見える他人になりたがり、他人から顔や人生を盗んで善人になって生きるのである。そしてその顔を、自慢げに見せつけて、高い金を払って絵に描かせているのだ。馬鹿の見本というものである。しかし画家の目は鋭い。すべては嘘なのに、真実の人間のふりをして誇り高く気取っている人間の姿をそのまま写しとっている。これがこの二千年というものの、人間世界の現実なのである。