乱雑に積まれた荷物の上に乗せられたテレビの、小さな画面を通して小学生の私はコントローラを握りながらひたすら赤い靴を履いた青いハリネズミを黒いコントローラの十字型をしたボタンを左手で、ABCと書かれた丸いボタンを右手で押し、黒いメガドライブに差し込まれた『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』を無心にプレイしていた。
1994年に発売された本ソフトは『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の続編として制作された。プレイヤーは主人公の青いハリネズミ「ソニック」を操作して、様々な仕掛けや敵をジャンプとダッシュで切り抜けながらゴールを目指してゆくアクションゲームである。最初のステージはボスまで目立った仕掛けも無く一直線に爽快感を味わう作りとなっており、プレイヤーはソニックの「速さ」を楽しむことができる。しかし次の面が新しいルールを都度プレイヤーに突き付け、ただ走り続けるだけの単調さから抜け出し計算して操作するように行動を促すのだ。
主人公のソニックは「泳げない」という設定の元、水に一定時間浸かっていると溺れてゲームオーバーとなってしまう。底の深い水場に落下しても同じくゲームオーバー。慎重に進めようとしても10分の制限時間という壁があり、これを過ぎてもゲームオーバー。第二面は鉄パイプと工場の廃液のような紫色の水が徐々にせりあがってくるというステージで、今遊んでもボタンの一押し一押しに神経を使う。ジャンプのタイミングや距離を誤ると底なしの水たまりに落ちてすぐにゲームオーバーとなってしまう。たとえ底があっても水中では動きが鈍くなり歩く速度が遅くなるという制限が付き、さらに水上へ移動するための足場へ飛び移るタイミングを計りかねていると時間切れで溺れてしまう。ただでさえテレビとの距離感を把握しなければならないのに水へ何度も落ちて、とうとうそのステージをクリアできないまま、引越しと共にメガドライブはいつの間にかセガサターンへと入れ替わっていた。
オリジナルの『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』はとうとう一面しかクリアすることが出来なかったものの、しかしその後の私はソニックシリーズをプレイし続けた。同じ面で何度もやられても再挑戦し続けたのは、自分にはとても走れないような速さで疾走するソニックを操作するという指先の「体験」を「楽しい」と感じたこと、このことがコンピュータゲームを遊ぶという行為を知るきっかけとなったのかも知れない。何度も力尽きた末にクリアを諦めてしまった第二面のBGMである「Chemical Plant Zone」は今でも口ずさめるほど記憶に残るゲームのステージ音楽であることが、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』を「楽しい」と思えた何よりの証左だと思う。
1994年に発売された本ソフトは『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の続編として制作された。プレイヤーは主人公の青いハリネズミ「ソニック」を操作して、様々な仕掛けや敵をジャンプとダッシュで切り抜けながらゴールを目指してゆくアクションゲームである。最初のステージはボスまで目立った仕掛けも無く一直線に爽快感を味わう作りとなっており、プレイヤーはソニックの「速さ」を楽しむことができる。しかし次の面が新しいルールを都度プレイヤーに突き付け、ただ走り続けるだけの単調さから抜け出し計算して操作するように行動を促すのだ。
主人公のソニックは「泳げない」という設定の元、水に一定時間浸かっていると溺れてゲームオーバーとなってしまう。底の深い水場に落下しても同じくゲームオーバー。慎重に進めようとしても10分の制限時間という壁があり、これを過ぎてもゲームオーバー。第二面は鉄パイプと工場の廃液のような紫色の水が徐々にせりあがってくるというステージで、今遊んでもボタンの一押し一押しに神経を使う。ジャンプのタイミングや距離を誤ると底なしの水たまりに落ちてすぐにゲームオーバーとなってしまう。たとえ底があっても水中では動きが鈍くなり歩く速度が遅くなるという制限が付き、さらに水上へ移動するための足場へ飛び移るタイミングを計りかねていると時間切れで溺れてしまう。ただでさえテレビとの距離感を把握しなければならないのに水へ何度も落ちて、とうとうそのステージをクリアできないまま、引越しと共にメガドライブはいつの間にかセガサターンへと入れ替わっていた。
オリジナルの『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』はとうとう一面しかクリアすることが出来なかったものの、しかしその後の私はソニックシリーズをプレイし続けた。同じ面で何度もやられても再挑戦し続けたのは、自分にはとても走れないような速さで疾走するソニックを操作するという指先の「体験」を「楽しい」と感じたこと、このことがコンピュータゲームを遊ぶという行為を知るきっかけとなったのかも知れない。何度も力尽きた末にクリアを諦めてしまった第二面のBGMである「Chemical Plant Zone」は今でも口ずさめるほど記憶に残るゲームのステージ音楽であることが、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』を「楽しい」と思えた何よりの証左だと思う。