全三巻の最終巻が発売された。総括として賑やかしの「キョウコ」という登場人物に頼ったような話の終え方だったものの、
絵という二次元を利用した仕掛けの進め方そのものはそれでちょうどよかったのかもしれない。
表題通り『BOX』は、唐突に出現した謎の箱に閉じ込められた主人公たちが、箱の提示するパズルを解いて脱出を目指すという
命のかかった『リアル脱出ゲーム』の物語で、登場人物はそれぞれに隠し事を抱えつつその隠し事に振り回される形で
一人ずつ箱に囚われてゆく。
そこへ登場するのが著者の小説『キョウコのキョウは恐怖の恐』が初出となるトリックスターの「キョウコ」で、
奔放ながら話に対しては親切に謎を一刀両断してゆく。彼女が登場するまでは箱に翻弄されていた主人公たちは、
著者も含めて彼女の発想に助けられ、謎を次々と破り箱の奥へ進んでゆく。
三巻は特に彼女が大半の謎を解きながら説明する場面が大半で、主人公達は解かれた謎から現れた選択肢をただ決定する
役割に徹してしまっている。主人公が箱に囚われる大きな理由となった問題が、重みを失ってしまう。
話の最後で箱が示す決断も重みが薄れてしまい、箱のナビゲータである少女とキョウコの一騎打ちに巻き込まれるという
様相で、少々勿体無さを覚えた。
「錯視」を組み込んだトリックを違和感なく書き上げる仕業は見事で、トリックを円滑に見せるためにキョウコという
便利なキャラクターに話を任せてしまったのは、トリックを描くか話で見せるかを選んだ結果なのだとは思う。
ただ、女性の目が美しくなくなった。見栄を切る場面がところどころにあるが、三巻でついに少女が正体を現す場面の
目は線こそ多重だがものは球体のようで、勢いや怖さはかけてしまっているように見えた。
絵として美しいのは二巻の、融合した老夫婦のカットで、穏やかに箱へ閉じ込めらることを選び半身が溶けあう老夫婦の
微笑みは彫像のように静かだ。『西遊妖猿伝』の人参果の樹の夫婦や、もっとたどれば『生物都市』の金属と人間の
境目を失った物の曖昧さと完全さは著者の線でなくては魅力的に見えない。
不法投棄のようにトリックを使い倒すさまは小気味よいものの、あっさりとキョウコが暴力的に解いてしまうおかげで
後から思い返してようやく良さに気づくといった具合、話のテンポは丁度良いものの、どうにも語るに歯切れがよくない
一作ではないかと思う次第だ。
絵という二次元を利用した仕掛けの進め方そのものはそれでちょうどよかったのかもしれない。
表題通り『BOX』は、唐突に出現した謎の箱に閉じ込められた主人公たちが、箱の提示するパズルを解いて脱出を目指すという
命のかかった『リアル脱出ゲーム』の物語で、登場人物はそれぞれに隠し事を抱えつつその隠し事に振り回される形で
一人ずつ箱に囚われてゆく。
そこへ登場するのが著者の小説『キョウコのキョウは恐怖の恐』が初出となるトリックスターの「キョウコ」で、
奔放ながら話に対しては親切に謎を一刀両断してゆく。彼女が登場するまでは箱に翻弄されていた主人公たちは、
著者も含めて彼女の発想に助けられ、謎を次々と破り箱の奥へ進んでゆく。
三巻は特に彼女が大半の謎を解きながら説明する場面が大半で、主人公達は解かれた謎から現れた選択肢をただ決定する
役割に徹してしまっている。主人公が箱に囚われる大きな理由となった問題が、重みを失ってしまう。
話の最後で箱が示す決断も重みが薄れてしまい、箱のナビゲータである少女とキョウコの一騎打ちに巻き込まれるという
様相で、少々勿体無さを覚えた。
「錯視」を組み込んだトリックを違和感なく書き上げる仕業は見事で、トリックを円滑に見せるためにキョウコという
便利なキャラクターに話を任せてしまったのは、トリックを描くか話で見せるかを選んだ結果なのだとは思う。
ただ、女性の目が美しくなくなった。見栄を切る場面がところどころにあるが、三巻でついに少女が正体を現す場面の
目は線こそ多重だがものは球体のようで、勢いや怖さはかけてしまっているように見えた。
絵として美しいのは二巻の、融合した老夫婦のカットで、穏やかに箱へ閉じ込めらることを選び半身が溶けあう老夫婦の
微笑みは彫像のように静かだ。『西遊妖猿伝』の人参果の樹の夫婦や、もっとたどれば『生物都市』の金属と人間の
境目を失った物の曖昧さと完全さは著者の線でなくては魅力的に見えない。
不法投棄のようにトリックを使い倒すさまは小気味よいものの、あっさりとキョウコが暴力的に解いてしまうおかげで
後から思い返してようやく良さに気づくといった具合、話のテンポは丁度良いものの、どうにも語るに歯切れがよくない
一作ではないかと思う次第だ。