その日は朝から念仏のように封筒封筒と呟いていた。携帯電話の予定表にも用事の済んだ少し後の時間にアラームが鳴るよう「郵送」の予定を入れている。気を抜くと忘れてしまいそうで一刻も早く用事を済ませたかった。
普段のやり取りを電子メールやアプリケーションで済ませる昨今は茶封筒の買い置きという習慣などとうに失われ、モノが足りなくなればたいがい近所の雑貨店を追い散らしたコンビニで購入できるという他人頼みの安心感が書類の督促という事態を招いたとはいえ、郵送を出先で忘れる体たらくを重ねないためにも必要な支度だった。それでもずぼらの悲しさか、予想通り当初考えていた「用事への行きがけにコンビニへ寄る」ことは寝坊により許されず、結局出先の駅前でポストと切手と封筒を探す羽目に陥った。休日に郵便局が開いているわけもない。かといって平日は平日で勤め先の歩いて十五分かかる郵便局に休憩時間の四分の一を使うのも億劫だ。といった過去のものぐさを恨みながらコンビニを探す。大きな駅のおかげか比較的すぐ見つかった。ポストは以前近くで見かけたので場所はわかっている。あとは切手と封筒をコンビニで買うだけだった。
雨が降り始めていた。A4の書類を三つ折りにして入れられれば良いので中くらいの封筒を文房具の棚から選び、レジへ持っていこうとしたところで両面テープか糊が必要なことに気が付いた。糊は無かったので両面テープを取る。レジへ向かい切手の額を口頭で伝えて封筒と両面テープを買った。今思えばその時のレジ係が薄ら怪訝な表情を浮かべていたことをもっと注意すべきだったのかもしれない。ともかく私は必要なものを購入して宛先を書くためにコンビニの二軒隣の喫茶店へ腰を据えたのだった。
メモした宛先をボールペンで封筒へ書き取り、一度字を間違えてくしゃくしゃにした。もう一度書き直し、封筒へ書類を収めて封をしようと両面テープを取り出し、封筒の口に触れた。そこには両面テープが既に貼られていた。コンビニ店員の表情の理由が分かった気がしたが今更文句を言っても仕方ない。先方も仕事なのだ、特におせっかいとも親切とも呼ばれるサービス「封筒には両面テープが既に付いておりますがよろしいですか」などの言葉をかける義理はない。下手をすれば「両面テープは別に使うんだよ」と余計な文句を受けるかもしれないレジは消極的な方が安全だ。それでも表情に出すなら言葉で伝えて欲しかったと封筒の入っている透明なビニール袋をひっくり返すとそこには予め両面テープを貼っているというサービスが書かれていた。
二日後に送り先から「切手代が足りませんでした」と連絡をもらい再度しょげる未来を知らず、筆箱の中にしまい入れた粗忽の象徴の両面テープを意識的に忘れながらポストへ封書を投函し、その時の私は一息をついて帰路に着いた。
普段のやり取りを電子メールやアプリケーションで済ませる昨今は茶封筒の買い置きという習慣などとうに失われ、モノが足りなくなればたいがい近所の雑貨店を追い散らしたコンビニで購入できるという他人頼みの安心感が書類の督促という事態を招いたとはいえ、郵送を出先で忘れる体たらくを重ねないためにも必要な支度だった。それでもずぼらの悲しさか、予想通り当初考えていた「用事への行きがけにコンビニへ寄る」ことは寝坊により許されず、結局出先の駅前でポストと切手と封筒を探す羽目に陥った。休日に郵便局が開いているわけもない。かといって平日は平日で勤め先の歩いて十五分かかる郵便局に休憩時間の四分の一を使うのも億劫だ。といった過去のものぐさを恨みながらコンビニを探す。大きな駅のおかげか比較的すぐ見つかった。ポストは以前近くで見かけたので場所はわかっている。あとは切手と封筒をコンビニで買うだけだった。
雨が降り始めていた。A4の書類を三つ折りにして入れられれば良いので中くらいの封筒を文房具の棚から選び、レジへ持っていこうとしたところで両面テープか糊が必要なことに気が付いた。糊は無かったので両面テープを取る。レジへ向かい切手の額を口頭で伝えて封筒と両面テープを買った。今思えばその時のレジ係が薄ら怪訝な表情を浮かべていたことをもっと注意すべきだったのかもしれない。ともかく私は必要なものを購入して宛先を書くためにコンビニの二軒隣の喫茶店へ腰を据えたのだった。
メモした宛先をボールペンで封筒へ書き取り、一度字を間違えてくしゃくしゃにした。もう一度書き直し、封筒へ書類を収めて封をしようと両面テープを取り出し、封筒の口に触れた。そこには両面テープが既に貼られていた。コンビニ店員の表情の理由が分かった気がしたが今更文句を言っても仕方ない。先方も仕事なのだ、特におせっかいとも親切とも呼ばれるサービス「封筒には両面テープが既に付いておりますがよろしいですか」などの言葉をかける義理はない。下手をすれば「両面テープは別に使うんだよ」と余計な文句を受けるかもしれないレジは消極的な方が安全だ。それでも表情に出すなら言葉で伝えて欲しかったと封筒の入っている透明なビニール袋をひっくり返すとそこには予め両面テープを貼っているというサービスが書かれていた。
二日後に送り先から「切手代が足りませんでした」と連絡をもらい再度しょげる未来を知らず、筆箱の中にしまい入れた粗忽の象徴の両面テープを意識的に忘れながらポストへ封書を投函し、その時の私は一息をついて帰路に着いた。