建物が壊されるとタケノコのようにマンションが生える。住宅街ならば見かけのそっくりな建売住宅が、かつては庭のあった家をコンクリートで踏み固めてぎゅうぎゅうに、多い時は旗竿地まで作って三軒も建てられている。建物と建物を隔てる距離は短くマンションの部屋の壁や天井よりは離れてはいるものの、大きな音を出せばすぐ聞こえ、匂いの強い料理を作れば窓から窓へと伝わる距離しか離れていない。昔ながらのブロック塀は撤去され家と家を隔てるものは弱々しい針金の柵でしかなく、今日も以前は高いブロック塀から金木犀の木が鳥の住処を提供しているのが見える限りの家が数ヶ月でなくなり、跡地にできた三つ子の家の前に引越し業者の車が止まっていた。個人商店はあっという間に整地され、庭のある家も整地され、商店街も整地され、跡地には家しかない。何か買い物をしたい時はコンビニかショッピングモールという極端しか選べない。町内会には入らない。
そうしてマンションの部屋の延長で家を買って住んでいる人の顔を私達は知らない。向こうも知らないふりをしている。不動産会社だけが気長に虎視眈々と私達の家の持ち主の命が絶えることを待っている。潰したらいくつ家ができるかを指折り待たれながらかろうじて洗濯物だけが人の存在を示す家だけの街を不気味に思いながらかつての住民は一人で歩いている。公園に集まる人はマンションに戻っていく。家に戻る人は見かけない。庭というものは家に潰されてなくなった。人間以外の場所を知らない人間だけが街を作り、そのうち振り返ると本当に人間しかいなくなって、ペットショップで生き物を買い飼育する。家の中で。
そうしてマンションの部屋の延長で家を買って住んでいる人の顔を私達は知らない。向こうも知らないふりをしている。不動産会社だけが気長に虎視眈々と私達の家の持ち主の命が絶えることを待っている。潰したらいくつ家ができるかを指折り待たれながらかろうじて洗濯物だけが人の存在を示す家だけの街を不気味に思いながらかつての住民は一人で歩いている。公園に集まる人はマンションに戻っていく。家に戻る人は見かけない。庭というものは家に潰されてなくなった。人間以外の場所を知らない人間だけが街を作り、そのうち振り返ると本当に人間しかいなくなって、ペットショップで生き物を買い飼育する。家の中で。