二ヶ月ほっぽらかした文章に一旦ケリをつけました。
微妙な文でお目汚し。
:
ほんとうは、批評と言うものは、ものの一面を新しく開くものだ。ものの選択を増やしてあげるためのことばであり文章なのだ。だからこのゲームについて私のことばがものをいうのは、ここまでにしておこうと思う。
『戦国無双』シリーズには戦場に「ミッション」という要素が用意されている。本筋のクリア条件とは異なる戦功目標で、条件を満たすと何らかの効果が現れる。もちろん、ミッションをクリアしなくともゲームをクリアすることは可能だ。このゲームの場合、ミッションにはゲーム上でのクリア要素のほかに、発生させることでシナリオの詳細を補完する役割があった。主なゲームモードである「無双モード」では、戦場に向かう前にムービーやナレーションによって状況の大枠が説明され、キャラクターとの邂逅やイベントはプレイする戦場で行われるという構造で話が進んでゆく。単に戦場で敵キャラクターと邂逅するだけではなく、ミッションによる邂逅の意味づけがゲームとしても行われることで、プレイヤーは条件をクリアしつつストーリーにより近づくことが出来たのだ。
たとえば以前の文で触れた織田信長の妻・濃姫の場合、シリーズ一作目の「戦国無双」では夫に付き従うシナリオと夫と戦うシナリオの二種類が用意されている。分岐は「姉川の戦い」ステージでのミッション「涙と革命」の成否で決まり、選択はプレイヤーに一任。このミッションでは、敵として信長の妹・お市の方が登場するが、彼女を撃破するかしないかが成否の鍵であり、同時に、互いに妻としてどんな生き方を取るかを濃姫はお市を通して選択する、という大枠の筋書きでは語られないストーリーがここでプレイヤーに提示される構成がゲームとして表されているのだ。そして、ゲーム中の選択がシナリオそのものの分岐に関わることで、ミッションはお話の単なる一要素としてではなく、プレイヤー自身が話の道筋を決めてゆくという点において主体的になれるものだった。
いっぽうで二作目以降は、キャラクターが増加したこともありシナリオ分岐は廃止され、さらにミッションの固有名詞が消えた。ここで注意したいのは、固有名詞が消えたことでミッションひとつひとつの意義が薄くなり、ゲームとしてはミッションそのものが話から外れるという点でストイックになったといえよう。前作では達成度の要素の一つだったミッションに縛られることなく、戦場の自由度が上がった。ゲームが直接話に響くことはなくなったものの、キャラクターにそぐった話をしっかり作り上げた上でゲームが動くよう配慮されているため、前作よりも遊びやすい。本作もミッション自体の条件や位置づけは二作目とほぼ同様である。だが、ひとつだけ前作との遊び心地が明らかに違うことがある。
それは、ミッションを達成しなかった場合のペナルティがかなり厳しいことだ。
本作ではほとんどのミッションがステージクリアの条件と結びついている。ミッションをクリアするたびに味方の進軍や敵の進軍が変化することは以前と同様だが、今回は味方の軍が敵に突撃する頻度が多く、ミッションを放置すると大事な味方がたちまちやられてしまい、難易度が易しくて自分がやられていないのに勝手にゲームオーバーになることがままある。また、軍団の「士気ゲージ」がゲームから消えたことも味方の敗走しやすさに影響していると考えられる。「士気」とは「やる気」と思ってもらえばよく、ゲージの多寡で所属チームの兵士が強化/弱体化するというシステムだ。士気はプレイヤーや味方が一定の人数の敵をやっつけることで上昇するので、ピンチの時でも大活躍すれば味方の生存もなんとかなるという効果があった。これが本作では失われたことで味方の生存率が下がり、ミッションをクリアすることの必然性が増したのではないだろうか。
ミッションについて、ざっと印象をまとめるとこんな感じになる。
ミッション名の有無 ストーリーとの関連性 ペナルティの難度
一作目 あり 高い 低い
二作目 なし 中間 低い
本作 なし 低い 高い
あくまでも個人の印象であることは了承して欲しい。本作でもミッションがまったくストーリーに関連していないことはなく、邂逅することで武将同士のやり取りが発生し、話の細部が語られると言う構成は変わらない。ただ、過去作と比べると、ゲームを遊んでいる最中の関心が、話を追いかけることよりゲームをクリアするほうに比重が傾いていると考えられるのだ。いっぽうで、各キャラクターのしっぽりした関係性は過剰ともいえるほどきれいな映像で語られる。それでいてミッションをクリアしてもお話はあまり語られず、むしろミッションとは直接関係の無いところで、関連の深い武将が援軍として登場したりするので、ミッションはゲームのさなかクリアするためのただの「壁」となっていないだろうか。また、今回は「武将効果」と呼ばれる、特定の武将をある条件――コンボ200以上や体力MAXなど――でやっつけるとアイテムがもらえるという「ミッション」が存在しており、こっちはシナリオとは全く関係ない。「敵の防御ダウン」とか一見嬉しいおまけかも知れない。だが彼の設置されているステージにはたいがい「強い武将の○○を××分以内に倒せ!」というミッションが存在する。アイテムの制限やらいろんな制限が、こいつをテクニカルに撃破することをプレイヤーに義務付ける。話は頭から吹っ飛ぶ。
そんな面倒なことを考えず、味方がやられないうちに全員撃破すればいいじゃない、という考え方もある。だがその遊び方ならば、もっと他にも安価に楽しめるゲームはたくさん存在すると思う。『戦国無双』ならではの話と遊び方を楽しみに、プレイヤーはコントローラを握るのだ。本作をプレイする中どうしても、話においても遊び方においての作り手から押し付けられた窮屈な感覚が、最後まで取れなかった。ゲームのルールの制限はプレイヤーの意欲を掻き立てるものであって、お話の飾りではない。楽しく遊んで、次の挑戦への意欲を残して終る、そんな遊び方を長く続けられるようなものを遊びたいと思う。
微妙な文でお目汚し。
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ほんとうは、批評と言うものは、ものの一面を新しく開くものだ。ものの選択を増やしてあげるためのことばであり文章なのだ。だからこのゲームについて私のことばがものをいうのは、ここまでにしておこうと思う。
『戦国無双』シリーズには戦場に「ミッション」という要素が用意されている。本筋のクリア条件とは異なる戦功目標で、条件を満たすと何らかの効果が現れる。もちろん、ミッションをクリアしなくともゲームをクリアすることは可能だ。このゲームの場合、ミッションにはゲーム上でのクリア要素のほかに、発生させることでシナリオの詳細を補完する役割があった。主なゲームモードである「無双モード」では、戦場に向かう前にムービーやナレーションによって状況の大枠が説明され、キャラクターとの邂逅やイベントはプレイする戦場で行われるという構造で話が進んでゆく。単に戦場で敵キャラクターと邂逅するだけではなく、ミッションによる邂逅の意味づけがゲームとしても行われることで、プレイヤーは条件をクリアしつつストーリーにより近づくことが出来たのだ。
たとえば以前の文で触れた織田信長の妻・濃姫の場合、シリーズ一作目の「戦国無双」では夫に付き従うシナリオと夫と戦うシナリオの二種類が用意されている。分岐は「姉川の戦い」ステージでのミッション「涙と革命」の成否で決まり、選択はプレイヤーに一任。このミッションでは、敵として信長の妹・お市の方が登場するが、彼女を撃破するかしないかが成否の鍵であり、同時に、互いに妻としてどんな生き方を取るかを濃姫はお市を通して選択する、という大枠の筋書きでは語られないストーリーがここでプレイヤーに提示される構成がゲームとして表されているのだ。そして、ゲーム中の選択がシナリオそのものの分岐に関わることで、ミッションはお話の単なる一要素としてではなく、プレイヤー自身が話の道筋を決めてゆくという点において主体的になれるものだった。
いっぽうで二作目以降は、キャラクターが増加したこともありシナリオ分岐は廃止され、さらにミッションの固有名詞が消えた。ここで注意したいのは、固有名詞が消えたことでミッションひとつひとつの意義が薄くなり、ゲームとしてはミッションそのものが話から外れるという点でストイックになったといえよう。前作では達成度の要素の一つだったミッションに縛られることなく、戦場の自由度が上がった。ゲームが直接話に響くことはなくなったものの、キャラクターにそぐった話をしっかり作り上げた上でゲームが動くよう配慮されているため、前作よりも遊びやすい。本作もミッション自体の条件や位置づけは二作目とほぼ同様である。だが、ひとつだけ前作との遊び心地が明らかに違うことがある。
それは、ミッションを達成しなかった場合のペナルティがかなり厳しいことだ。
本作ではほとんどのミッションがステージクリアの条件と結びついている。ミッションをクリアするたびに味方の進軍や敵の進軍が変化することは以前と同様だが、今回は味方の軍が敵に突撃する頻度が多く、ミッションを放置すると大事な味方がたちまちやられてしまい、難易度が易しくて自分がやられていないのに勝手にゲームオーバーになることがままある。また、軍団の「士気ゲージ」がゲームから消えたことも味方の敗走しやすさに影響していると考えられる。「士気」とは「やる気」と思ってもらえばよく、ゲージの多寡で所属チームの兵士が強化/弱体化するというシステムだ。士気はプレイヤーや味方が一定の人数の敵をやっつけることで上昇するので、ピンチの時でも大活躍すれば味方の生存もなんとかなるという効果があった。これが本作では失われたことで味方の生存率が下がり、ミッションをクリアすることの必然性が増したのではないだろうか。
ミッションについて、ざっと印象をまとめるとこんな感じになる。
ミッション名の有無 ストーリーとの関連性 ペナルティの難度
一作目 あり 高い 低い
二作目 なし 中間 低い
本作 なし 低い 高い
あくまでも個人の印象であることは了承して欲しい。本作でもミッションがまったくストーリーに関連していないことはなく、邂逅することで武将同士のやり取りが発生し、話の細部が語られると言う構成は変わらない。ただ、過去作と比べると、ゲームを遊んでいる最中の関心が、話を追いかけることよりゲームをクリアするほうに比重が傾いていると考えられるのだ。いっぽうで、各キャラクターのしっぽりした関係性は過剰ともいえるほどきれいな映像で語られる。それでいてミッションをクリアしてもお話はあまり語られず、むしろミッションとは直接関係の無いところで、関連の深い武将が援軍として登場したりするので、ミッションはゲームのさなかクリアするためのただの「壁」となっていないだろうか。また、今回は「武将効果」と呼ばれる、特定の武将をある条件――コンボ200以上や体力MAXなど――でやっつけるとアイテムがもらえるという「ミッション」が存在しており、こっちはシナリオとは全く関係ない。「敵の防御ダウン」とか一見嬉しいおまけかも知れない。だが彼の設置されているステージにはたいがい「強い武将の○○を××分以内に倒せ!」というミッションが存在する。アイテムの制限やらいろんな制限が、こいつをテクニカルに撃破することをプレイヤーに義務付ける。話は頭から吹っ飛ぶ。
そんな面倒なことを考えず、味方がやられないうちに全員撃破すればいいじゃない、という考え方もある。だがその遊び方ならば、もっと他にも安価に楽しめるゲームはたくさん存在すると思う。『戦国無双』ならではの話と遊び方を楽しみに、プレイヤーはコントローラを握るのだ。本作をプレイする中どうしても、話においても遊び方においての作り手から押し付けられた窮屈な感覚が、最後まで取れなかった。ゲームのルールの制限はプレイヤーの意欲を掻き立てるものであって、お話の飾りではない。楽しく遊んで、次の挑戦への意欲を残して終る、そんな遊び方を長く続けられるようなものを遊びたいと思う。