有料チャンネルの『ヒストリーチャンネル』で今月から放映されている『マスター・オブ・アームズ』という番組を定期的に視聴している。他の番組を見たついでにつけっぱなしにしていたテレビから流れていた番組をきっかけに、毎週末は素直に帰宅するようになった。冒頭に「家で絶対に真似してはいけません」と流れるがそんなに乱暴な番組ではない。「ARMS」の題の通り、技術者が腕を競って武器を作るだけの番組だ。ただしその武器は歴史上のマイナーなものである。
まず六時間から五時間ほどの短時間でひとつ、次に四日間をかけてひとつ作り上げる。作り上げた武器に三人の審査員が判定を行い、見た目と歴史的な再現性、それからもちろん「破壊力」で採点を行う。最後の審査に勝ち残れば「マスター・オブ・アームズ」の称号と賞金一万ドルが渡されるという企画だ。最終審査は武器に応じた的が用意され、元アメリカ海軍のスナイパーの肩書を持つ小柄ながら目つきの怖すぎるスタッフが渾身の力をふるってパフォーマンスを行う。人の形をした砂袋をナイフでぶった切ったり、クロスボウを片手撃ちしたりと少々やりすぎの感が漂うのはご愛敬だ。絵面はおっさんたちがひたすらグラインダーを筆頭にした道具で金属と戦う地味なもので、人さまから「何が楽しいのか」と何度か尋ねられた。
何が楽しいのかといわれると、各技術者の仕事で「お手本」からそれぞれの描いた姿かたちが生み出されること、それらが元アメリカ海軍のスナイパーの手で試され、立派に役目を果たすか、はたまた大変な惨状を引き起こすかという武器の姿が見られることだ。そういう意味では、第一回目のアックスピストル編の構成はおみごとだと思う。
まず最初にバトルアックスを六時間で作成する。審査が入り一人が脱落した。娘を追い払うためにハンマーを取った鍛冶屋と時代考証にこだわりの強い博物館勤めの人間が濃すぎるせいか、堅実な仕事をした20年キャリアの鍛冶屋が落とされる。「納得がいかない」とぼやきながら退場した彼を見送って本選だ。お題はフリントロック式アックスピストル。19世紀にヨーロッパのごくごく一部で使用された、斧と銃が一体化した武器である。これを最初に作成した斧をベースに「進化させる」のだ。当然ながら暴発なしにきっちり撃てて、斧の切れ味も高くなければならない。そして元アメリカ海軍スナイパーの剛腕で振り回されても大丈夫な堅牢性がなければならない。
この回の本選に残ったのは片やナイフ専門、片や銃専門と住みわけが出来ていて、得意な加工も正反対なところが見ていて安定感があった。その後の回では技術者の腕が技術に追いつかない悲惨な事態が起きたので、評価が相対的に上がっていることは否定しない。ともかく斧はできている。後は銃である。
だが、片方の参加者はついやってしまった。「俺が人を銃で殴るなら、銃身を掴んで銃床で殴る」と、銃床に斧をつけたのだ。誰が見ても銃を撃つときに自分に刺さりそうな工夫だが、四日間合計四十時間の作業で「実際に使ったとき」に想像が及ばなかったらしい。完成図はなかなかに格好良かったのだが、案の定スナイパーから「自分に刺さる」と正論をいただいて彼は敗退した。優勝は予想を覆しての博物館員。仮に台本があったとしても、完成したアックスピストルは美しかったのでどうでもよくなる。
どうやってもたとえばプロの日本刀職人がこの番組に出ることは断じてなさそうだし、毎回変わる参加者を見ているとどれだけ刃物の需要があるのか、またアマチュアでもナイフを打つ作業ができるほどの緩さも含めてのんびりした気持ちになってしまう。画面の中で実用に堪えないとんでもないものが完成していても、それを見る目は出来の悪い子供を見守るような視線だと思う。殺意満々な実践テストもスパイスだと周囲に勧めているが、とりあえず賛同者は今のところ自分一人だけである。
まず六時間から五時間ほどの短時間でひとつ、次に四日間をかけてひとつ作り上げる。作り上げた武器に三人の審査員が判定を行い、見た目と歴史的な再現性、それからもちろん「破壊力」で採点を行う。最後の審査に勝ち残れば「マスター・オブ・アームズ」の称号と賞金一万ドルが渡されるという企画だ。最終審査は武器に応じた的が用意され、元アメリカ海軍のスナイパーの肩書を持つ小柄ながら目つきの怖すぎるスタッフが渾身の力をふるってパフォーマンスを行う。人の形をした砂袋をナイフでぶった切ったり、クロスボウを片手撃ちしたりと少々やりすぎの感が漂うのはご愛敬だ。絵面はおっさんたちがひたすらグラインダーを筆頭にした道具で金属と戦う地味なもので、人さまから「何が楽しいのか」と何度か尋ねられた。
何が楽しいのかといわれると、各技術者の仕事で「お手本」からそれぞれの描いた姿かたちが生み出されること、それらが元アメリカ海軍のスナイパーの手で試され、立派に役目を果たすか、はたまた大変な惨状を引き起こすかという武器の姿が見られることだ。そういう意味では、第一回目のアックスピストル編の構成はおみごとだと思う。
まず最初にバトルアックスを六時間で作成する。審査が入り一人が脱落した。娘を追い払うためにハンマーを取った鍛冶屋と時代考証にこだわりの強い博物館勤めの人間が濃すぎるせいか、堅実な仕事をした20年キャリアの鍛冶屋が落とされる。「納得がいかない」とぼやきながら退場した彼を見送って本選だ。お題はフリントロック式アックスピストル。19世紀にヨーロッパのごくごく一部で使用された、斧と銃が一体化した武器である。これを最初に作成した斧をベースに「進化させる」のだ。当然ながら暴発なしにきっちり撃てて、斧の切れ味も高くなければならない。そして元アメリカ海軍スナイパーの剛腕で振り回されても大丈夫な堅牢性がなければならない。
この回の本選に残ったのは片やナイフ専門、片や銃専門と住みわけが出来ていて、得意な加工も正反対なところが見ていて安定感があった。その後の回では技術者の腕が技術に追いつかない悲惨な事態が起きたので、評価が相対的に上がっていることは否定しない。ともかく斧はできている。後は銃である。
だが、片方の参加者はついやってしまった。「俺が人を銃で殴るなら、銃身を掴んで銃床で殴る」と、銃床に斧をつけたのだ。誰が見ても銃を撃つときに自分に刺さりそうな工夫だが、四日間合計四十時間の作業で「実際に使ったとき」に想像が及ばなかったらしい。完成図はなかなかに格好良かったのだが、案の定スナイパーから「自分に刺さる」と正論をいただいて彼は敗退した。優勝は予想を覆しての博物館員。仮に台本があったとしても、完成したアックスピストルは美しかったのでどうでもよくなる。
どうやってもたとえばプロの日本刀職人がこの番組に出ることは断じてなさそうだし、毎回変わる参加者を見ているとどれだけ刃物の需要があるのか、またアマチュアでもナイフを打つ作業ができるほどの緩さも含めてのんびりした気持ちになってしまう。画面の中で実用に堪えないとんでもないものが完成していても、それを見る目は出来の悪い子供を見守るような視線だと思う。殺意満々な実践テストもスパイスだと周囲に勧めているが、とりあえず賛同者は今のところ自分一人だけである。