蒸し暑いので冷房をつけたまま眠る日々が続く。ある日、布団の脇に積まれた本の山の一番上に置いていた本を手に取り驚いた。紙のカバーに水で濡らしてから乾いたような凹凸のゆがみがいつの間にか出来ていたのだ。それからは本の上にタオルを載せてから寝るようになったものの、朝起きて部屋を眺めると水滴の痕跡が床に残っていたり、部屋に入って来た兄弟の頭へいきなり水滴が落ちかかって来たりと妙な事ばかり起きる。どうやら冷房の所為だと人から教えられても蒸し暑さに耐えかねて冷房を付ければ降り始めの雨のように不揃いの間隔で水滴がどこからともなく落ちてくる。部屋の中で何かをするたびに、ポツポツと、今まで外で聴いては傘を取り出すための指標にしていた音が部屋の中で響いている。
窓が二重になってから外の音が聞こえなくなった。煩わしさから解放される一方で、聞こえていたものがなくなるというのは妙なもので、降り始めの雨の音すら聞こえない部屋では、雨が線になりガラスの向こうで降り注いでいる光景が見えるまで分からない。流れ落ちる雨の音が聞こえない部屋は機械と人間が作る音がせいぜいである。音楽を止めても虫の声すら届かない沈黙は、静寂を通り越してうすら寒い。天井から突如として落ちる水滴は、冷房に囲まれてやっと過ごす暑熱と沈黙を紛らわす。
天気のいい日に窓を開けてエアコンを「送風」にしたまま過ごせば治りますよと人から聞いた。気付くと晴天だが窓を開けられない残暑と豪雨の季節に入り込んでいる最中、そう都合の良い、窓を開け放していても良いような天気はなかなか見つからない。部屋の雨音は冷房をつけるたびに未だ鳴り続けている。
窓が二重になってから外の音が聞こえなくなった。煩わしさから解放される一方で、聞こえていたものがなくなるというのは妙なもので、降り始めの雨の音すら聞こえない部屋では、雨が線になりガラスの向こうで降り注いでいる光景が見えるまで分からない。流れ落ちる雨の音が聞こえない部屋は機械と人間が作る音がせいぜいである。音楽を止めても虫の声すら届かない沈黙は、静寂を通り越してうすら寒い。天井から突如として落ちる水滴は、冷房に囲まれてやっと過ごす暑熱と沈黙を紛らわす。
天気のいい日に窓を開けてエアコンを「送風」にしたまま過ごせば治りますよと人から聞いた。気付くと晴天だが窓を開けられない残暑と豪雨の季節に入り込んでいる最中、そう都合の良い、窓を開け放していても良いような天気はなかなか見つからない。部屋の雨音は冷房をつけるたびに未だ鳴り続けている。