気になる漫画家を挙げてみようと思いましたが、意外に漫画家で
今よみたい!と思う方はそこまでいませんでした。
珍しくいつかは読みたい!と思う一人の漫画を今日本屋でふっと
買う気になったのは、オビの推薦文の勢いのよさでした。
『
○○○さん大推薦!
「
」
*締め切りギリギリまで色々な著名人に、ここに入るコメントをお願いしましたが全て断られました。
』(原文ママ)
ものすごい暴投ぶりです。読ませたいのか読ませたくないのかすらわからない
投げやりぷりですが、表紙のタンジェリン・オレンジの暖かさとベレー帽の
男のアンパンマンを髣髴とさせる団子鼻艶ほっぺのセットに安心感をおぼえ
手に取りました。描かれている動物の目が全員死んでいることに気づいたのは
購入してからでした。
店員がバーコードを読み取ってビニールを外し、わら半紙色の字に紺の四角を
真ん中に染めて中に書店の名前を抜いたカバーをつけようと本の表紙を軽く
開きました。旧名オレンジ・イエローの背景に肌色の塊が見えました。予感が頭をよぎります。
やっぱり絵のままの人のようでした。買ってそのまま、小学生のように読みながら
帰宅するには年を取りすぎてしまった漫画に敗北感を覚えながら黙って帰ります。
ネタにされすぎてしまった、雄雄しくかすれて弱々しく歪む線の薄い絵に混じって、
第二話の「ビデオレター」第一コマの左端でキーボードを必死に打つ口をむすんだ
おっさんの、まじめな一生懸命さがにじみ出ているまっとうな、あまりにまっとうな
姿を見つけるとせつなくなります。一見の価値はあります。
最後の浜岡賢次との合作漫画直前の「秋田書店のバカヤロー」のひと言で、
それまでの漫画の細かいところが全部ふっとぶように出来ているのは照れ隠しでしょうか。
いえ、あのまじめなおじさんに気づく前から、最初に読み終えた後になんだか
ひどくほほえましい気持ちに駆られました。蜘蛛の糸を切ってしまった
カンダタでさえいとおしく思えるようになったお釈迦様の心境のような。
ずうずうしいたとえですが、言われているほどめちゃくちゃでもないし、オチに
つなげるための話の展開はかなりかっちり作られていると思います。
ただ、やはり絵柄とギャグの外しっぷり、下品さにはそれなりの耐性を読者に
求めるのでそこは注意すべきなのでしょう。ほどほどに生暖かく見つめてやるのが
いちばん読みやすいと思います。
:『画太郎先生だぁ~い好き(ハート)』 満☆画太郎作 秋田書店 2009年11月