えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

・緑の手にはなれない

2021年11月13日 | コラム
 植物と噛み合わない。水の加減が元々難しかったのだ、と慰められても小さな杉林のような苔玉が徐々に茶色く枯れて土色に崩れるまでを毎日眺めるのは心苦しかったし、花束が日に日に色褪せて床に乾いた葉を散らす様子も痛々しい。今世話を頼まれている名前の知らない青い葉っぱだけの植木と、肉厚の黄緑色の葉とピンク色のラッパのような小粒の花を咲かせる鉢植えをおっかなびっくりと世話している。

 葉と葉の間から渦を巻いて若い葉が顔を覗かせる。その間にも下の方では枯れた葉が取り忘れたズボンのタグのようにくっついたまま干からびて、強い風が吹いても上の広い葉に守られちっとも靡かない。噴水のように葉は茂る。元は花束の飾りだったそうだが、水に入れているうちに根が出てきたので土に植え替えた、と前の育て主は言っていた。その人は何事も育てるのがうまい。水から土に植え替えても植物はおとなしく従い、その人の手の赴くままに従って育っている。私は堂々と枯れそうな葉や芽を摘むことも怖くてできず、くちばしのついた計量カップで土に水が沁み込むまで水をやることしかできない。

 もう一つの鉢植えは既に枯れた花が摘み取られてほとんどが枝だけになっているものの、土に近いところからじみじみと茶色くなっているようで、それでも太陽に当てている間は気持ちよさそうに見えるが実のところはわからない。枯れるか青々と春を迎えるか、冬のさじ加減を抱えて途方にくれている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする