ドヴォルザークの弦楽四重奏曲第12番《アメリカ》を聞く。多くの室内楽曲の中でも、大好きな曲の一つだ。
我が家にあるのは、ほとんどスメタナ四重奏団の演奏ばかり。一つは昭和46年に購入した日本コロムビアのヒストリカル・レコーディング1000シリーズの一つで、HR-1002-S(-Sはスプラフォン原盤を表す) というモノラル録音。もう1つは、PCM録音のLPで、1978年の11月に、岐阜市民会館でのコンサート・ライブを録音したもの(OX-7152-ND)だ。これと同じ音源で、CDになっているものをブックオフで見つけ、購入したものが GES-9244 というCD。
モノラルのヒストリカル・レコーディングのほうは、大宮真琴さんがわかりやすい解説をつけている。それによれば、スメタナ四重奏団は1942年にプラハで結成され、1945年から公開の活動を始めたという。当初はチェコフィルの傘下にあったが1949年に独立したとあるから、ステレオ録音が始まるのが50年代後期と考えると、この録音は1950年代前半までに録音されたと考えるのが自然だろう。スメタナ四重奏団には、たしか1960年代にもアナログ録音で同曲の録音があるはずだが、あいにくこれは持っていない。
1978年、岐阜市民会館でのライブ録音は、演奏の終わりに拍手が入るが、堂々としたいい演奏だ。モノラルの旧録音と比較すると、第1楽章のテンポが少しだけゆっくりとしており、あとはほぼ同じくらいである。モノラルの旧録音LPは、冒頭のはつらつとしたテンポがこころよいが、録音が古く、せっかくの弦楽器の音としての魅力が、かなりそがれている。それに対し、1978年の演奏は、スメタナ四重奏団には珍しいコンサートライブで、デジタル録音初期のものでありながら、落ち着いた雰囲気の中で集中力に満ちた演奏を朗々と聞かせてくれる。第1楽章のテンポの違いは、このコンサートライブという条件から由来するものかもしれない。
ちなみに、各楽章の演奏時間の比較は次の通り。
■1950年代のモノラル録音
I=6'40"/II=8'05"/III=3'40"/IV=5'40" total=24'05"
■1978年のデジタル録音
I=7'09"/II=8'09"/III=3'39"/IV=5'32" total=24'29"
スメタナ四重奏団の「アメリカ」は、第1楽章の速いテンポが特徴的だと思うのだが、この楽章の相違を除けば、演奏時間の共通性は驚くほどだ。テンポが基本的な解釈の思想を表すとすれば、スメタナ四重奏団は基本的な解釈を30年間保ち続けた、といってよいのだろうか。
もう一枚、エマーソン弦楽四重奏団のCD(POCG-7074)があるのを忘れていた。ちなみに、同曲の演奏時間は次の通り。
■1984年のエマーソン弦楽四重奏団
I=9'02"/II=7'42"/III=3'36"/IV=5'12" total=25'32"
音の響きとしての魅力に乏しいヒストリカル・レコーディングは、こうしたことを考えさせるきっかけとなる。
我が家にあるのは、ほとんどスメタナ四重奏団の演奏ばかり。一つは昭和46年に購入した日本コロムビアのヒストリカル・レコーディング1000シリーズの一つで、HR-1002-S(-Sはスプラフォン原盤を表す) というモノラル録音。もう1つは、PCM録音のLPで、1978年の11月に、岐阜市民会館でのコンサート・ライブを録音したもの(OX-7152-ND)だ。これと同じ音源で、CDになっているものをブックオフで見つけ、購入したものが GES-9244 というCD。
モノラルのヒストリカル・レコーディングのほうは、大宮真琴さんがわかりやすい解説をつけている。それによれば、スメタナ四重奏団は1942年にプラハで結成され、1945年から公開の活動を始めたという。当初はチェコフィルの傘下にあったが1949年に独立したとあるから、ステレオ録音が始まるのが50年代後期と考えると、この録音は1950年代前半までに録音されたと考えるのが自然だろう。スメタナ四重奏団には、たしか1960年代にもアナログ録音で同曲の録音があるはずだが、あいにくこれは持っていない。
1978年、岐阜市民会館でのライブ録音は、演奏の終わりに拍手が入るが、堂々としたいい演奏だ。モノラルの旧録音と比較すると、第1楽章のテンポが少しだけゆっくりとしており、あとはほぼ同じくらいである。モノラルの旧録音LPは、冒頭のはつらつとしたテンポがこころよいが、録音が古く、せっかくの弦楽器の音としての魅力が、かなりそがれている。それに対し、1978年の演奏は、スメタナ四重奏団には珍しいコンサートライブで、デジタル録音初期のものでありながら、落ち着いた雰囲気の中で集中力に満ちた演奏を朗々と聞かせてくれる。第1楽章のテンポの違いは、このコンサートライブという条件から由来するものかもしれない。
ちなみに、各楽章の演奏時間の比較は次の通り。
■1950年代のモノラル録音
I=6'40"/II=8'05"/III=3'40"/IV=5'40" total=24'05"
■1978年のデジタル録音
I=7'09"/II=8'09"/III=3'39"/IV=5'32" total=24'29"
スメタナ四重奏団の「アメリカ」は、第1楽章の速いテンポが特徴的だと思うのだが、この楽章の相違を除けば、演奏時間の共通性は驚くほどだ。テンポが基本的な解釈の思想を表すとすれば、スメタナ四重奏団は基本的な解釈を30年間保ち続けた、といってよいのだろうか。
もう一枚、エマーソン弦楽四重奏団のCD(POCG-7074)があるのを忘れていた。ちなみに、同曲の演奏時間は次の通り。
■1984年のエマーソン弦楽四重奏団
I=9'02"/II=7'42"/III=3'36"/IV=5'12" total=25'32"
音の響きとしての魅力に乏しいヒストリカル・レコーディングは、こうしたことを考えさせるきっかけとなる。