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電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

オネゲルの交響曲第3番「典礼風」を聞く

2005年05月27日 21時22分06秒 | -オーケストラ
いつもより少し早く帰宅できたので、オネゲルの交響曲第3番を聞いた。「典礼風」という副題を持つこの曲は、第1楽章がアレグロ・マルカートで演奏される「怒りの日」と題された音楽。第2楽章は、「深き淵より叫ぶ」と題されたアダージョ。そして最後の第3楽章は、「我らに平和を与えたまえ」と題されたアンダンテの楽章だ。それぞれの楽章に付けられた表題からは、死者のためのミサ曲を連想するが、実際に悲痛な気分に満ちた音楽であり、厳しくかつ美しい音楽である。
手元には、なぜか三種類の録音がある。
ジャン・フルネ指揮のオランダ放送フィル盤(DENON COCO-70425)は、全体にゆっくりしたテンポで、いつもの上品なフルネの印象からは遠い、大きく劇的な対比を強調した音楽だ。特に第2楽章と第3楽章は特筆に価する。録音は1993年にオランダ、ヒルウェルムズ、ミュージック・センターで行われたもので、透明なフルネらしいサウンドを鮮明にとらえている好録音である。この頃はまだまだ指揮棒の「フルネ・マジック」は健在だったはずだから、肉体的な衰えから来るテンポの遅さとは考えられない。むしろ、今では高齢の長老指揮者だけが知っている、先の大戦の記憶のゆえの痛切な祈りの表現だろうか。
反対に、セルジュ・ボド指揮のチェコ・フィル盤(DENON COCO-70660/1)は、悲劇的な描き方は共通だが、速いテンポでぐいぐいと進んでいく演奏で、フルネの演奏とは全体で7分も違う。録音は1960年にプラハの芸術家の家で録音されたもので、ステレオ録音の初期に属し、決して目が覚めるような鮮明さはないが、デジタル・リマスタリングされて聞きやすくなったものだ。
デュトワ指揮バイエルン放送交響楽団の演奏(エラート:REL-5530)は、フルネ盤ほど遅いテンポは取らず、両者の中間よりややボド盤と近いテンポ設定になっている。録音は、1982年にミュンヘンのヘルクレス・ザールでデジタル録音とクレジットされている。実際、ジャケット写真のデュトワはまだ若い。今から20年前なら、中年オヤジもまだ青年時代にあったと言ってよいだろう。どれも、それぞれに心に残る演奏だ。
参考までに、演奏時間を示す。

■ ジャン・フルネ指揮 オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団
I=7'02" II=14'21" III=13'49" total=34'52"
■ セルジュ・ボド指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
I=6'15" II=11'48" III= 9'45" total=27'48"
■ シャルル・デュトワ指揮 バイエルン放送交響楽団
I=6'41" II=12'13" III=11'02" total=29'56"

ただし、デュトワの演奏は、ジャケットに演奏時間のデータが記載されていないため、時計で実測したものである。LPを再生するベルトドライブ・プレイヤーの回転速度(ピッチ)の問題があるため、秒まで正確とはいえないが、おおむね傾向はつかめるだろう。
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