ワセダのオトコは三島由紀夫に思い入れがあったようだ。
彼は、
「三島さんは徴兵検査に落ちているんです」
「亡くなった学徒動員の仲間に 申し訳ないという思いがあったんでしょう」
「その こころのキズを引きずっていた」
私が、
「雲こそ わが墓標 落暉(らっき)よ
碑銘(ひめい)を 飾(かざ)れ 」
「そうです そうです」
「つきぬけた神のような心境です あの若さで・・・」
”数珠を繰るような蝉の声が あたりを領している
その他にはなにもない
記憶もなにもないところにきてしまったと本田は思った
庭の木立は 夏の日盛りの日を浴びて
しんとしている ”
昭和50年代の早稲田大学の近くにちょっと左翼的なオトコがいた、
「もう いないだろう」