二銭銅貨

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フィガロの結婚/芸大2024

2024-10-25 | オペラ
フィガロの結婚/芸大2024

作曲:モーツァルト、指揮:現田茂夫
演出:久恒秀典、演奏:藝大フィルハーモニア
合唱:声楽科学生
美術:黒沢みち、衣裳:西原梨恵
出演:
アルマヴィーヴァ伯爵:藤田魁人
伯爵夫人:影山亜由子
スザンナ:八木麻友子
フィガロ:佐藤克彦
ケルビーノ:髙橋杏奈
マルチェッリーナ:倉林かのん
バルトロ/アントニオ:髙崎翔平
バジリオ/ドン・クルツィオ:糸賀修平
バルバリーナ:横森由有

大きな丸い穴の開いた壁が最前面にあり、その向こう側が舞台となっている。カーテンをたらしたり衣服のハンガーを置いて部屋の中を表現したり、木を配置して庭を表現したりしていた。コンパクトな印象の舞台装置だった。

藤田は真面目でおとなしい感じのバリトン。影山と八木は少しビブラートを伴う綺麗な声。髙橋は元気良い低めの声のケルビーノ。横森は軽い優しい声。倉林、髙崎はしっかりとした声で安定している。糸賀は独特の節回しで鼻声でずっと歌った。板についた芝居も面白い。重唱でも声が良く出ていて目立っていた。マルチェッリーナとバジリオのアリアは無し。

演奏も合唱も良く揃ってなめらかで美しく繊細な感じ。

24.10.05 芸大奏楽堂
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夢遊病の女/新国立劇場2024

2024-10-25 | オペラ
夢遊病の女/新国立劇場2024

作曲:ベッリーニ
指揮:マウリツィオ・ベニーニ
演出:バルバラ・リュック
美術:クリストフ・ヘッツァー
衣裳:クララ・ペルッフォ
演奏:東フィル
合唱:新国立劇場合唱団
出演:
アミーナ:クラウディア・ムスキオ
エルヴィーノ:アントニーノ・シラグーザ
ロドルフォ:妻屋秀和
リーザ:伊藤晴
アレッシオ:近藤圭
テレーザ:谷口睦美

ムスキオは透明感のある綺麗な声。声量も十分。シラグーザは楽々とした芝居と歌。芝居も歌もイタリアっぽい。声がやや鼻にかかったように感じる事が時々あった。妻屋は堂々とした声。手慣れた感じ。伊藤は強い声のソプラノ。最初のアリアは力が入り過ぎなのか、やや不安定に感じたが、後半のアリアは力一杯歌って、安定した声を聞かせた。近藤は落ち着いた感じのバリトン。谷口は低い声が安定しているメゾ。

演奏は美しく優しい。歌手にも優しい。合唱は美しく、迫力のある声。

周囲が黒くぼやけた白い背面が使われていて、装置も衣裳も彩度の低いくすんだ色あいなので、ちょっと、べリズモオペラのような、ネオリアリズモの映画のような雰囲気。最初シーンは中央に一本の木があり、そこから周囲の方向に放射状にシーツのような布が6枚ほど張られて、ちょっと祝祭的雰囲気。この布を移動してルドルフォの部屋を表現していた。ルドルフォの部屋には大きな金だらい風の風呂桶があり、そこにルドルフォが入っている。その後のシーンは製材所のようなセット。ボイラーのようなものや機械が設置されている。最後のシーンは一軒家。一軒まるごとが遠近法によって作られている。切妻屋根の所に小さなベランダのようなものが付けられていて、アミーナはそこで最後まで歌う。4~5メートルくらいの高さがあるので怖い。

カーテンコールでは、合唱とオーケストラから Happy Birthday の演奏があり、会場からは手拍子があった。シラグーザの還暦の誕生日に合わせたもので、彼にスポットライトが当てられた。サプライズのようだった。

共同制作:テアトロ・レアル、リセウ大劇場、パレルモ・マッシモ劇場

全体構成
1幕目
○序曲はホルンらしき音が聞こえて少しスイスぽく始まり、景気のいいメロディが続いて短めに終わる。続いて舞台裏の合唱、Viva Aminaが静かに始まる。

○舞台の冒頭はリーザの怒りぽいカヴァティーナ。

○続いて、のどかな農村ぽい多分3拍子の合唱曲がゆったりと歌われる。

○アミーナが登場し、緩急のアリア、すなわちカヴァティーナとカバレッタが合唱と共に歌われる。

○エルヴィーノが登場し、エルヴィーノの歌と結婚の儀式の後、アミーナとの緩急の二重唱が始まる。後半は二人が交互に歌う形式。

○ロドルフォが登場し、緩急のアリアが歌われる。後半のカバレッタは合唱と他のソリスト達の重唱が入る。

○テレーザが幽霊の話をして、村人達は「暗い空に、暗い夜に」A fosco cielo, a notte bruna の合唱を始める。タタッタ、タッタという感じのリズムが続く歌。楽しい。

○アミーナがロドルフォに愛想良くしているのを見てヤキモチを焼いたエルヴィーノが全員退場の後アミーナとケンカする。ここでケンカの後、仲直りの二重唱が歌われる。後半うっとり。第1幕第1場が終わる。

○ロドルフォが宿泊している部屋にリーザが現れ、ロドルフォとの重唱っぽいレチタティーヴォのやりとりをする。リーザが夢遊状態でやって来てロドルフォと重唱しながら寝込む。

○寝ているアミーナを発見する合唱。一音一音、あるいは単語ごとに、区切りながら歌う歯切れ良い軽快な合唱で、これまた楽しい。

○アミーナが目を覚まし、皆に疑われる多重唱、合唱となる。緩急の構成で後半の急は短め。そのまま1幕目が幕となる。

2幕目
○村人達がロドルフォの所へやって来て、アミーナとエルヴィーノの仲をとりもって欲しいと合唱を始める。緩急の構成。最初は静かで美しく、後半は勇ましい。

○アミーナがテレーザと歌う。アミーナが悲しみにくれながら短く歌う。テレーザは合いの手を打つ程度。

○エルヴィーノのアリア。最初ゆっくりと始まり、アミーナの歌を挟んで速いテンポのアリアとなる。

○合唱から始まるエルヴィーノのアリア。合唱と他のソリストの声が入る。速いテンポの曲。途中でアミーナの指輪を取り上げる。第2幕第1場が終わり。

○リーザとアレッシオのレチタティーヴォの後短い合唱があり、リーザのアリアへと続く。コロラトゥーラ満載の歌。

○ロドルフォ、エルヴィーノ、リーザ、テレーザと合唱団による歌。後半はゆっくりとした四重唱と合唱。アミーナが夢遊病だと分かり、リーザがロドルフォの部屋に居た事も明らかとなる。

○夢遊病の歩行場面。アミーナが眠りながら歌う。

○さらに眠りながら歌う。Ah, non credea mirarti 。最初の方でエルヴィーノの合いの手が入る。

○眠りから覚めてフィナーレ。アミーナがカバレッタを力一杯歌う。

24.10.03 新国立劇場、オペラパレス
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コジ・ファン・トゥッテ/二期会2024

2024-09-10 | オペラ
コジ・ファン・トゥッテ/二期会2024

作曲:モーツァルト
指揮:クリスティアン・アルミンク
演出:ロラン・ペリー
装置・衣裳:シャンタル・トマ
演奏:新日本フィル
合唱:
二期会合唱団
新国立劇場合唱団
藤原歌劇団合唱部
出演:
フィオルディリージ:吉田珠代
ドラベッラ:小泉詠子
グリエルモ:小林啓倫
フェランド:金山京介
デスピーナ:七澤結
ドン・アルフォンソ:黒田博

舞台は、録音スタジオに歌手達が集まってコジの録音をするという設定だが、途中から録音を無視して芝居をし始めてしまう。長い芝居の後、最後になってようやく録音に復帰するけれど、最後の最後は、アルフォンソが姉妹に階段から突き落とされて幕となる。

録音スタジオは木製の大きな壁3枚と柱2本からなっており、これを移動させて様々な場面を作り出していた。衣裳は現代風のカジュアルなもの。

演出は、歌手を縦横無尽に走り回らせて、細かい動きが設定されているもので、歌手の負荷がかなり高そうに思われた。それでも歌には特に悪影響は無かったようだ。

吉田は安定感のある綺麗な声のソプラノ。小泉は低い声がしっかり出て、激しく動いても破綻しない。楽しそうに動き回って歌っていた。活気がある。小林はやや金属的な印象の声で、特に後半のアリアでは圧倒的な気合と迫力でその声量を披露していた。金山も声量があり、破綻なく高音を出していた。七澤は浮浪者の様な衣裳のビックリなデスピーナで、あらくれたワイルドな芝居をややかがんだ姿勢でやっていて面白かった。レチタティーヴォもやや不良っぽい節回し。走り回る速度も速い。アリアは両方とも軽い感じではなく、強い迫力のあるもので、走り回りながら歌っても安定していた。ニセ医者とニセ公証人の鼻声もしっかり歌えていて良かった。黒田は若手にまじった大学教授が頑張って威厳を保ちつつ、指導しつつ、皆と一緒に走り回って息が切れている様な雰囲気。芝居と歌は余裕でしっかりしていた。

重唱は、女性二重唱、男性二重唱、最初の方にある船を送り出す場面での重唱が美しく、それらが印象に残った。

合唱は男女6人ずつの小規模な編成だったが、コンパクトで迫力のあるものだった。

演奏は優しく美しい音で、まろやかな感じ。要所要所では迫力も感じられた。

シャンゼリゼ劇場、カーン劇場、パシフィック・オペラ・ヴィクトリアとの共同制作。
新国立劇場、日本オペラ振興会との共催。

24.09.08 新国立劇場、オペラパレス
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ドン・パスクワーレ/ハーモニーホール2024

2024-08-26 | オペラ
ドン・パスクワーレ/ハーモニーホール2024

指揮:山本達郎
演出:古川寛泰
演技アドバイザー:大塚ヒロタ (テアトロ コメディア・デラルテ主宰)
ピアノ:松岡なぎさ
合唱:「ハーモニーホール座間 オペラ合唱ワークショップ」参加者
出演:
ドン・パスクワーレ:岡野守
マラテスタ:小野寺光
ノリーナ:中井奈穂
エルネスト:井出司
公証人:星田裕治

岡野はしっかりと安定した声。痩せていて小柄、ひょろひょろで頼りない、元お坊っちゃまかと思われるような世間知らずな感じのするドン・パスクワーレを好演した。とぼけた芝居がとても良かった。小野寺は深くて大きい芝居と声。芝居全体を支える屋台骨。岡野との早口の二重唱はしっかりと決まった。早口の二重唱の最初、岡野が歌い出す時にドン・パスクワーレから取り上げた鉄砲の処置に困って、それを指揮者に預ける場面があった。中井は綺麗な声のソプラノで声も芝居も堂々としていた。マラテスタからbrava,bravaと絶賛されるsemplicetta(素朴な女の子)のポーズの所では定番のポーズながら何度も笑いを取っていた。井手はエネルギッシュなエルネスト。パワー全開で歌った。ちょっと声がカスレ気味になる場面もあったが最後まで歌いきった。セレナータもノリーナとの二重唱も全力だった。芝居は情熱的な感じ。

演奏はピアノ一台。セレナータは舞台裏でのギター伴奏。もともとこの場面はエルネストによるマンドリンのような楽器での弾き語りを想定していたのではないかと思った。序曲は指揮者単独か、あるいはピアニストとの連弾だったのか、わからなかったが、ややゆっくりめに始まり、メリハリのある力強い演奏。本編の演奏も力強い印象だった。

合唱は大人数で、舞台を所狭しと動き回って埋め尽くした。一方で、2回目の合唱のピアノの部分ではかなりの時間静止するような演出もあった。

装置はほとんど無く、舞台奥にカーテンがあって、ここから歌手が出入りする。

3人が召使いがかなりコミカルな芝居をした。特にエルネストを好きな若い男性の召使いは道化師っぽい感じでおもしろかった。

8月からハーモニーホールは改装のため休館する。それが原因かどうかは分からないが、300人規模の小ホールでの公演だった。

24.07.21 ハーモニーホール、小ホール
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シチリアの晩鐘/アーリドラーテ歌劇団2024

2024-08-26 | オペラ
シチリアの晩鐘/アーリドラーテ歌劇団2024

作曲:ヴェルディ
指揮:山島達夫、演出:木澤譲
振付:能美健志、石井竜一

演奏:テアトロ・ヴェルディ・トウキョウ・オーケストラ
合唱:テアトロ・ヴェルディ・トウキョウ・コーラス
出演:
エレナ:中村真紀
アッリーゴ:藤田卓也
モンフォルテ:小林啓倫
プロチダ:東原貞彦
ダンステアトロ21、井上バレエ団

天井から吊り下げられた数枚の移動可能な雲の形の板以外は舞台装置が無く、プロジェクションマッピングによって若干の背景を作り出していた。舞台装置がミニマルである代わりに合唱団と舞踏は人数が多い。舞踏はバレエとダンスがそれぞれ10人づつ位で、交互に、あるいは合同で30分くらいのバレエ音楽シーンが演じられた。

中村は声量があり太い声。藤田は高音が目立たなかったが中低音は安定した声量のある声。小林は迫力のあるやや丸みを帯びた金属的な声で、引き締まった歌で舞台を締めた。東原は安定したバスで声量もあって安心して聴けた。舞台を下で支える感じ。

演奏はきちんと真面目な感じ。

シチリアの晩鐘は、シチリアの晩祷、シチリア島の夕べの祈りとも訳される。

24.06.23 新国立劇場、中劇場
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