二銭銅貨

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ピーター・グライムス/新国立劇場12-13

2012-10-21 | オペラ
ピーター・グライムス/新国立劇場12-13

作曲:ベンジャミン・ブリテン、演出:ウィリー・デッカー
指揮:リチャード・アームストロング、演奏:東京フィル
出演:ピーター:スチュアート・スケルトン
   エレン:スーザン・グリットン
   バルストロード船長:ジョナサン・サマーズ
   ボーア亭の女将:キャサリン・ウィン=ロジャース

優しかったり、厳しかったり、理不尽だったり、無関心だったり、海の波の音が絶えずする中で、人々の沢山の思いが交錯する。ピーターは荒れ狂う海と格闘するかのごとく、群集の排他的な村八分攻撃と格闘する。群集の声は海の波に重なり、きれいにアンサブルするけれど、それは、優しかったり、厳しかったり、理不尽だったり、無関心だったりする。

美術はシンプルで大きな黒い板を縦に2-3枚配置するだけのもの。それを動かして各場面を表現する。舞台奥は逆巻く海を表したような荒々しい暗い水色の模様。衣裳も黒い同じようなデザインのもので、誰が誰やらわかりにくい。ボーア亭女将の姪の2人だけが暗い赤でアクセントになっていた。途中で合唱団の衣裳が赤くなるところもあって、そこは、全体的に暗い雰囲気の群集だけれども、その中身は実は熱くて赤いというところを見せて印象的だった。

オーケストラは、交響楽的で多彩な音をしっかりと演奏していた。演出は地味でじわっとした感じのもの。ピーターの出口を見つけられない苦しみが良く伝わってきた。美術にもその雰囲気が良く出ていたと思う。徒弟を亡くすピーターには何故か子別れの親のつらい気持ちがオーバーレイしているように思われて、悲しい感じのする演出だった。見てはいないけれど、ブリテンには子を亡くした母の気持ちを舞踏にした演目、「隅田川」を参考にした「カーリューリバー」と言うのがある。

出演者全員、主役の2人は特に声が良く出て、一番後ろでも良く聞こえた。セドリー夫人の加納は性格に癖のある人物の芝居が良く、牧師役の望月は安定した声が良く出て安心感があった。

健康上の理由でボブ・ボウルズ役が高橋淳から糸賀修平に変更。
    
12.10.08 新国立劇場
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愛の妙薬/昭和音大2012

2012-10-19 | オペラ
愛の妙薬/昭和音大2012

作曲:ドニゼッティ、演出:馬場紀雄
指揮:星出豊、演奏:昭和音楽大学管弦楽団
出演:アディーナ:成田瞳、ネモリーノ:古川寛泰
   ベルコーレ:星川皓、ドゥルカマーラ:田中大揮
   ジャンネッタ:石田尚子

ピンクの頬紅を濃く、くりくりした瞳に、抜け目の無い唇、黒い髪にワインレッドの中東風の衣裳、ベルコーレ氏のアシスタント。音楽に良く乗ったマイムとポーズ、面白い表情、印象に強く残るメイクと衣裳。秀逸。

美術は村の建物と樹木、演出も衣裳もオーソドックス。楽しい喜劇を満載にして歌を楽しもうっていう趣向。演奏は力いっぱいに音を出して、声量のある歌手と良くアンサブルしていた。

成田はやや装飾的なソプラノで強くてタフな感じ。この役がそうなのかも知れないけれど長距離走で最後までスピードが落ちないで走っているような感じだった。何かめいっぱいに頑張っているような様子で、知りはしないけれど、なんとなく、昔のドニゼッティ時代のソプラノ、あるいはその時代のオペラ上演を見ているような気になった。

古川は綺麗な声で良く通るテノール。なかなかいい。星川は軍隊調のレチタティーヴォや歌のときは、くっきりした感じの綺麗な声のバリトンだった。その、はりきり頑張っている芝居とメイクが印象的で、ベルコーレ氏アシスタント役の生駒侑子と共に印象に残るコミカルな芝居だった。田中は楽々と貫禄のあるバリトンで安定していた。喜劇な芝居と歌が面白く、種々の二重奏では伴奏的な歌が多かったがそのアンサンブルが良かった。石田は安定した感じのソプラノで芝居も頑張っていた。二重唱では最初の方のアディーナとネモリーノのものが良かった。アリアでは「人知れぬ涙」とアディーナの最後の「受け取って」が良かった。

12.10.07 テアトロ・ジーリオ・ショウワ
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ドン・ジョバンニ/芸大2012

2012-10-14 | オペラ
ドン・ジョバンニ/芸大2012

作曲:モーツァルト、演出:粟國淳
指揮:高関健、演奏:藝大フィルハーモニア
出演:ドン・ジョバンニ:谷友博、レポレッロ:氷見健一郎
   エルヴィーラ:脇園彩、ドンナ・アンナ:大隅智佳子
   オッターヴィオ:大田翔、騎士長:長谷川顯
   ツェルリーナ:川上茉梨絵、マゼット:萩原潤

分かりやすい丁寧な演出で、細部まで音楽やセリフを良く反映した演出だった。字幕の訳も分かりやすかった。美術は死神像を彫刻風に使った大きな門で、そこのカーテンを開け閉めすることで場面の変化を付けていた。衣裳はそれなりの時代を感じさせるデザインで、しっかり出来ていて楽しかった。

谷は厳しさ鋭さを感じさせるドン・ジョバンニで、シャンパンの歌がタイトで良かった。氷見は良く通る綺麗な声のバリトンで迫力もあった。脇園は情感のあるソプラノで気持ちが良く伝わる歌だった。大隅は高音に力を感じる安定したソプラノ。大田は長身で綺麗な声のテノール。長谷川は厳しさと迫力を感じるバス。川上はハキハキとした元気の良いツェルリーナで、No.21aのレポレッロとの二重唱が良く決まっていた。萩原はとても芸達者でマゼットのドタバタ振りが良く伝わった。

演奏はしっかりとメリハリのある演奏だった。

12.09.30 芸大奏楽堂
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ラ・ボエーム/東京音大2012

2012-10-13 | オペラ
ラ・ボエーム/東京音大2012

作曲:プッチーニ、演出:粟國淳
指揮:広上淳一、演奏:パルピニョール・オーケストラ
出演:ミミ:相島百子、ロドルフォ:倉石真
   ムゼッタ:鈴木玲奈、マルチェッロ:土屋繁孝

丁寧な演出で細かいところまで音楽が良く演出に反映されていた。ラストの演出はそのまんまだったけれど、良かった。ミミのこときれる瞬間からロドルフォが気づくまでの間の演出が重要なんだと感じた。このドラマは元が良いんだから、演出もそのまんまでいい。低予算美術で舞台も狭く大変そうだったけれども、その中でめいっぱい頑張っているように思えた。舞台衣装の1つ1つがちゃんとしていたのが良かった。

演奏は歌手と一緒の歌っているようなメリハリのある演奏で元気が良く、一部にやや歌手より先走っているような、歌手のほうが追いかけているような印象のところもあった。

ミミの相島は中音が良く出ていて、情のある美しいミミの声に感じた。ロドルフォの倉石も中程度の高さの声が良く出て真面目な感じのテノールだった。ムゼッタの鈴木は高音が良く出る、元気良くきびきびした感じの歌だった。マルチェッロの土屋は安定感のあるバリトン。コッリーネの金子慧一も良く声の出る安定したバリトンで外套の歌では盛大な拍手があった。

12.09.23 東京音大100周年記念ホール
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12国立劇場9月/傾城阿波の鳴門、冥途の飛脚/文楽

2012-10-07 | 歌舞伎・文楽
12国立劇場9月/傾城阿波の鳴門、冥途の飛脚/文楽
(第2部)

傾城阿波の鳴門(けいせいあわのなると)
十郎兵衛住家の段

お弓の文雀は元気良く、きびきびした女房の気持ちの強さが良く現れていた。

「ムヽ、シテその親達の名は何というぞいの」
「アイ、父様の名は十郎兵衛、母様はお弓と申します」

可哀相なおつる。おつるのセリフ。


冥途の飛脚(めいどのひきゃく)
淡路町の段
封印切の段
道行相合かご

淡路町の段では禿による難しそうなやや長めの三味線演奏があって、勘次郎がそれらしく弾いてがんばっていた。実際の演奏は燕三。紋臣の花車の所作が端正できりっとした感じで美しかった。封印切の段の出だしの玉佳の手代伊兵衛もきびきび動いて芝居をしめていた。文司の八右衛門には貫禄と人間味を感じた。情のある友人役。忠兵衛は和生で、そのよれよれぶりが良く表現されていた。勘十郎の梅川は活発な勝気な感じの若い女性。

冥途の飛脚:近松による原作
恋飛脚大和往来:歌舞伎版
傾城恋飛脚:改作版(目隠しの新口村)

鶴澤清治は休演で藤蔵に変更

12.09.17 国立劇場
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