二銭銅貨

星の数: ☆良い ☆☆すごく良い ☆☆☆激しく良い ☆☆☆☆超激しく良い ☆☆☆☆☆ありえない

ラ・チェネレントラ/MET08-09舞台撮影

2009-05-31 | オペラ
ラ・チェネレントラ/MET08-09舞台撮影

作曲:ロッシーニ、演出:チェーザレ・リエーヴィ
指揮:マウリツィオ・ベニーニ
出演:エリーナ・ガランチャ、ローレンス・ブラウンリー、
   シモーネ・アルベルギーニ、アレッサンドロ・コルベッリ、
   ジョン・レリエ、
   ラシェル・ダーキン、パトリシア・リズリー

シンデレラの2人姉妹の父親役のアレッサンドロ・コルベッリは舞台の上下左右を所狭しと動き回り、喜劇の種を舞台全域に振り撒き散らす。背が低いのに大きな芝居、年寄りなのに動きの切れが良く、身振り、姿勢、表情がしっかりと極まる。芸の職人。歌の職人。歌ももちろん良く、オペラ歌手なんだろうか、喜劇役者なんだろうかと思う。酔っ払って歌うところがうまい。1人芝居で歌うところもうまい。

こうした滑稽な人物を蔑んで観ることもできるけれど、また一方で、これを自分に引き当てて、自分にもこうした滑稽さが、その何十%かはあるんじゃないかと思ったりする。そう思うとあまり蔑む気にもならないし、むしろ愛着を感じるほどだ。だからこの父親の悪行を許してくれたエリーナ・ガランチャが有難い、感謝の気持ちがわき起こる。白無垢のすそ広がりのウェディング・ドレスのシンデレラに。

このドラマの主人公はシンデレラだけれども、大人向けにはこの父親も主役だ。

ラシェル・ダーキン、パトリシア・リズリーの2人姉妹が父親に良く合わせていて面白い。ポーズやしぐさや表情にキレがあって、父親と共にこの芝居の中核をなしていたと思う。

王子様に化ける召使役のシモーネ・アルベルギーニは柔らかい感じの喜劇芝居で、またもう1人の滑稽な人物を演じていた。狂言回しと脇役を兼ねていて、演劇全体のコントローラの役割も果たしている。

ガランチャの声は深く透明で、混じりけのないメゾ。透き通る秋の空のずっと向こうの奥深くのようだ。水色のキラキラしたすそ広がりウェディング・ドレスが良く似合う。

王子様役はローレンス・ブラウンリー。背が低いのがハンデだが、怒りまくったりする場面での迫力がある。

ジョン・レリエは深い深いバス。落ち着きはらっている。幕間のインタビューを聞いていると、とても真面目そうな発言をしていて、面白そうな人だと思った。

演出はディズニー・アニメのような印象をパロディー化したもので、人物の動きにはアニメのカートゥーンのようなスラップステッィクな感じのものが多い。また、小柄なブラウンリーにミッキーマウスのような印象を与えようとしていたようにも、若干感じた。

ロッシーニの音楽はウキウキと忙しくアチコチ飛び回っていて、聴いているこちらの血行が良くなる。元気が出る。

09.05.30 東劇
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

秀子の車掌さん

2009-05-20 | 成瀬映画
秀子の車掌さん ☆☆
1941.09.17 南旺映画、東宝、白黒、普通サイズ
監督・脚本:成瀬巳喜男、原作:井伏鱒二『おこまさん』
出演:高峰秀子、藤原鶏太、夏川大二郎、勝見庸太郎、清川玉枝

素朴で一所懸命な感じのお嬢さんは高峰秀子で、
明るい気風の良さそうな運転手が藤原鶏太(釜足)、
夏川大二郎が育ちの良さそな中年の小説書きで
井伏鱒二ご本人の役です。

サイダーが大好きで、
金や権力に貪欲なくせに、
微妙に気が弱く人の良い、
それでもって、すべからく、
適当に処理して済ませる、
いい加減な社長役の
勝見庸太郎が面白い。

のんきで軽快な喜劇です。
天気は、よい加減の快晴ですという感じの映画で、
戦争前の暗い雰囲気が微塵も無い。
09.04.19 神保町シアター
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

蜂の巣の子供たち

2009-05-18 | 邦画
蜂の巣の子供たち ☆☆
1948.08.24 東宝、白黒、普通サイズ
監督・脚本:清水宏
出演:島村修作、夏木雅子、子供たち

素朴で優美な自然を背景にしたロードムービーで、
飛び回る子供たちが主人公。
すべて清水宏が面倒を見ていた戦災孤児たちなのだそうだ。

サイレントな感じのショットが多いのが特徴で、
人物がスクリーンの枠に出たり入ったりする事で、
ショットを構成しているような印象。
意図的な逆光のショットを人物を撮る時に使っていて、
それがあたかも失敗のショットのように見える。
全体に素人っぽさを出しているのだろうか。
主役の2人も素人だそうで、
特に女性の夏木雅子が素人丸出し。
その素人っぽさと、戦災の中の優美でのんびりした風景が
この映画を特徴づけている。

山を1人の子供が熱を出した子供をおぶって登っている。
猛然とわき目も振らず、何も考えず、ただ、ただ、登って行く。
どんどん、どんどん登る。
長い登坂の姿をとらえたしつこいシーンで、
気迫と気合を感じる。
ちょっと、サウンドオブミュージックの、
一家が逃亡して登坂するシーンに似ていると思った。

09.04.19 神保町シアター
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

バーン・アフター・リーディング

2009-05-17 | 洋画
バーン・アフター・リーディング ☆☆
Burn After Reading
2008 アメリカ、カラー、横長サイズ
監督・脚本:イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン、
出演:ジョン・マルコヴィッチ、ジョージ・クルーニー、
   ティルダ・スウィントン、フランシス・マクドーマンド
   ブラッド・ピット

いかれたニーチャンのブラッド・ピット。
常にスイング、
体を揺らし、
頭にいつものヘッドフォン。
ビートのリズム。
ゲンコツの両手を上向きに、
腕をWの形に脇を引き締め、
マッチョな体躯をさらけ出し、
左右上下に細かく動かし、
脳天気に、
体を
見せびらかして、
リズムを取り、
ビートを効かして、
脳みそが無い
かのような軽快さ。

実直そうで、1癖2癖3癖ありそなジョン・マルコヴィッチ。
素朴そうで、幼そうで、ドンファンなジョージ・クルーニー。
とにかく怖い、鋭くて怖い女医のティルダ・スウィントン。
もてないけど色に貪欲、フランシス・マクドーマンド。
それしかないのかなあ?

人々のあらゆる醜い部分をクローズアップして誇張して表現した映画で、そうした人々の姿を優しく憎めない感じに、諧謔的に描いている。人間ってどうしょうも無いけど、かわいいって感じでしょうか。

映画の最後のエンドロールの曲はCIAをおちょくった内容で、この映画の内容が、CIAや国家間外交の茶番を、人々の日常生活の中の茶番に重ねて描いたものだと分かる。これは映画本編ではあまり感じなかった観点だが、そうした意味合いで作られた映画のようである。

09.04.29 シネコン映画館
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

09歌舞伎座5月/暫、寿猩々、手習子、盲長屋梅加賀鳶、戻駕色相肩/歌舞伎

2009-05-13 | 歌舞伎・文楽
09歌舞伎座5月/暫、寿猩々、手習子、盲長屋梅加賀鳶、戻駕色相肩/歌舞伎

暫(しばらく)
出演:海老蔵、翫雀、扇雀

海老蔵、強く大きく若々しく、元気が良い。
まさに鎌倉権五郎。
翫雀は思いっきりひょうきんに、
扇雀は品良く美しく、
兄弟で対照的に演じていた。

寿猩々(ことぶきしょうじょう)
出演:富十郎、魁春

2人とも真面目で、特に富十郎は実直な感じ。
魁春は美しく清々しい印象。
富十郎の真っ赤な髪の毛に対して、魁春の赤みのある茶の衣装が落ち着いた印象だった。

手習子(てならいこ)
出演:芝翫

黄色い格子縞の衣装で、可憐な少女の役。

盲長屋梅加賀鳶(かがとび)
本郷木戸前勢揃いより赤門捕物まで
出演:菊五郎、時蔵、梅玉

菊五郎が悪の按摩役。
悪いやつ。とにかく悪いやつ。
時蔵もその菊五郎にからむ悪い女。
ずるずるしたかんじの菊五郎に、
すーっとした感じの時蔵だが、
両方悪い奴だ。
悪い奴が主役で面白いっていうのが不思議だ。でも面白い。

戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)
出演:松緑、尾上右近、菊之助

ちょっと力強くてひょうきんな松緑。
元気良くて、若さがはちきれんばかりの尾上右近。
泰然と落ち着き払って美しく、悠然と劇と踊りを運ぶ菊之助。

禿の役を同世代の尾上右近が赤姫の衣装で元気一杯に踊る。これに対して、お年寄りの芝翫が「手習子」で同様の若い世代の役を踊る。同時に踊ったわけでは無いが、衣装も黄と赤の好対照で、双方が印象に残った。

松緑、尾上右近、菊之助。
この3人が弁慶をやったらどうなるんだろうと思った。

09.05.04 歌舞伎座
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする