二銭銅貨

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07歌舞伎座4月/當年祝春駒、頼朝の死、男女道成寺、菊畑/歌舞伎

2007-04-28 | 歌舞伎・文楽
07歌舞伎座4月/當年祝春駒、頼朝の死、男女道成寺、菊畑/歌舞伎

中村信二郎 改め 二代目 中村錦之助襲名披露

當年祝春駒(あたるとしいわうはるこま)

出演:獅童、勘太郎、七之助、種太郎、歌六
 獅童は荒事の踊り、振り。他はおとなしく行儀の良い踊り。静の中の動。

頼朝の死(よりとものし)
出演:梅玉、歌昇、福助、歌六、芝翫
 腰元の芝のぶに付き添われた福助の小周防(こずおう)は、恋に落ちてウキウキと、また自身の恋を恥らう幼き乙女なれど、前半の終りから筋の中ではずっと、泣き崩れ、悲劇にその役目を終わります。歌昇は、太い通る声、大音声でその苦悩を表現し、分かりやすい。前半の主役。後半の主役は梅玉で、照明を落とした中、うっすらと青緑に照らされた幻想的で静寂な縁側のような向こう側が外になっている位置に座り、世の無慈悲を思っているかのようだ。梅玉の理性的な声質は、頼りなく不安定な主人公の性質に、哲学的な人生観を与えているようで、真山青果の原作と良い相性だと思えた。前半の落ち着いた渋い色合いの寺の門の作り、後半の均整の取れた美しい屋敷の中の作りは、この物語の荘厳さ、大きさを良く支えていると思う。
 長く続かない源氏の命脈に同情し、人の世の無慈悲、無残を嘆く思いが基底をなして、芝翫の演ずる北条政子の「家は末代、人は一世」というセリフがこの劇のテーマであるけれど、であるからこそ、人はその人生をせいいっぱい生きなければいけないと、真山青果、あるは梅玉が言っているようにも思えた。

男女道成寺(めおとどうじょうじ)
出演:仁左衛門、勘三郎
 最初の金の烏帽子と赤い衣装に黒に金の輪が幾つも入った帯の2人連れの美しさは、それが仁左衛門、勘三郎とは、とても思えない。男に戻った仁左衛門はハキハキとメリハリのある踊り。勘三郎は可愛らしく、ピチピチと若々しい踊り。幕見の遠くからは、卓球の愛ちゃんのように見えてしまった。

菊畑(きくばたけ)
出演:錦之助、吉右衛門、富十郎、時蔵
 劇中では白髪の爺さん役の富十郎の挨拶と錦之助自身の挨拶があった。コミカルな一面を出して柔らかい物腰の吉右衛門は智恵内(ちえない)実は鬼三太(きさんだ)。若さが前に出て、血気あふれる一面と上品な振る舞いの虎蔵実は牛若丸は錦之助。富十郎は鬼一法眼(きいちほうげん)で、智恵内を「智恵の無い、智恵内」と小馬鹿にする。軽く明るい軽喜劇。

07.04.15 歌舞伎座(幕見)
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07歌舞伎座4月/実盛物語、角力場、魚屋宗五郎/歌舞伎

2007-04-11 | 歌舞伎・文楽
07歌舞伎座4月/実盛物語、角力場、魚屋宗五郎/歌舞伎

中村信二郎 改め 二代目 中村錦之助襲名披露

実盛物語(さねもりものがたり)
出演:仁左衛門、彌十郎、魁春、千之助、亀蔵、家橘、秀太郎
 仁左衛門の実盛の軽々しくと宙に浮いたような大きな踊り・語りが中心で、孫の千之助の太郎吉は一所懸命に可愛らしく見得を切る。秀太郎の小まんは、ほんのちょっとよみがえる幽霊のようで、一瞬周囲に霊気が溜まり青白く感じるけれども、やっぱり、そこは元人間で、親子の情は絶ちがたく、太郎吉を見つめながら後ろ髪を引かれるように再び死んでいく。彌十郎の瀬尾はいやみたっぷりのおやじ。目付きが憎たらしく、本当に本格的にやな奴だ。「モドリ」とか言うそうで、あとでは、「なんだ良い人じゃん」と変わる役です。

口上(こうじょう)
出演:錦之助、富十郎
 弟子の信二郎襲名で富十郎はうれしそう。初代錦之助の思い出、信二郎の人柄などについて語る。他の方々は、年寄りは初代錦之助の思い出を語り、若い人は信二郎の人柄や今までの思い出について語った。

角力場(すもうば)
出演:錦之助、富十郎、福助
 錦之助は相撲取りの放駒長吉と、おぼっちゃまの与五郎の二役で、衣装やかつらを素早く変えて何度か入れ替わる。ヨレヨレ・ダメダメでお人よしの与五郎と身長は無いけれども若々しく気合の入った好青年の放駒をメリハリを付けて演じ分けていた。濡髪長五郎の富十郎はノッシノッシと決して重々しくは無い足取りで、霊界から出て来たような様子。じっくり登場する。若い放駒の気風のいいセリフ・芝居と好対照をなしていた。柔らかくて丸っこい福助の薄紫の衣装と、錦之助の濃いめ水色の衣装が良く似合い、パステルカラーのような恋の清清しさを表現していた。

魚屋宗五郎(さかなやそうごろう)
出演:勘三郎、時蔵、錦吾、勘太郎、七之助、錦之助、芝のぶ
 よっぱらいの物語。三味線の景気のいい音色に合わせてゴクゴクと何度も一気飲みする勘三郎の宗五郎。だんだん眼が据わって、会場のあらぬ方角を見据える。胸や脚の肌を露出して、あられも無い姿。かいがいしくもしっかりもののカミさんの時蔵と良いバランス。勘太郎の三吉のお調子ものの軽い芝居と、実直でまじめで真っ直ぐな七之助のおなぎが好対照。長身で色白の白い衣装の美人のおなぎは、赤い衣装で柔らく小柄、優しく女性的な芝のぶのおしげとも好対照。最後は錦之助の殿様が凛々しく登場して、庶民と殿様の良い関係を明るく明朗に描いて終わります。楽しいドラマで笑いっぱなしです。
07.04.06 歌舞伎座
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