二銭銅貨

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回転不足について

2010-04-04 | フィギュア・スケート
回転不足について

浅田は今度の大会では3個のアクセルのうち2個が回転不足のダウングレードとなった。これはビデオを見返してみてもスローで見ても分からない。どうもコマ送りで見ないと分からないらしい。今はコマ送りできる装置がないので、どうしようもない。ジャンプの滞空時間を0.7秒、回転数を1260度、フレームを30フレーム/秒として、およそ1コマ60度である。回転不足なんてコマ送りでも判断がむずかしそうだ。それをジャッジ達は選手がキス&クライでそわそわ待っている間に判断するのだから、たいしたものだと思う。しかもジャンプ全部をチェックするのだ。ランディングだけで無く、踏み切りもだ。ジャッジの仕事も過酷なんだなと思う。

ダウングレードは減点の幅が大きい。単にダウングレードするだけでなくGOEも悪くなる。ダウングレードしているのだからGOEは高くなっていいと思うのだけれども、GOEだけは元の回転数として判断されるのか、あるいは回りすぎとされるのかダブルパンチで減点されるのでダメージが大きい。転んだほうがよっぽどましかも知れない。回転不足はダメージが大きいのに見ていてもはっきり分からない減点要素である。技術点が想定外に低い場合にはこのトラブルを疑う必要がある。おおむね5点前後のマイナスになるようだ。

浅田は以前よりも体格が変わって、ジャンプが若干、苦しくなっているのかも知れない。スコア的には今回飛ばなかったルッツやサルコーをトウやダブルアクセルの代わりに加えることで3点くらい基礎点を上げられる、と言うより個人的にはルッツとサルコーが無いのが寂しい。一方、同じくスコア的にはジャンプのGOEを上げるのが重要で、これを1~2ポイント上げることで総合的に10~20ポイント上げることができる。実はキムとの差はここにある。GOEはどうもクリーンな着氷がものを言うらしく、そのためにはもっと高く強く飛ぶ事が課題になるだろう。なお、基礎点は後半の1.1倍を無視すると浅田に方が2.4ポイント高い。一方で、今後もトリプル・アクセルを維持することは大変で、他のジャンプのブラッシュアップとそれとが両立しなくなる可能性もある。両方できれば、本当に素晴らしいことだと思う。
 
フリーでのジャンプの種類比較
種類 スコア 浅田 キム
3A   8.2   2   0
3Lz  6.0   0   2
3F   5.5   2   1
3Lo  5.0   1   0
3S   4.5   0   1
3T   4.0   1   2
2A   3.5   1   3
2Lo  1.5   3   1
2T   1.3   1   1
合計     45.7  43.3

ルールの制限:1st7個、2nd4個、トリプルは2個までが2種類、ダブルアクセルは3個まで。略称はアクセル(A)、ルッツ(Lz)、フリップ(F)、ループ(Lo)、サルコー(S)、トウループ(T)、数字は回転数。
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2010世界選手権

2010-04-03 | フィギュア・スケート
2010世界選手権

2006年のトリノオリンピックのシーズンに恩田美栄が「道」を滑ったことがある。その時に、イタリアで「道」を滑る、そのスケーティングを見てみたいと思った。けれども、残念ながらそうはならず、そうは問屋が卸してくれない。それが4年後に男子で実現するとは、思いもよらないことだった。しかも1位、これが日本のフィギュア史に残る快挙なんだから、これ以上の結末は望めない。とりあえず、イタリアのスケートリンクをジェルソミーナの歌で一杯にできたことは本当にうれしかった。

高橋はクワッド・フリップにチャレンジした。転ばないで立てたのが凄い。両足着地でかつ回転不足でダウングレードだけれども、それでも凄い。これは、うっかり飛べちゃうと当分誰にも敗れない記録になってしまうかも知れないジャンプなので大変だ。来年も挑戦するのだろうか?

織田はショートで3個のジャンプが全部失敗してフリーに参加できず。小塚はショートが良く4位だったが、フリーでクワッドとトリプルアクセル2個を失敗して結局10位となった。

女子は浅田真央が優勝。キムは不調で相当ミスったが、ベースが高いレベルにあるのでそれでも2位。長洲はショートで1位だったが、フリーはジャンプのミスが重なって結局7位。インタビューでは「早く帰りたい」と涙目で語って相当のショックだったようだ。安藤はスピードが無いながらも完璧。特にほとんど総てのジャンプがクリーンだった。フリーは3位。ショートはジャンプのミスがあって11位だったので総合4位。鈴木はショートのミスが大きく20位だったが、フリーは非常に元気良く、ジャンプにミスがあったもののフリーは7位で総合11位。お元気お姉さんだ。ペアでは川口・スミルノフ組が3位。スロークワッドサルコーとスローループで転んで本当に悔しそうだった。エキシビションでもスロージャンプを転んで、終わった後でも若干悔しそうな表情だった。

エキシビションでは浅田のカプリースにスピードがあってキレが良く、舞も良くて最高だった。扇子の動きにキレがあって日本舞踊を見ているようだった。ショウの最後には高橋と浅田のスロー・スリージャンプが披露されて楽しかった。

オリンピックの年なので辞退や欠場が多く、男子の1、2、4、6位が出ていなかった。一方、女子は3位が出てないだけだった。

世界選手権が男女優勝。世界ジュニアも男女優勝。オリンピックが2位と3位。こんなに贅沢していいんだろうか?バチがあたるんじゃなかろうかとやや不安になる。

世界ジュニアはペアで高橋成美/マーヴィン・トラン組(日本代表)が2位、シングル女子で村上佳菜子、男子で羽生結弦(ゆづる)が1位。

2010.3.22-28 トリノ
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2010オリンピック・エキシビション

2010-03-07 | フィギュア・スケート
2010オリンピック・エキシビション

ワルツは舞踏会、
くるくる回るワルツ、
3拍子のワルツ、
アクセルもワルツ、
スリー・ターンもワルツ、
ワルツはフィギュアで、
フィギュアはワルツ。
ワルツの選曲は楽しい。

ワルツを選曲すると単調でゆったりした感じになりがちなので、案外フィギュアでは使われないように思う。だから曲がワルツになると本当にうれしい。

ペアで4位だった川口悠子とアレクサンドル・スミルノフがスケーターズ・ワルツを踊った。風にのって楽しく明るい。川口の極端な振りがお人形さんのようで可愛らしい。特にエンディングの振り付けが面白い。待っているスミルノフに、川口が横っ飛びに飛び込むのだ。振り付けが可愛らしく、ワルツのリズムが良く表現されている。こういうのがフィギュアの理想の1つだと思う。川口は28だそうだけれどもペアは息が長いので、まだまだ頑張るかも知れない。

安藤美姫はレクイエム。衣装が青とくすんだ黄色。異色な色彩で印象的だった。滑りも表現も完璧だった。レクイエムの祈り、空間の広さ、宇宙的な感じが良く表現されていた。浅田真央は扇子を使ったプログラムでこれも全日本の時と同じ。切れが良く、明るく元気が良い。途中のジャンプ、多分ルッツかフリップが抜けていたほかは完璧だった。高橋大輔も全日本と同じで完璧。

キムは薄いくすんだ水色の衣装でタイスの瞑想曲。ライサチェックはブラックタイの衣装でラプソディーインブルー。オーソドックスな振り付けで、フリーよりこちらの方がいいと思った。最近はこういうスッキリと真面目でオーソドックスなものが少ないように思う。ランビエールは芸術的な滑り。スローで不思議な曲に良くテンポを合わせた芸術的な表現だった。プルシェンコはトリプルアクセルを2回飛んでファンサービス。強い所を見せる。長洲はエキシビションでも元気良く溌剌と滑っていた。最後のビールマン・スピンが早く、咲きかけのチューリップの形に見えた。こういうビールマンは見ていて楽しい。

2006.2.28 バンクーバー
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2010オリンピック女子フリー

2010-03-06 | フィギュア・スケート
2010オリンピック女子フリー

浅田真央:2位
トリプル・アクセルは無事飛べた。アクセルは前向きなジャンプ。他の後ろ向きのジャンプとは違う。ショートでダブルトウとのコンビで1回、フリーの冒頭で1回、引き続きダブルトウとのコンビで1回。完璧。オリンピックでの成功は18年ぶりで、強くて清潔で大きなジャンプだった。

ショートは「仮面舞踏会」で慎重な滑り、フリーは「鐘」でやはり慎重な感じだったし、アクセルに集中している様子が伺えた。ルッツをショートでもフリーでもはずし、サルコーもなし。新聞によると、ルッツ、サルコー、トウループが不得意らしく、それでコンビのセカンドがトウでなくてループなんだそうである。フリーではトウループの踏み切り前に、トウになる足がまだアウト・エッジで残っている段階で、多分エッジが氷面上のトウジャンプの後で出来た穴にひっかかったらしく、バランスを崩してジャンプを飛び損ねた他、フリップからのコンビでもランディングが乱れた。それ以外は完璧。すべてのジャンプを飛び終えた後のステップシーケンス以降は、元気良さが出て来てキレの良いスケーティングになったように感じた。ステップシーケンスは非常に良い。深さと強さと執念を感じた。

安藤美姫:5位
ショートがレクイエム、フリーがクレオパトラ。ショートもフリーもスピードが落ちず、ショートのルッツからのコンビのミス以外はジャンプのミスも無く、良い出来だった。スピードが落ちなかったのが良かった。この人は割りとスピードが落ちる事があるので、その点では本当に良かったと思う。クレオパトラの振り付けが面白く、音楽にもよく乗った表現だった。ジャッジの評価は低かったがステップシーケンスも深くゆったりとした表現で印象的だった。

悠然とまったりとしたスケーティング、宇宙的な感じが安藤の持ち味だけれども、どうもスピード感が無いので、それで随分スコア的に損をしているように感じる。

鈴木明子:8位
ショートではジャンプのミスがあって11位。フリーではサルコーにミスがあったもののほぼノーミスで7位。ステップシーケンスは元気良く、強く明るく楽しかった。ジャッジの評価も高い。フリーの曲は「ウエストサイド・ストーリー」。

キム・ヨナ:1位
高くて大きく、ミスの少ないGOEの高いジャンプで1位。リスクを最低限に抑える構成が特徴で、フリーのコンビ3個のうち2個はダブルアクセルとの組み合わせ。ショートの曲は007。

ジョアニー・ロシェット:3位
試合直前に応援に来ていた母親が亡くなるという小説のような出来事があったにもかかわらす、頑張って試合にのぞみ結果を出した。ジャンプが若干、不安定だが、スピードがあるのでその点が素晴らしい。表現力もスケーティングも良い。

長洲未来(みらい):4位
シンデレラ・ガールだ。順位争いに血まなこのお姉さんがたをよそに、リンクを所せましと駆け回るようなスピードと、キレの良いジャンプは、カルガリーの時の伊藤みどりを思わせる。ショートではすこし硬質で直線的な早い動きが印象的だったし、フリーでのスピードも特に素晴らしかった。スピンも良く軸が出ていて早かった。将来が期待できる、良い未来が開けている気がした。

フリーの曲はカルメン。元気な汚れの無い無邪気なカルメンで楽しかった。ショートの時に、多分スピンかジャンプの時に鼻血を飛び散らせたらしく、鼻の頭に血が付いていたのがおかしかった。

スコア:
合計 ショート(技術, 構成, 減点) フリー(技術, 構成, 減点)
1キム 228.56 78.50(44.70, 33.80, 0) 150.06(78.30, 71.76, 0)
2浅田 205.50 73.78(41.50, 32.28, 0) 131.72(64.68, 67.04, 0)
3ロシ 202.64 71.36(39.20, 32.16, 0) 131.28(62.80, 68.48, 0)
4長洲 190.15 63.76(37.00, 26.76, 0) 126.39(65.83, 60.56, 0)
5安藤 188.86 64.76(34.80, 29.96, 0) 124.10(62.50, 61.60, 0)
8鈴木 181.44 61.02(33.10, 27.92, 0) 120.42(60.98, 59.44, 0)

長洲のフリーの技術点は2位。浅田のジャンプのミスについては、多分8点前後マイナスだと思われるので、ノーミスだった場合のキムとの差は15点前後だったと思われる。

2010.2.26 バンクーバー
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2010オリンピック男子フリー

2010-02-21 | フィギュア・スケート
2010オリンピック男子フリー

氷上にスケート靴を履いた青年が立ち、
そしてゆっくりと滑り始める。
遠くの、遥か遠くの、
クワッドを飛ぶ位置を見すまして、
風を受けて滑っていく。

彼がそのジャンプに転んだ時には、
心配そうな顔つきのジェルソミーナに向かって、
「大丈夫、大丈夫」って言いながら、
ニコニコしながら今度は軽くステップを踏んでいる。
「ほら、僕みたに、君だって楽しく滑れるよ」って
言っているみたいだ。
だからその時にはもう、楽しそうに、
ジェルソミーナも一緒に高橋大輔と滑っていた。

高橋大輔:3位
ショートはタンゴ風の曲(Eye by Coba)で、それを柔らかな感じで表現していた。しっかりとダイナミックに滑れて、プレゼンテーションも良く3位。一方、フリーはクワッドが失敗、若干のジャンプのミスもあって5位。総合で3位。ショートもフリーも表現は選手達の中で一番良いように感じた。特にフリーのコリオグラフが良く、本当にそこにジェルソミーナが居てもおかしくないような印象だった。高橋のマイムが優れている。滑りも良く、スピードもパワーも落ちなかった。フリーの衣装は白と黒のチェック柄で、良く役柄に合っていた。

織田信成:7位
ちょっと気合が入りすぎなのか、あるいは緊張しすぎなのか、チャップリンらしさがその表情からは消え失せていたものの、滑り自体の気合は十分で、トリプル・アクセルからのコンビの途中のターン以外はほぼノーミスであった。ところが終盤に靴の紐が切れるというアクシデントが発生。ループでミスった所で演技を中断し、審判の前でズボンの裾をまくって脛とぼろぼろの靴紐を見せる。靴先もボロボロ。まるでチャップリンのようだ。このアクシデント自体がチャップリンの喜劇のようだ。これは、あまりにも真剣すぎてチャップリンに成りきれない彼に、神様がプレゼントしてくれたちょっとしたイタズラなのかも知れない。復帰する時の観客の暖かい拍手につつまれていたその時の彼は、本当にチャップリンになれていたのかも知れない。その後は完璧だった。ショートは勢いのある良いスケーティングで4位、フリーは7位。クワッドには挑戦しなかった。

小塚崇彦:8位
ショートのジミ・ヘンドリックスの曲に合わせた滑りが素晴らしかった。乾いた感じの曲をワイルドにぶっきらぼうに表現していて、ややスローなテンポにぴったりと体の動きを合わせていた。全日本の時には曲のテンポが速いように感じたが、どうもそういうことでは無かったらしい。振り付けが素晴らしい。佐藤有香の振り付けとのこと。ゆったりとのびのびと、地味でさりげない有香さんらしい振り付け。衣装は燃える赤系統でクールな感じのデザインだった。パンツはGパン風。8位。フリーではクワッドを両足着地ながら成功。2度目のトリプルアクセルをミスした以外ほぼ完璧で8位。こちらのコリオグラフも佐藤有香。

エヴァン・ライサチェック:1位
真面目で無骨な感じの大男。それなのにショートもフリーも女性的な振り付けで、ちょっとこの人には合わないように思った。ノーミスで1位。ショートは2位。

エフゲニー・プルシェンコ:2位
クワッドをトリプル・トウとのコンビで高く楽々と飛んでいた。しかしながら他のジャンプは軸がよれたり曲がったりでクオリティがイマイチ。ノーミスだったが2位となった。表現もいま1つ乗っていなかったように思う。ショートは滑りも表現も完璧で1位。

ステファン・ランビエール:4位
ショートがウィリアム・テル、フリーが椿姫でそれぞれ清楚で上品なテルとアルフレードだった。アクセルなしのクワッド・トウが2度で若干のミスがあった。他のジャンプもギリギリ。スピンの軸が良く出ていて素晴らしかった。ショート5位、フリー3位。

ジョニー・ウィアー:6位
塵ひとつない清潔で美しい姿勢とコリオグラフ。ステップでよろけていた以外はほぼノーミスで6位。芸術性に優れたスケーターでユニークな個性だ。

佐藤有香:コーチ
ジェレミー・アボットのコーチとして登場。落ち着いた、にこやかな表情が親ゆずり。ジェレミー・アボットは不調で特にショートが悪く15位。フリー9位で総合9位。残念。全米チャンピオンだったのに。

スコア:
合計 ショート(技術, 構成, 減点) フリー(技術, 構成, 減点)
1ライサ 257.67 90.30(48.30, 42.00, 0) 167.37(84.57, 82.80, 0)
2プル 256.36 90.85(51.10, 39.75, 0) 165.51(82.71, 82.80, 0)
3高橋 247.23 90.25(48.90, 41.35, 0) 156.98(73.48, 84.50, -1)
4ラン 246.72 84.63(41.48, 43.15, 0) 162.09(78.49, 83.60, 0)
7織田 238.54 84.85(46.00, 38.85, 0) 153.69(79.69, 77.00, -3)
8小塚 231.19 80.54(42.14, 37.45, 0) 151.60(78.40, 74.20, -1)

高橋のクワッドの失敗は減点も含めて得点0だったので、仮にクワッドをノーマルで飛べていれば、クワッドの基礎点を9.8として合計257.03で2位。織田のアクシデントでのマイナスは5.6くらいなので、それが無いとすると244.14で5位。高橋の構成点の84.50は最高。

2010.2.19 バンクーバー
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