二銭銅貨

星の数: ☆良い ☆☆すごく良い ☆☆☆激しく良い ☆☆☆☆超激しく良い ☆☆☆☆☆ありえない

ねじれた家

2019-06-16 | 洋画
ねじれた家 ☆☆
Crooked House
2017 イギリス、カラー、横長サイズ
監督:ジル・パケ=ブレネール
脚本:ジュリアン・フェロウズ、ティム・ローズ・プライス、
   ジル・パケ=ブレネール
出演:探偵:マックス・アイアンズ
   警部:テレンス・スタンプ
   長男の娘:ステファニー・マティーニ
   前妻姉:グレン・クローズ
   後妻:クリスティーナ・ヘンドリックス
   長男妻:ジリアン・アンダーソン
   次男妻:アマンダ・アビントン
   長男の末娘:オナー・ニーフシー
   乳母:ジェニー・ギャロウェイ

女優の芝居の展示会。少女から年配の女性までの個性的な芝居が楽しめる。

長男の娘は知的だけど、喰えない感じ。ファムファタールかも。
前妻姉は年配女性で鉄の女。頑固一徹でライフルをぶっ放す感じ。
後妻はマリリンモンロー風。馬鹿っぽいけど侮れない。
長男妻は崩れたクレオパトラのような、酔っ払いか?
次男妻は神経質そうで弱そうな、また、そうでも無いような...
長男の末娘はこましゃくれたガキ。やな奴だけど面白そう。
乳母は優しそうで何気ないけど、腹には何かがくすぶっていそう。

男優陣もすばらしいけど、女優陣の殺気にはかなわない。

19.05.04 川崎市アートセンター、アルテリオ映像館
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幸福なラザロ

2019-06-15 | 洋画
幸福なラザロ ☆☆
Lazzaro Felice
2018 イタリア、カラー、横長サイズ
監督・脚本:アリーチェ・ロルヴァケル
出演:ラザロ:アドリアーノ・タルディオーロ
   成長したアントニア:アルバ・ロルヴァケル
   侯爵夫人:ニコレッタ・ブラスキ
   タンクレディ:ルカ・チコヴァーニ
   ウルティモ:セルジ・ロペス

現代イタリアの殺伐とした道路。車が渋滞している中を狼が失踪してくる。何かをなしとげて、何かに向かって激しく走ってくる。

おそらくオリーブの木らしき木の下で、なぜかラザロの瞳から自然とあふれ出てくる涙。夕刻、ざあざあ降りの雨の中で呆然と立っているラザロ。激しく雨に打たれて。将軍のような服をまとったタンクレディと一緒に谷に向かって狼の声で吠えた。何度も。

侯爵夫人の場面ではCASTA DIVAのピアノ曲。侯爵夫人の所にあるオルゴールは後にサギのネタに使われるけれど、これの曲もCASTA DIVA。みんなで高級ケーキを奮発して買いに行く場面では椿姫の乾杯の歌。その他、音楽は主にピアノが使われるがあまり多用されない。全体的に落ち着いた感じ。効果音の中では、風の音が印象的。

信仰と祈り。「ミラノの奇跡」を思わせる。あるいは、1950ごろのネオリアリズモを思わせる映画。ラザロは福音書に登場する人物。

19.05.01 kino cinema 横浜みなとみらい
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マリー・アントワネットに別れをつげて

2013-01-27 | 洋画
マリー・アントワネットに別れをつげて ☆☆
Les adieux a la reine
2012 フランス・スペイン、カラー、横長サイズ
監督・脚本:ブノワ・ジャコー
原作:シャンタル・トマ
出演:(朗読係)シドニー:レア・セドゥー
マリー・アントワネット:ダイアン・クルーガー
ポリニャック夫人:ビルジニー・ルドワイヤン
ルイ16世:グザビエ・ボーボワ
カンパン夫人:ノエミ・ルボフスキー

晴天に輝く黒い衣裳、
若い船頭、
イタリヤ風の誘惑。
黄金に輝くベルサイユの装飾、
その金を背景に立つ黒いドレスのシドニー。
夫に別れを告げる王妃のドレス、
白地に薄青色、
フランス国旗の色合いから赤を抜いたアンサンブル、
鈍く光る。
黄色味がかった緑のドレス、
ポリニャック夫人。
王妃と夫人は、
その緑の意味を様々に語り合う、
上流の階級。
薄い紫地に濃い赤紫のストライプ、
庶民的な衣裳のシドニー、
王妃への謁見。
シドニーの心には、
王妃への強い思いがさかんに燃えている。

現代の若い女性がマリー・アントワネットに恋焦がれて、ポリニャック夫人に嫉妬して、何かを夢想して、王妃の寵愛を得たい、王妃に添い寝したい、あわよくば王妃そのものになりたいと思うとすれば、あんな風な事なのかも知れない。彼女は、最後にはその黄色味がかった緑のドレスを着て馬車に乗り、王妃になりきって、王妃に心酔して革命を起こす農民たちに手を振ります。映画自体は、王室の使用人たちの視線から、当時の混乱の様子を淡々と描写した感じの作りの映画だった。

色の美しいアンサンブルが強く印象に残った。最後はあっさりと終わって、やや難解。何故シドニーが農民たちに手を振っていたのかが分からない。この場面をどう理解するかで、この映画の見方が決まるように思える。

13.01.05 ル・シネマ
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甘い生活

2012-01-19 | 洋画
甘い生活 ☆☆
La Dolce Vita
1960 イタリア、白黒、横長サイズ
監督・脚本:フェデリコ・フェリーニ
脚本:エンニオ・フライアーノ、トゥリオ・ピネリ、
   ブルネロ・ロンディ
出演:マルチェロ・マストロヤンニ、アニタ・エクバーグ
   アヌーク・エーメ、イヴォンヌ・フルノー
   レックス・バーカー

青空に、
ヘリがはばたき、
轟音の中、
白銀に輝くキリストの像が、
吊るされて、
人々の頭上を睥睨し、
飛行している。

コックピットにはマルチェッロ。
それにカメラマンとパイロット。
マルチェッロはドンジョバンニの再来か。
まさか騎士長の像を吊るしているというわけでもなかろう。
地上には水着の若い女性たち。
マルチェッロは執拗に声をかける。
爆音で聞こえない。
電話番号を聞いているのだ。
空からのナンパは現代的だ。

最後は網にかかった海岸のエイの死体。
なんだこれは...、
あるいは騎士長の像なのか、
図体がでかくて、
目が怖い。

海岸に流れ出る小川の流れの向こうから、
素朴な美しい田舎娘が声をかけてくる。手を振る。
それでも、波の音がうるさくて良く聴こえない。
小娘は自分が前に海の家のような所で出会った娘だと、
教えようとするけれどマルチェッロには分からない。
手出し無用だ。
彼女の名はマルチェッロのカタログに載ることが無い。
彼女は寛容な慈愛に満ちた表情で、
静かにマルチェッロを見送る。

不道徳すぎるマルチェッロだけれど、何故か、
あの抜けるような青空みたいな爽快な気分がするのは、
なんだろう。
ニーノ・ロータの音楽の故なのだろうか。
彼はとっても憂鬱そうだったし、
けだるそうだったのに。
たとえその爽快さがニセものであったとしても、
元気はすこし出る。

退廃とか堕落。
人生も社会も、多かれ少なかれ少しは腐っている。
愛とか信仰とかジャーナリズムとか、
やっぱり多少は腐っている。
そんなものかも知れない。
それでも、それだからこそ、
人生や社会には甘い部分も多いし、
旨味もある。
糖分も多い。
糖質が無ければエネルギーは出ないし、
力も出ない。
元気も出ない。
禁欲的なマルチェッロの友人の
無理心中が印象的だった。

12.01.14 シネコン映画館(午前十時の映画祭)
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2012-01-14 | 洋画
道 ☆☆☆☆
La Strada
1954 イタリア、白黒、普通サイズ
監督・脚本:フェデリコ・フェリーニ、脚本:トゥリオ・ピネリ
出演:ジュリエッタ・マシーナ、アンソニー・クイン
   リチャード・ベイスハート
音楽:ニーノ・ロータ

ビュービュー吹く風は冷たくて厳しい。
大地を殴りつけるようだ。
田舎の海岸の波も荒々しい。
その何もない海岸の方を向いて、
一人の少女がこちらに背を向けて、
みすぼらしい身なりで立っている。

背に長い藁のような束。
まだ未来の定まらない、
素朴で野生の草花のような。
ジェルソミーナ、
と遠くで呼ぶ声がする。

聖職者のような黒の服装の3人の楽隊。
田舎道を歩いてくる。
手にそれぞれの楽器、フルート、クラリネット、ラッパ。
楽しそうなその音楽に連れられて、
立ち上がり、踊りながら、
3人に付いて行くジェルソミーナ。
やがて彼女は街へ入り、
教会の行列を見に来ている多くの群衆の中に巻き込まれる。

夜、天使は舞い降りて、
地上40メートルの綱の上に椅子を置き、腰を掛け、
スパゲッティーを食べようとする。
風が一陣吹いて食べ損なうが、
彼はさらに地上に舞い降りて、
ジェルソミーナに合う。
彼女を救うために。

別の夜、「私は何の役にも立たない人間だ」と言って、
落ち込んでいる彼女に、その天使は優しく話しかける。
「世の中には役に立たないものなんて無い、
この転がっている石も何かに役立っている。
ザンパーノはあなたを必要としている。」
という趣旨の事を言う。
彼女はそれですっかり自信を付けて、そして、
できればザンパーノを救いたいと思う。
犬のような、野獣のような、何も分かっていない、
ザンパーノを救いたいと願う。

また別の夜、海岸の波うち際で、
顔をザブッと洗うザンパーノはすっかり酔っ払っている。
波うち際から少し離れた所まで戻ると、
よろよろと砂浜に崩れ落ちる。
座ったまま、ゆっくりと夜の空を見上げ、あたりを見回す。
ジェルソミーナの声が聞こえるかい?
えっ?どうなの。
夜空は何も答えてくれない。
夜の波は何も教えてくれない。
夜風も、黙ったまま。

そして彼はそのまま砂に突っ伏して、
慟哭し始める。

かの天使はジェルソミーナを救えたのだろうか?
そして、
ジェルソミーナはザンパーノを救えたのだろうか?
そう、両方ともちゃんと救われたと、
そう思う。

12.01.07 シネコン映画館(午前十時の映画祭)、過去にVTR,TVで数回
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