二銭銅貨

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ノルマ(日本オペラ振興会)2017

2017-07-22 | オペラ
ノルマ(日本オペラ振興会)2017

作曲:ベッリーニ、指揮:フランチェスコ・ランツィッロッタ
演出:粟國淳
美術:横田あつみ、衣裳:増田恵美
演奏:東フィル
出演:
ノルマ:マリエッラ・デヴィーア、
アダルジーザ:ラウラ・ポルヴェレッリ
ポリオーネ:笛田博昭、オロヴェーゾ:伊藤貴之
クロティルデ:牧野真由美、フラーヴィオ:及川尚志

森の静寂、人々が左右に散って、誰も居なくなり、暗い舞台中央奥の女神は、回る台の上のノルマ、暗闇、ゆっくりと回る台、白いドレスに透けるショールの水色、照明、ゆったりと流れる音楽、女神の音色、神の音、ではなくてゆっくりと静かな、始まりの音楽。Casta Diva。

森の太い大きな木の幹に見立てた円柱上の構造物が左右に2つに割れてメインの舞台が現れる。中に無垢の板材でできた骨組み構造がある。開いた幹部分などを色んな位置に配置して舞台設定を変える趣向。全般的にガリアの森の中をイメージした作り。

ノルマはかなり低い声まであるソプラノで、そこが聴きどころらしい。アダルジーザはメゾでノルマとの重唱が少なくとも3つあり、これも聴きどころ。低い声同志の重唱で、時にアダルジーザが高いパートもやるらしい。難易度の高そうな重唱だ。

デヴィーアもポルヴェレッリも歌詞をしっかりと歌に乗せて行くようなやや演劇的な歌い方。笛田は声量ゆたかで重金属楽器のようなど迫力。伊藤は落ち着いた貫禄で安定していた。

演奏はゆったりと優しく、優しく真綿でくるむよう。

ベッリーニいいなあ。天に近いところで歌を描き、早世した。
ベッリーニいいなあ。大好きだなあ。

びわ湖ホール、ニッセイ文化振興財団、日本オペラ振興会、川崎市スポーツ・文化総合センター、東フィルの共催

16.07.01 日生劇場
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ドン・ジョヴァンニ・石の招待客(まろうど)/新国立劇場オペラ研修所試演会2017

2017-07-15 | オペラ
ドン・ジョヴァンニ・石の招待客(まろうど)/新国立劇場オペラ研修所試演会2017

G.ガッツァニーガ、指揮:河原忠之、演出:久恒秀典
ピアノ:石野真穂、髙田絢子、チェンバロ:岩渕慶子

ドン・ジョヴァンニ:荏原孝弥、
ドンナ・アンナ:斉藤真歩
ドンナ・エルヴィーラ:砂田愛梨
ドンナ・ヒメーナ(新たな彼女):平野柚香
騎士長:氷見健一郎
オッターヴィオ:濱松孝行
マトゥリーナ(ツェルリーナ):十合翔子
パスクワリエッロ(レポレッロ):伊良波良真
ビアージョ(マゼット):野町知弘
ランテルナ(給仕):水野秀樹
当初予定されていた吉田美咲子は体調不良のため斉藤真歩に交代した。

モーツァルト版に先行する作品で、大筋では同じ部分が多い。2時間弱でモーツアルト版より短い。モーツァルト版では、屋敷のパーティやその後のレポレッロとドンジョバンニを入れ替えた場面などが追加になっていて、これはガッツァニーガ版のバージョンアップとも言える。モーツアルト版ではドン・ジョバンニの「女たらし度」が落ちていて、ドンジョバンニやレポレッロが他の登場人物から、かなりやり込まれる。各キャラクターの描写はモーツアルトの方が深い。ガッツァニーガ版ではドン・ジョヴァンニはテノールで、この違いも役柄を描写する上で大きいと感じる。

カタログの歌に相当する部分は重唱になっている。ツェルリーナへの口説きは独唱で、ドンナ・アンナの横やりは入らずに誘惑がまんまと成功する。ドンナ・アンナとエルヴィーラがやりあう重唱があって、これはモーツアルト版には無い。

モーツアルト版との差分を見れば、モーツアルト版が何なのかが良く分かるということのようだ。

砂田は強いソプラノで、歌うようなレティタティーボが美しい。氷見は重厚でとても良かった。演奏はピアノに迫力があり、すごく良かった。細腕なのに、良くもあんなに多彩で凄い音が出るもんだ。

(Constanze - Constan) + (Maturina - Matur) + l = zerlina
Biagio -> Masetto ≒ Mozart
かと思ったけど、ちょっと無理があるかな。

17.06.30 新国立劇場、小劇場
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ボエーム/日生劇場2017

2017-07-08 | オペラ
ボエーム/日生劇場2017

作曲:プッチーニ、指揮:園田隆一郎
演出:伊香修吾、美術:二村周作、衣裳:十川ヒロコ
演奏:新日本フィル
出演:
ミミ:砂川涼子、ロドルフォ:宮里直樹
ムゼッタ:柴田紗貴子、マルチェッロ:大山大輔
ショナール:池内響、コッリーネ:デニス・ビシュニャ

宮本益光の訳詞による日本語上演。伊香修吾は五島記念文化オペラ新人賞受賞記念の演出。

始まりと終わりがミミの墓のシーン。暗闇の中、正方形の白い四角形が背景にあるだけ。そこから、あるいはそこへ、屋根裏シーンから音もなく一気に舞台が転換するのが凄い。装置スタッフの気迫が感じられる。普通だとプロンプターのある位置のやや奥に小さな墓があり、始まりの場面では、そこに5人が白い花をゆっくり置いていく。最後の場面はミミが墓の位置にズーンと沈んで行くのと同じタイミングで場面転換が起こる。各幕の間でナレーションが入るが、これは元々の楽譜の各幕の扉にある説明文の若干脚色を伴った日本語訳だそうだ。ムゼッタとマルチェッロの仲を相当詳しく演じさせる演出だった。青春群像にフォーカスした演出だ。ミミの悲劇だけでなく、若々しき青春時代の思い出を舞台に投射した演出だった。元気だったな、ハチャメチャだったな、人生最大活力の季節だったな、思い出深いよ。演出自体が青春時代だ。

演奏はカリッとしてがっちりした感じ。強くて迫力がある。砂川は声量がある。宮里は難なく高い音が出て、うっかりすると気が付かずに通り過ぎてしまう。大山は器の大きい芝居が良かった。柴田は声が綺麗で姿も芝居もノーブル。


17.06.18 日生劇場
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