絵本猿飛佐助/林芙美子
講談社、大衆文学館(文庫)
林芙美子が子供の頃の愛読書だった猿飛佐助の物語を、戦後、自分で書いた小説。忍者ものなので、忍術がいっぱい出てくるかと思うと、そうでは無くて、佐助はめっぽう運動神経の良い、運動能力に優れた若者という設定。できるだけリアルな感じにしたかったんでしょう。
「絵本猿飛佐助」の題名は、吉川英治の「私本太平記」とか「新書太閤記」とか、そういうネーミングのパロディかと思う。中身は全然「絵本」ぽくなく、ちゃんとした時代小説になっています。林芙美子らしく、自然に無理なくさっぱりと、リアリティを大切にして書かれていて、司馬遼太郎の時代小説と同じくらいに楽しく感じました。
戦後、間もなくの作品なので、反戦の気持ちが色濃く記述されています。戦前の軍国の世の中を反省、批判する気持ちです。佐助は誰も殺しません。
物語は、西遊記のようなダイナミックな事件が次々起きる雰囲気で進んで行きますが、筆者の健康上の理由で、あまり事件の起こらぬまま中断したような形で終わっています。このまま続いたらどんなになっていただろうかと思います。西遊記のようにダイナミックな童話的事件がどんどん続いて行ったのか、それとも、大菩薩峠のように、天国、地獄をも巻き込むような超哲学的な大作になっていったのだろうか。この頃の林芙美子には、こんな時代小説を書く力があったんですね。
猿飛佐助は林芙美子ですね(解説には夫の手塚緑敏でもあるとあった)。放浪記の芙美子は猿飛佐助だったんだ。うーむ、なる程。それで、少しは合点が行ったような気もします。
06.03.29
講談社、大衆文学館(文庫)
林芙美子が子供の頃の愛読書だった猿飛佐助の物語を、戦後、自分で書いた小説。忍者ものなので、忍術がいっぱい出てくるかと思うと、そうでは無くて、佐助はめっぽう運動神経の良い、運動能力に優れた若者という設定。できるだけリアルな感じにしたかったんでしょう。
「絵本猿飛佐助」の題名は、吉川英治の「私本太平記」とか「新書太閤記」とか、そういうネーミングのパロディかと思う。中身は全然「絵本」ぽくなく、ちゃんとした時代小説になっています。林芙美子らしく、自然に無理なくさっぱりと、リアリティを大切にして書かれていて、司馬遼太郎の時代小説と同じくらいに楽しく感じました。
戦後、間もなくの作品なので、反戦の気持ちが色濃く記述されています。戦前の軍国の世の中を反省、批判する気持ちです。佐助は誰も殺しません。
物語は、西遊記のようなダイナミックな事件が次々起きる雰囲気で進んで行きますが、筆者の健康上の理由で、あまり事件の起こらぬまま中断したような形で終わっています。このまま続いたらどんなになっていただろうかと思います。西遊記のようにダイナミックな童話的事件がどんどん続いて行ったのか、それとも、大菩薩峠のように、天国、地獄をも巻き込むような超哲学的な大作になっていったのだろうか。この頃の林芙美子には、こんな時代小説を書く力があったんですね。
猿飛佐助は林芙美子ですね(解説には夫の手塚緑敏でもあるとあった)。放浪記の芙美子は猿飛佐助だったんだ。うーむ、なる程。それで、少しは合点が行ったような気もします。
06.03.29