二銭銅貨

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紅天女/オーチャードホール(日本オペラ振興会)2020

2020-02-24 | オペラ
紅天女/オーチャードホール(日本オペラ振興会)2020

作曲:寺嶋民哉、指揮:園田隆一郎、演出:馬場紀雄
美術:川口直次、衣裳:佐藤宇三郎
演奏:東フィル
出演:
阿古夜/紅天女:笠松はる、一真:海道弘昭
帝:山田大智、伊賀の局:長島由佳
楠木正儀:金沢平、藤原照房:前川健生
長老:中村靖、お豊:きのしたひろこ
楠木正勝:曽我雄一、クズマ:清水実
こだま:栗林瑛利子、しじま:杉山由紀、
お頭:龍進一郎、お滝:佐藤恵利
久蔵(旅芸人):望月一平、権左(旅芸人):脇坂 和

ピンクに染まる。舞台全体を覆うかのように大きく広がる樹齢千年にもなるという一本の梅の木。紅天女。梅の木は地面から、またたくまにニョキニョキと伸びて舞台天井にその花を目一杯に広げた。

良く見ると半透明な感じの大きな板に花を描いたもの。ただそれを数枚重ね合わせただけのものらしかったが、それが立体的に見えて迫力があった。梅の木は最後の場面だけだったが、通しで使われた装置としては鉄パイプで組んだ柱が数本づつ左右にあって、これが紅天女が劇中劇である事を印象付けていた。他には特に目立った装置は無かった。舞台奥に各種情景をプロジェクトしていて、場の雰囲気のリアリティを作り出すようにしていて間が抜けないようにしていた。衣裳は時代を反映したバリエーション豊かな感じのもので、かなり頑張って製作されていると感じた。

場の数が多く、それぞれが短いので、場の転換が大変。転換の間はオケはお休みで、音楽は細切れになるところ、転換の間は石笛の多分即興演奏でその場を繋いでいた。石笛はオペラ冒頭でも使われ、その強い空気を切り裂くような音が印象的だった。演者の横澤は冒頭の演奏の前に声明のような歌も披露した。これも大変に気迫に満ちて印象的であった。演奏では琴が多用された。特に琴とハープのアンサンブルが印象に残った。堅い琴の音、柔らかなハープの音。

言葉は理屈っぽい堅い単語や文が多かったが、ミュージカルっぽいメロディーにうまくそれを乗せて歌えるようにしていた。

笠松は破綻の無い伸びやかな声で、ミュージカル的なメロディーに良く合う。動きはそつなく紅天女と阿古夜を良く演じ分け、特に紅天女は大きな芝居で月影先生の後継者であることを強調していた。亜弓に負けてなるものか。

海道は安定したテノールで声も良く通る。長島も安定した歌唱で、きりっとした感じの芝居で場をしめていた。長島はソプラノだが、もうひとつの組はメゾだったので、役はメゾだったのかも知れない。

演奏は新作だったけれども、特に問題なく、手馴れた感じだった。

カーテンコールでは、原作の美内と総監督の郡が揃いのピンクのスタジャンで登場し、紅シスターズとして肩を組んでいた。

石笛:横澤和也
二十五弦箏:中井智弥
特別演出振付:梅若実玄祥

20.01.12 オーチャードホール
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