二銭銅貨

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ドン・パスクワーレ/新国立劇場19-20

2019-11-16 | オペラ
ドン・パスクワーレ/新国立劇場19-20

作曲:ドニゼッティ
指揮:コッラード・ロヴァーリス
演出:ステファノ・ヴィツィオーリ
美術:スザンナ・ロッシ・ヨスト
衣裳:ロベルタ・グイディ・ディ・バーニョ
演奏:東フィル
出演:ドン・パスクワーレ:ロベルト・スカンディウッツィ
   ノリーナ:ハスミック・トロシャン
   マラテスタ:ビアジオ・ピッツーティ
   エルネスト:マキシム・ミロノフ

序曲は劇中の音楽が使われ、「あの騎士のまなざしは」のメロディーなどが出てくる。第1幕は、パスクワーレの歌、マラテスタの歌が導入部にあって、マラテスタがパスクワーレに自分の妹を結婚相手として薦める。エルネストが入って来ると、パスクワーレとエルネストがやりとりをしつつ重唱になる。場面が変わって、ノリーナの「あの騎士のまなざしは」が始まり、その後、マラテスタとの純情娘になりきる芝居の稽古に合わせたいくらか長めの楽しい2重唱が続く。第2幕ではエルネストの歌のあと、ノリーナが登場し、結婚の署名が行われる。この間、重唱が続く。3幕目は、合唱から始まる。ドタバタが一段落して、エルネストの舞台裏からのセレナードは合唱とのアンサンブルが美しい。続いてノリーナとの重唱。ネタばらしの後、最後の重唱で幕。

六枚の壁がそれぞれ接続していて、上から見ると6角形になるように配置されている。この形がパスクワーレの家でその外が庭になる。このセットの壁の接続を2か所切って、左右に展開した形がパスクワーレの部屋。本棚とかがある。6角形を半分に切って左右に切り離して配置し、奥に水面を見せる形がノリーナの居所。ノリーナはアリアの前に、奥から寝そべった形で前方に移動するが、ノリーナの下の台が自走することで動いているようだった。美術・衣裳は伝統的な感じのもので、分かりやすい演出だった。

スカンディウッツィは声量があって貫禄がある。手慣れた感じ。ピッツーティは柔らかい感じで音が綺麗、ちょっとしびれる感じ。ミロノフは綺麗な声。トロシャンはコロラトゥーラが良く軽い感じだが強い声でもある。「あの騎士のまなざしは」はいくらかゆっくり、噛んで含めるような感じで歌われた。

演奏はイタリアっぽさが感じられるものだった。所々で、オケが歌手に先行するような印象があった。

新国のサイト内の説明に「イタリア気鋭の演出家ステファノ・ヴィツィオーリの演出は、イタリアをはじめ多くの歌劇場で上演され続けてきた決定版ともいえる名舞台。」との記述がある。

19.11.09 新国立劇場、オペラパレス
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ドン・ジョヴァンニ/国立音大2019

2019-11-10 | オペラ
ドン・ジョヴァンニ/国立音大2019

作曲:モーツァルト、指揮:大勝秀也
演出:中村敬一、演奏:国立音楽大学オーケストラ
装置:鈴木俊朗、衣裳::半田悦子
出演:ドン・ジョヴァンニ:小林啓倫、レポレッロ:照屋博史
ドン・オッターヴィオ:秋山和哉、騎士長:高橋正尚
ドンナ・アンナ:重田栞、ドンナ・エルヴィーラ:栗本萌
ツェルリーナ:北川茉莉子、マゼ小林ット:島田恭輔

小林は鋭く強いバリトンで堂々とした振る舞い。照屋はコミカルで柔らかい声と芝居。こちらも堂々としている。高橋も重い役を堂々とした声で演じた。重田は透明感のある美しい声。栗本は強い声。北川は落ち着いた感じで、ドンジョバンニとの重唱のアンサンブルが良かった。

美術は、おそらく過去のものと同様であったと思われる。濃い灰色の柱とバルコニーからなるもの。

演奏はしっかりとた安定感のある感じであった。

19.10.20 国立音楽大学講堂大ホール
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カルメン/県民ホール2019

2019-11-09 | オペラ
カルメン/県民ホール2019

作曲:ビゼー 、指揮:ジャン・レイサム=ケーニック
演出:田尾下哲
美術、衣裳:マドリン・ボイド
演奏:神フィル
出演:カルメン:加藤のぞみ、ドン・ホセ:福井敬
エスカミーリョ:今井俊輔、ミカエラ:髙橋絵理
フラスキータ:清野友香莉、メルセデス:小泉詠子
モラレス:近藤圭、スニガ:斉木健詞
ダンカイロ:大沼徹、レメンダード:大川信之

ミュージカルのキャバレーのような雰囲気。ソリストも合唱団も派手な衣裳で歌って踊る。ダンサーは振り付けのキミホ・ハルバートを含めて7人しかいないので、実はソリストや合唱団がラインダンスみたいな事をやっていたらしい。確かに、普通のダンサーがやるにしては難易度の低い振り付けだったと、後で思った。もちろん踊らない合唱団のグループも混在していた。多数の歌歌いにダンスさせるとは、すごいチャレンジだ。歌手の向きも歌っている最中に変わるので、音の強さが不安定になるけれど、「それがどうしたっ」ていう演出。

衣裳は一部を除いて黒ばかり。椅子の多用や幕間の芝居などは田尾下演出に良く見られる特徴。1幕目では椅子を円形に並べたり、3幕目での荷物運びが椅子運びになったりしていた。ショウビジネスに読み替えているので、アリアや重唱は、そのまんまマイクの前で歌う設定になっていた。ミカエラのアリアはオーディションという設定。

最後は、ファンやメディア取材陣の前を、レッドカーペットの上をカルメン達が歩くという趣向。その後、殺されたカルメンにフラスキータがオスカー像のようなものを持って来たりする。

福井はいつも通りの声ながら、ストーカーっぽい歌と芝居が深刻で良かった。加藤は低音が安定していて声量もある。ハバネラ以外も安定していて良かった。今井は迫力ある堂々とした芝居と声。高橋は声が綺麗で強いソプラノ。清野は高音が綺麗、小泉は安定感。二人の重唱が美しかった。斉木の声量と安定感は注目された。

演奏は荒削りで若々しい感じ。

途中と最後のカルメンの歌詞に、自由(Libre)というのが出てくる。こういう言葉や、あるいはドンジョバンニの最期のNo、また、カヴァラドッシのVittoriaとか、物語の趣旨とは異なるけれど、欧州の自由主義のDNAの根強さを深く感じる。色んなオペラのそれぞれの物語とは別に、欧州人の「自由」への渇望や主張を強く感じる。

19.10.19 神奈川県民ホール
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蝶々夫人/東京文化会館(二期会)2019

2019-11-04 | オペラ
蝶々夫人/東京文化会館(二期会)2019

作曲:プッチーニ
指揮:アンドレア・バッティストーニ
演出:宮本亞門
美術:ボリス・クドルチカ、衣裳:髙田賢三
演奏:東フィル
出演:蝶々さん:大村博美、ピンカートン:小原啓楼
   シャープレス:久保和範、スズキ:花房英里子

薄いやや透明性のある幾相ものカーテンからなる舞台で、カーテンと舞台奥にプロジェクションで画像を写す方式。カーテンは天井に取り付けたレールに沿って動く。レールの一つは中央でカーブして折り返すようになっている。舞台セットは無垢の木材で出来ているような感じの約5メートル四方の立方体。柱のみたいなからなるもので、コンパクトな日本家屋をイメージしたものかも知れない。舞台装置はこれだけだが、序曲前や間奏曲、最後で現れる老後のピンカートンの米国での部屋がちゃんとしたセットとして製作されている。カーテンを開け閉めしたり、立方体の家を前後左右に動かしたり、回したりして様々な場面を作り出していた。人も情景も早く良く動く忙しい舞台。装置係のスタッフは大変だろうなと思った。

衣裳はゴージャスな感じで、着物の生地を使っていたようだ。ファッション界のデザイナーが担当していたせいか、ややファッションショー的な演出が見られたり、観客にファッショナブル人が見られたりした。

黙役で青年になった蝶々さんの息子がほぼ出ずっぱりで登場する。父親の蝶々さんに関する告白文を読んで、そのいきさつを想像するという設定。

ピンカートンは、その老後が描かれており、また、最後は、蝶々さんと連れだって舞台奥に消えて行くということで、ハッピーエンド仕立てになっており、ピンカートンはあまり悪く描かれていない。

子役にいろいろ芝居をやらせて重視していることも特徴。

ボンゾは山伏風で、その出番では棒を持った手下3,4人と大立ち回りを演じる。この時の音楽もは、ど迫力。ヤマドリは真面目な海軍高級将校かあるいは将軍で、海軍旗の旗手を含めた3,4名の水兵を伴っている。

蝶々さんの最期は、家の中に入って丸窓のスクリーンを閉め、部屋の中の明かりを赤に変える方式。

大村は低い声で時々かすれ気味になる感じがあるものの、高い声もしっかりと出るパワフルなディーバ。歌の中では愛の二重唱が良かった。演劇的な歌い方と芝居も特徴。小原は真面目で2枚目風。声が美しい。久保は渋い芝居と声。花房は遠慮がちなスズキを地味に演じていた。

演奏には迫力があった。

19.10.06 東京文化会館
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コシ・ファン・トゥッテ/芸大2019

2019-11-02 | オペラ
コシ・ファン・トゥッテ/芸大2019

作曲:モーツァルト、指揮:佐藤宏充
演出:今井伸昭、演奏:藝大フィルハーモニア
装置:鈴木俊朗、衣裳:西原梨恵
出演:フィオルディリージ:山原さくら、ドラベッラ:上久保沙耶
   フェッランド:岸野裕貴、グリエルモ:外崎広弥
   デスピーナ:髙橋慶、ドン・アルフォンソ:後藤駿也

舞台前面に2枚の5メートル四方程度のスクリーンがあり、ここにボッティチェリのプリマベーラが2枚を横断するように描かれていて、各1枚は3つの短冊に分割されて違う色に塗り分けられている。上部に赤い文字で、La Scuola degli Amantiと書かれている。奥やや下手上部には、ビーナスの誕生が吊り下げられている。前のスクリーンは開け閉めの幕替わりに使われている。舞台装置は数本の黒に赤の縦筋が入った数本の柱。以前の公演でも見たことのある柱だ。

各歌手の声は美しさ重視でおとなしい感じ。髙橋は元気良い芝居。後藤は堂々とした芝居だが、やや太鼓持風の柔らかい感じ。

演奏も美しさ重視な感じ。

19.10.05 芸大奏楽堂
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