ジュリオ・チェーザレ/MET12-13舞台撮影
作曲:ヘンデル、演出:デイヴィッド・マクヴィカー
指揮:ハリー・ビケット
出演:
チェーザレ:デイヴィッド・ダニエルズ
クレオパトラ:ナタリー・デセイ
セスト:アリス・クート
コルネリア:パトリシア・バードン
トロメーオ:クリストフ・デュモー
アッキラ:グイド・ロコンソロ
ニレーノ:ラシード・ベン・アブデスラーム
バロック、ロック、ミュージカル。歌い、踊り。芝居。ビートに乗ったコロラトゥーラ。豪華絢爛な演出。
1900年代初頭、在エジプトのイギリス軍という状況設定だったようだ。繰り返しの多いアリアに対して多彩な演出で飽きさせないようにしていた。音楽のリズムに合わせ、メヌエット風、チャールストン風、現代ミュージカル風など様々な演出を行って面白い。斬新。シリアスに演出しているにもかかわらず、各所で笑いを取っていた。楽しい。クライマックスは最後の方の「Da tempeste il legno infranto(嵐で難破した船は)」 。ビートに乗ったミュージカル風の演出で、初演のグライド・ボーンの映像によると、ダニエル・デ・ニースのアリアは軽く、踊りがキビキビとしていて、オペラと言うよりもほとんどミュージカルのようだった。イェーイという感じで終わる。本作のデセイのものは、全く同じ演出であるにもかかわらず、踊りながらの美しいコロラトゥーラが全開で、それが延々と続く。凄い。ビートに乗ったダンスとコロラトゥーラが融合する演出となった。ニースにしてもデセイにしても、この演出で歌って踊れる人はそんなに居ないのでは無いかと思った。
前半にもデセイが踊りながらの歌があって、そちらもすごい。踊りながらでも声楽がほとんど崩れない。
舞台は単純なもので、幾つかの柱が両脇に立ち、中央奥に斜めにいくつもの筋の入った円柱が複数横に並べてあるだけ。この円柱がグルグル廻って波を表現している。この波の表現は妹背山婦女庭訓の吉野川でも見たことがある。あとは大道具、小道具、カーテン、照明を変えるだけで様々な雰囲気を表現していたのだが、単純さや単調さは感じられない作りだった。うまいもんだと思う。
デセイは高音も低音も美しく、そのコロラトゥーラが沢山聴ける。踊り、芝居の激しい演出だったが歌に全く崩れが無い。その他の歌手達も同様で、歌や芝居が激しかったが歌はそれぞれしっかりとしていた。ダニエルズはカウンター・テナーで深く美しい声。デュモーもカウンター・テナーで早いパッセージをキビキビと正確に歌ってうまい歌手だと思った。芝居も刺激的なネチネチ感の良く出たものだった。アブデスラームも美しい声のカウンター・テナーで、中性的な狂言回しの役。面白い芝居が効いていた。クートはズボン役のメゾで美しく強い。バードンは安定して迫力のある美しいコントラルト。やや狂気に走る強烈な精神力を表現する芝居が良かった。ロコンソロは迫力のあるバリトン。
セストとコルネリア2重唱、最後のチェーザレとクレオパトラの2重唱がそれぞれ良くアンサブルして、うっとりと美しかった。演奏は力のあるバロック演奏。
アリアの繰り返し部分がやや単調に感じられるが、面白い演出で楽しかった。衣裳のやや黄色がかった薄茶色の軍服の色が印象に残る。
ユリウス・カエサル:古典ラテン語
ジュリオ・チェーザレ/チェザーレ:イタリア語
ジュリアス・シーザー:英語
13.09.15 東劇