二銭銅貨

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ジュリオ・チェーザレ/MET12-13舞台撮影

2013-09-28 | オペラ
ジュリオ・チェーザレ/MET12-13舞台撮影


作曲:ヘンデル、演出:デイヴィッド・マクヴィカー
指揮:ハリー・ビケット
出演:
チェーザレ:デイヴィッド・ダニエルズ
クレオパトラ:ナタリー・デセイ
セスト:アリス・クート
コルネリア:パトリシア・バードン
トロメーオ:クリストフ・デュモー
アッキラ:グイド・ロコンソロ
ニレーノ:ラシード・ベン・アブデスラーム

バロック、ロック、ミュージカル。歌い、踊り。芝居。ビートに乗ったコロラトゥーラ。豪華絢爛な演出。

1900年代初頭、在エジプトのイギリス軍という状況設定だったようだ。繰り返しの多いアリアに対して多彩な演出で飽きさせないようにしていた。音楽のリズムに合わせ、メヌエット風、チャールストン風、現代ミュージカル風など様々な演出を行って面白い。斬新。シリアスに演出しているにもかかわらず、各所で笑いを取っていた。楽しい。クライマックスは最後の方の「Da tempeste il legno infranto(嵐で難破した船は)」 。ビートに乗ったミュージカル風の演出で、初演のグライド・ボーンの映像によると、ダニエル・デ・ニースのアリアは軽く、踊りがキビキビとしていて、オペラと言うよりもほとんどミュージカルのようだった。イェーイという感じで終わる。本作のデセイのものは、全く同じ演出であるにもかかわらず、踊りながらの美しいコロラトゥーラが全開で、それが延々と続く。凄い。ビートに乗ったダンスとコロラトゥーラが融合する演出となった。ニースにしてもデセイにしても、この演出で歌って踊れる人はそんなに居ないのでは無いかと思った。

前半にもデセイが踊りながらの歌があって、そちらもすごい。踊りながらでも声楽がほとんど崩れない。

舞台は単純なもので、幾つかの柱が両脇に立ち、中央奥に斜めにいくつもの筋の入った円柱が複数横に並べてあるだけ。この円柱がグルグル廻って波を表現している。この波の表現は妹背山婦女庭訓の吉野川でも見たことがある。あとは大道具、小道具、カーテン、照明を変えるだけで様々な雰囲気を表現していたのだが、単純さや単調さは感じられない作りだった。うまいもんだと思う。

デセイは高音も低音も美しく、そのコロラトゥーラが沢山聴ける。踊り、芝居の激しい演出だったが歌に全く崩れが無い。その他の歌手達も同様で、歌や芝居が激しかったが歌はそれぞれしっかりとしていた。ダニエルズはカウンター・テナーで深く美しい声。デュモーもカウンター・テナーで早いパッセージをキビキビと正確に歌ってうまい歌手だと思った。芝居も刺激的なネチネチ感の良く出たものだった。アブデスラームも美しい声のカウンター・テナーで、中性的な狂言回しの役。面白い芝居が効いていた。クートはズボン役のメゾで美しく強い。バードンは安定して迫力のある美しいコントラルト。やや狂気に走る強烈な精神力を表現する芝居が良かった。ロコンソロは迫力のあるバリトン。

セストとコルネリア2重唱、最後のチェーザレとクレオパトラの2重唱がそれぞれ良くアンサブルして、うっとりと美しかった。演奏は力のあるバロック演奏。

アリアの繰り返し部分がやや単調に感じられるが、面白い演出で楽しかった。衣裳のやや黄色がかった薄茶色の軍服の色が印象に残る。

ユリウス・カエサル:古典ラテン語
ジュリオ・チェーザレ/チェザーレ:イタリア語
ジュリアス・シーザー:英語

13.09.15 東劇
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椿姫/新国立劇場(日本オペラ振興会)2013

2013-09-16 | オペラ
椿姫/新国立劇場(日本オペラ振興会)2013

作曲:ヴェルディ、演出:岩田達宗
指揮:園田隆一郎、演奏:東京フィル
出演:ヴィオレッタ:佐藤亜希子、アルフレード:西村悟
ジェルモン:須藤慎吾

左右にややくすんだ赤の壁と青の壁。床にこちらに向かってやや斜めになった一段高い白い床。この3つでトリコロール。天井は無いようで、奥で歌うとやや音が小さめになるように感じた。白い床は歌手達の舞台でもあり、ヴィオレッタの寝台でもあり、また白いキャンバスでもある。1幕目と4幕目では赤い花でその上部が飾られる。最後にそこに横たわるヴィオレッタは一枚の絵のようにも見えて、昇天して天使になったヴィオレッタが表現されているようにも感じられる。

美術は簡素で、数本の燭台と鏡を意味する長細い楕円の輪と机や椅子以外何もない。衣裳は豪華でそれを強調する意味ではシンプルな美術が良い背景になっていた。ヴィオレッタの衣裳は豪華で大きな純白のドレスから、紫、赤のドレスと替わり、最後が白の部屋着。コーラスやバレエダンサーの衣裳も美しく豪華で印象的だった。

佐藤亜希子は美しい声のソプラノ。西村は高い音が美しく良く通るベルカントのテノール。芝居も歌も一生懸命でアルフレードの愚かさがうまく表現されていた。須藤は良く声の出るバリトンでどっしりとした感じだった。「プロバンスの海と陸」は真っ直ぐに素直に歌っていた。

演出はオーソドックスだったが、美術がシンプルだったので何かありそうな感じがして興味深かった。演奏は絹ように柔らかで優しく、殺伐として緊張感のある話を優しく包み込んで、頑張って歌っている歌手の皆さんに優しく寄り添っていた。

パーティの場面での踊りは本格的なバレエで、振り付けも良く音楽に合ってキビキビと美しく楽しかった。前半が金の衣裳の4人の女性ダンサー、後半が黄色系統の闘牛士の衣裳の男性と赤と黒のフラメンコ風の衣裳の女性とのパドゥドゥ。皆、楽しそうに正確に踊っていた。スターダンサーズ・バレエ団。

別荘からヴィオレッタが去る時の去り際の音が美しく迫力に満ちて感動的だった。本当にヴィオレッタが可哀相。慟哭がそのままあふれ出てくる。

9月02日ゲネプロ
ヴィオレッタ:マリエッラ・デヴィーア
アルフレード:村上敏明、ジェルモン:堀内康雄

デヴィーアは演劇的な歌唱でテンポと強弱に抑揚のある歌い方で、レチタチーボも含めて全般にゆっくり目で、しっかりとかみしめるように歌っていた。太くて強いソプラノ。芝居にも説得力がある。堀内の「プロバンスの海と陸」もアルフレードを説得するような演劇的な歌い方だった。村上と堀内は安定して迫力があった。

ラ・トラヴィアータにはいい曲が多いとあらためて想った。

13.09.07 新国立劇場
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ジョコンダ/オペラ座バスティーユ12-13舞台撮影

2013-09-15 | オペラ
ジョコンダ/オペラ座バスティーユ12-13舞台撮影

作曲:ポンキエッリ、演出:ピエール=ルイジ・ピッツィ
指揮:ダニエル・オーレン
出演:
ジョコンダ:ヴィオレッタ・ウルマーナ
グリマルド:マルセロ・アルヴァレス
バルナバ:クラウディオ・スグーラ
母:マリア・ホセ・モンティエル
ラウラ:ルチアーナ・ディンティーノ
司法長官:オルリン・アナスタソフ

衣裳も美術もすっきりとした現代的な作りだったが時代は古い設定で演出もオーソドックスなものだった。ただ、時の踊りはコンテンポラリーなバレエで、衣裳も振り付けも現代的でカラフル、刺激的。

ウルマーナはパワーのあるソプラノで、かなりタフな役を難なくこなして、ジョコンダの強い性格を良く表現していた。グリマルド役のアルヴァレスは誠実で情熱的なベビーフェイスで強いテノール。バルナバ役のスグーラは憎たらしいヒールで堂々としたバリトン。スマートでタフな悪党ぶりがクール。司法長官役のアナスタソフは冷酷な感じの役柄で、その冷酷さが良く出た芝居だった。安定して迫力のあるバス。母役のモンティエルはすごく低い音が安定して出る美しいコントラルトで、透き通るような綺麗な歌が印象に残った。ラウラ役のディンティーノは強いメゾで迫力のある歌手だった。

13.08.24 みゆき座
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皇帝ティートの慈悲/MET12-13舞台撮影

2013-09-14 | オペラ
皇帝ティートの慈悲/MET12-13舞台撮影

作曲:モーツァルト、演出:ジャン=ピエール・ポネル
指揮:ハリー・ビケット
出演:
ティート:ジュゼッペ・フィリアノーティ
セスト:エリーナ・ガランチャ
ヴィッテリア:バルバラ・フリットリ
アンニオ:ケイト・リンジー
セルヴィリア :ルーシー・クロウ

白い豪華な衣装から黒い横に大きく広がった中世風のスカートのドレスに変わり、最後にまた白に戻るフリットリの衣装がヴィッテリアの気持ちの変転を表す。邪悪な悪党のヴィッテリアだけれども、フリットリだと、それがとても誠実な悪党に見えて面白い。誠実と寛容をテーマとしたこのオペラに良く似合っていた。

誠実とはこの世の人間同士のインタラクションを効率良く実現するために必要な仕組みで、経済分野での信用と同じ効果がある。これによって社会活動の流通コストを大幅に下げることができ、梃の原理によって社会の活動力を飛躍的に拡大することができる。

寛容とは、この世の人々が数多くのチャレンジをたくさん繰り返すことが出来るようにするための仕組みである。チャレンジとは数多くの固体が増殖淘汰を繰り返して進化して行く時の、1つ1つの競争のことであるが、この進化には膨大な固体数と膨大な競争が必要となる。高等生物の発生個体数は下等生物に比べてそう多くはないので、膨大なチャレンジ数をどう実現するかが問題となる。寛容とは競争に負けた固体を排除しないで再チャレンジさせる仕組みで、高等生物の個体数を仮想的に増大させる効果がある。高等生物の進化にとって必須の仕組みである。

この2つをテーマにした割と真面目なオペラで、演出も真面目でオーソドックスなものだった。

フィリアノーティはレチタティーボをしっかり歌って印象的だった。まじめで誠実なイタリアっぽいテノールだった。フリットリもまじめで、なおかつ熱心で情熱的だった。ガランチャは美しく強く安定したメゾのズボン役。見た目はスマートでハンサム。リンジーは若さにあふれた情熱的な若者のメゾで強力な歌声だった。クロウは美しく強いソプラノだった。

演奏はメリハリのある強力なもので、弦がそろった時の大気を切り裂くような音に迫力があった。

13.08.18 東劇
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