二銭銅貨

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ルチア(日本オペラ振興会)2017

2017-12-23 | オペラ
ルチア(日本オペラ振興会)2017

作曲:ドニゼッティ、指揮:菊池彦典
演出:岩田達宗
美術:島次郎、衣裳:前田文子
演奏:東フィル
出演:ルチア:坂口裕子、エドガルド:西村悟
   エンリーコ:谷友博、ライモンド:東原貞彦
   アルトゥーロ:曽我雄一、アリーサ:二瓶純子

無地三角形の板を左右と上方に配し、主にモノクロとワインレッドからなる照明がその三角形を照らして様々な表情を作る舞台だった。中央に上から降りてくる鋭角の三角形はルチアがアルトゥーロの肉体に刺す短剣の切っ先で、狂乱の場ではそこが真っ赤に染まる。その替わりにルチアの白の衣裳には返り血が無く、純真で白のままだ。両手を広げると翼のようになるオーソドックスな衣裳で、天使のイメージなんだろうか。簡素な舞台装置に対比するように18世紀ごろをモチーフにしたと思われる豪華な衣裳が使われた。衣裳が引き立つ舞台だった。

演奏はしっかり安定しつつも迫力がてんこもり。また、美しい。それぞれの音がしっかりしていると感じた。いい演奏だった。

合唱に始まり、合唱で終わる。男声の合唱が多い演目だ。迫力ある合唱がいつも通りで楽しい。演出は、合唱団を固めて前面に押し出すような感じのもので、合唱に重きを置いているように感じた。

なんといっても狂乱の場だし、中でもカデンツァ。フルートとルチアの二重唱もうまくアンサンブルして良かった。坂口は長大なパートを難なく切り抜けた。かなりピュアな声が出て、コロラトゥーラもしっかり出て声が強い。ルチアの純粋さが声と芝居で良く表現されていた。谷は美しい迫力のある声で、単なるド迫力だけでなくこういう声も出るんだと感心した。最高だね。西村は貫禄のある美しい若いテノール。こちらも最高。東原は渋くて安定したバス。なんか切ない気分を出しまくっている芝居も良かった。

良い声と良い演奏がそろった最高の舞台となった。

17.12.10 Bunkamuraオーチャードホール
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ルサルカ/日生劇場2017

2017-12-02 | オペラ
ルサルカ/日生劇場2017

作曲:ドボルザーク、指揮:山田和樹
演出:宮城聰、美術:木津潤平、衣裳:高橋佳代
演奏:読響
出演:ルサルカ:竹多倫子、王子:大槻孝志、ヴォドニク:妻屋秀和
   イェジババ:与田朝子、外国の公女:秋本悠希
   料理人の少年:守谷由香 、森番:加藤宏隆

見上げればそこに水面があり、遠くに月、水面にぼんやりと揺れて反射している。水をたたえた両サイドの曲面の壁には日生劇場の壁と同じ模様があり、劇場は水面下に沈み、水の底には沢山の観衆がじっと座って沈んでいる。みんな前を見つめていて、水の精が歌っている、ドボルザークが作った月に寄せる歌を聴いている。月夜。

人生は1回限り、世間知らずの若者の時期も1回限り、そこから脱皮して新しい世界に出て行くことも1回限り。二度と世間知らずの若者に戻ることはない。リスクはあってもトライしなければ2度とチャンスはやって来ない。なすべきことは1回限り。大人になれば何度でも挑戦できるんだけど、若い時の新世界への脱皮は1回限り。

日生劇場の隣にある宝塚の大階段のような舞台の両サイドにはオーケストラが十数人、オケピからはみ出して座っている。下手には木管、上手には金管。大編成のオーケストラからは大音響が響きわたる。でも歌手の声は良く聞こえるから、声と楽器ができるだけ重ならないような配慮が作曲上でなされていることが分かる。オケピの壁は2/3程度が削除されて、音が良く聞こえるようになっている。オーケストラが舞台に乗ってる演奏会形式に近い。迫力があって旋律が美しい。ハープの音が良く聞こえて、月に寄せる歌やヴォドニクが2幕目で歌う歌とのアンサンブルが美しく、空間に響きわたる。森の精の3重唱も注目される。

衣裳は特に凝った造りではなかったけれど、シャープでキレが良く輝くような舞台照明の中で、柔らかく落ち着いたアンサンブルを作っていた。

竹多は落ち着いた声のソプラノ。大槻は声が良く通る強いテノール。深刻な芝居が良かった。妻屋は抜群。ちょっと柔らかめな声で迫力十分。いいよなあ。背が高くてカーテンコールの時に山田がジャンプしてのハイタッチしていた。秋本はしっかりした声のソプラノ。守谷と加藤はコンピでずっと歌う。激しい動きの中で芝居も声も安定していた。コミカルな芝居が良かった。最初の出は客席前面の凄く狭いところを行ったり来たりしながらの歌と芝居で、森番の加藤は持っていた荷物を観客にあずけたりしていた。

コンパクトで印象的な舞台。大音響の迫力ある演奏が強く印象に残り、ルサルカってワーグナーっぽいと感じた。ルサルカは好きだ。

17.11.11 日生劇場
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