二銭銅貨

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カヴァレリア・ルスティカーナ、パリアッチ/東京文化会館(二期会)2012

2012-07-24 | オペラ
カヴァレリア・ルスティカーナ、パリアッチ/東京文化会館(二期会)2012

作曲:マスカーニ/レオンカヴァッロ、演出:田尾下哲
指揮:パオロ・カリニャーニ、演奏:東フィル
出演:
サントゥッツァ:大山亜紀子、トゥリッドゥ:岡田尚之
アルフィオ:小川裕二、ローラ:富岡明子、ルチア:栗林朋子

カニオ:大野徹也、ネッダ:嘉目真木子
トニオ:桝貴志、シルヴィオ:塩入功司、ペッペ:小原啓楼

右斜め80度くらいに傾いた大きな大理石風の壁が両サイドにあって、舞台を挟み天井まで届いている。このせいで舞台やピットが水平でなく少し右斜め下に傾いているように感じる。やや不安な印象を潜在的に感じる。最初のカヴァレリア・ルスティカーナの舞台は、多数の椅子と幾つかのテーブルを用いた簡素なステージで、モノトーンな色あいの地味な美術だった。間奏曲の場面では横一列に並べた椅子の上をサントゥッツァが、うつむいて、うなだれて、ゆっくり歩く。間奏曲がサントゥッツァの悲しみを静かに表現する。哀しいねずみ色の涙。

2つ目のパリアッチでは一転してカラフルになる。大道具をたくさん使った明るい舞台。前の舞台のモノトーンなイメージから雰囲気がガラっと変わる。この演目の最初のセットが小さなTVスタジオ、さらに階段座席を使った大型スタジオに変化する。階段席はパイプで作ったような骨組みに樹脂製と思われる黄色い椅子を多数並べたもので、黄色い椅子は合唱団によって運ばれて階段席に置かれる。

カヴァレリアの最後で縦に長く接続されたテーブルをグルッと回し、舞台を飛び出したように見せる演出があった。客席から見ていると映画のカメラの急速なクローズアップのようで興味深かった。劇的な演出。パリアッチではパイプの階段席をゆっくり回し、階段席の一番上で逢引きするシルヴィオとネッダに照明をあてる手法が採られた。ちょっと映画のクレーンを使った長回しの手法のようだった。映画の1ショットだとしても良い構図のシーンだ。黄色の椅子達が効いていたように思う。薄暗がりと若々しい恋愛の輝き。

パリアッチは設定を現代か、あるいはそれに近い時代のTVショーに道化師の悲劇を移植したものだった。ネッダの衣裳や仕草は前半がちょっとだけ「ティファニーで朝食を」のオードリー・ヘップバーン風、後半がちょっとだけモンロー風。演出家は60年前後の時代設定をしていたらしい。登場人物の仕草からは現代風にも感じられた。

現代ではマスコミやメディアだけでなく、インターネットやゲーム、その他さまざまな場面で、虚構と現実がまざりあって溶融している。TVショーでは芸人のプライバシーが売り物にされ、ニュースショーでは庶民の生活が音楽付きで上演され、ゲームでは実際の戦闘が画面の中で繰り広げられ、インターネット上には虚偽と真実が入り混じって自己主張を声高に叫んでいる。虚構と現実の見分けが付かなくなった現代。現代人は皆カニオをなんだろうかと思ってしまった。パリアッチの喜劇をTVショーに置き換えた読み替えにそうした意図は無かったかも知れないが、そんな風にも感じられた。

サントゥッツァの大山亜紀子は堂々としたソプラノで強さを感じた。トゥリッドゥの岡田尚之は真面目な印象。アルフィオの小川裕二も堂々としていた。カニオの大野徹也はとても演劇的で苦しげな歌でカニオの苦痛を感じさせるものだった。ネッダの嘉目真木子は低い音が良く安定した安心感のあるソプラノ。シルヴィオの塩入功司は若者らしい単純で情熱的、イタリアな歌で、ネッダとの恋が良く表現されていた。桝貴志は迫力のあるバリトンで劇全体をしめていた。ぺッペの小原啓楼は要所のアリアをロカビリー風の衣裳でばっちり決めて、うまい。

演奏はややあらっぽい感じはしたが、抑揚のある歌うような演奏で歌手たちと良くアンサンブルしていた。イタリア気分満載の演奏だったように思う。

12.07.15 東京文化会館
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Absolutely Fabulous

2012-07-11 | Weblog
Absolutely Fabulous

アブファブ大好き、
終わってしまって涙。

いつも不良ぶってガクガクしている
エディナ・モンスーンは中年の母親で、
1970年代依存症。
それでも、娘の事が心配で、
心配で心配でしょうがない。
そのエディナの親友のパッツィー・ストーンは、
エディナの事が大好き。
エディナの娘にエディナを取られやしないかと、
それはそれは心配で心配で、しょうがない。
娘の方のサフランは、
このどうしようも無い母親をなんとかしようと一所懸命。
でも、そんな母親が大好き。
憎まれ口きいていても大好きなんだ。
母親の事ではライバルの
パッツィーとはいつも喧嘩ばかりで、
でも本当の所は、
そのパッツィーの事もやっぱり大好き。
髪の毛てんこ盛りのパッツィー。
サフランのおばあちゃんは、いつもすっとぼけていて、
ものに動じてない。
エディナの会社の事務員のバブルは、
面白すぎて、いつもぶっとんでいるか、
あるいは寝ている。

女性コメディアン中心の、面白すぎるキャラクター満載のBBCによるシチュエーションコメディ。

Edina Monsoon:Jennifer Saunders(脚本・演出)
Patsy Stone:Joanna Lumley
Saffron Monsoon:Julia Sawalha
Mother:June Whitfield
Bubble:Jane Horrocks

Series 1 (1992)
Fashion,Fat,France,Iso Tank,Birthday,Magazine
Series 2 (1994)
Hospital,Death,Morocco,New Best Friend,Poor,Birth

の12エピソードがTOKYO MXで放送された。他に、

Series 3 (1995)
Doorhandle,Happy New Year,Sex,Jealous,Fear,The End
Series 4 (2001)
Paralox,Fish Farm,Paris,Donkey,Small Opening,Menopause
Series 5 (2003)
Cleanin',Book Clubbin',Panickin',Huntin',
Shootin' & Fishin',Birthin',Schmoozin',Exploitin'
Specials
The Last Shout I,II(1996),a Life(1998),Gay(2002)
Ab Fab: New York(2002),Cold Turkey(2003)
DrinkinCleanin(2003),White Box(2004)
Comic Relief sketch(2005)
Identity,Job,Sport Relief Special(2011-2012)

などがあり、映画化も企画されているらしい。
日本語のwikiもできている。

2012 4月-6月 TOKYO MX

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林美智子の90分の「コジ」/サントリーホール12

2012-07-09 | オペラ
林美智子の90分の「コジ」/サントリーホール12

作曲:モーツァルト、演出:林美智子
演奏:河原忠之(ピアノ)
出演:
フィオルディリージ:澤畑恵美、ドラベッラ:林美智子
フェランド:望月哲也、グリエルモ:黒田博
アルフォンソ:池田直樹、デスピーナ:鵜木絵里

重唱のみで構成し、間に日本語による芝居がちょっと入る形式。舞台には椅子だけ、美術と照明はほとんど無し。衣裳も通常のリサイタル用のような黒のドレスとスーツ。

スピーディで現代的な演出、歌の途中でも笑いをとる芝居もあって喜劇のスタイル。重唱が中心で喜劇は少々だけれども楽しい公演だった。これは2006年の再演で、客席は満員。2011年には北九州市でも公演があった。

澤畑は低い音も高い音も安定した素直なソプラノ。林はパワーを感じるドラベッラ。黒田は強烈で迫力のある歌で、芝居も手馴れた感じだった。望月は声が強くて美しい。池田は堂々とした歌で芝居もうまい。鵜木はコメディアンがイタについた感じのデスピーナで一番おもしろく、声にパワーがあった。ピアノの河原も演奏の合間合間に笑いを取る役者ぶりだった。演奏はちょっとワイルド。重唱では澤畑と望月の「夫の腕の中に」が良く、声が良く溶け合って美しかった。

楽しい喜劇だった。
    
12.06.23 サントリーホール
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ローエングリン/新国立劇場11-12

2012-07-07 | オペラ
ローエングリン/新国立劇場11-12

作曲:ワーグナー、演出:マティアス・フォン・シュテークマン
指揮:ペーター・シュナイダー、演奏:東京フィル
出演:
ローエングリン:クラウス・フロリアン・フォークト
エルザ:リカルダ・メルベート
ハインリヒ国王:ギュンター・グロイスベック
テルラムント:ゲルト・グロホフスキー
オルトルート:スサネ・レースマーク
伝令:萩原潤

ローエングリンのフォークトの声は、透明で美しく、水色のローエングリンの印象に良く合っていて、声量も十分にあった。エルザとオルトルートは、声の感じも体型も良く似ていて、正反対の役を1人2役でやっているような印象で、ちょっと面白かった。国王とテルラムントは堂々とした感じの歌と芝居。伝令の萩原はとても綺麗で強いシャープな歌。合唱は100人を超えるような大合唱で、白鳥が来る前の合唱など、とても柔らかく美しく、優しかったのが印象に残った。

舞台の奥の壁面は、50cm角くらいのタイル状に区切られたスペースが多数並んだものになっていて、各スペースの面が斜めになっている。そこに多分、裏からイメージを投影しているらしく、画像がモザイク上にボケた感じになって提示されていた。ローエングリンの勝利の場面では花火、エルザがローエングリンの出自を疑う場面では白地に紫のモヤモヤが表示されたりした。

舞台は簡素で置物は極端に少なく、色も少ない。舞台転換もほとんど無く、ミニマリズムを思わせるデザインだった。衣裳も含めてSFっぽい感じを出していたようだ。舞台では合唱団のフォーメーションを細かく変えて、舞台上での変化をつけていた。
    
12.06.10 新国立劇場
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