二銭銅貨

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ボエーム/オーチャードホール(日本オペラ振興会)2014

2014-11-17 | オペラ
ボエーム/オーチャードホール(日本オペラ振興会)2014

作曲:プッチーニ、指揮:沼尻竜典
演出:岩田達宗、演奏:東フィル
出演:ミミ:バルバラ・フリットリ
ロドルフォ:ジュゼッペ・フィリィアノーティ
ムゼッタ:小川里美、マルチェッロ:堀内康雄
ショナール:森口賢二、コッリーネ:久保田真澄

フィリィアノーティは良く通る綺麗なイタリア風テノール。イタリアオペラに良く似合う。誠実な感じ。フリットリは演劇的な歌唱。抑制的に声をコントロールして情感を良く表現していた。「私の名はミミ」はややゆっくりめ。芝居もいい。抑えた表現で渋い。端正。フィリィアノーティもフリットリも控えめな感じがして日本人的だと思った。「蝶々さん」が似合うかも知れない。

小川はしっかりとした元気のいいソプラノ。堀内は深みのあるバリトンで、森口はキレが良く、久保田は優しい感じ。

演奏は美しく厚みが感じられた。最上級の美しさ。
また、聞きたい。

美術は大振りな作りで舞台一杯に広がるデザインだった。ややぼやけたり歪んだりした感じのデフォルメ。衣裳も含めて地味な暗い色合いだった。

10月31日ゲネプロ
ミミ:砂川涼子、ロドルフォ:村上敏明、ムゼッタ:伊藤晴
マルチェッロ:須藤慎吾、ショナール:柴山昌宣
コッリーネ:伊藤 貴之

砂川の声はホール全体に良く響いて美しかった。ラストの声は抑制されて、控えめなオーケストラとのアンサンブルが美しく、ミミの可哀相さがジンワリ伝わって、最後の劇的な演奏に繋がっていた。村上のロドルフォには演劇的な苦悩が良く表現されていた。伊藤は高い声が良く出て元気のいいムゼッタだった。

14.11.03 オーチャードホール
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友人フリッツ/洗足学園2014

2014-11-15 | オペラ
友人フリッツ/洗足学園2014

作曲:マスカーニ、指揮:松下京介
演出:ダーリオ・ポニッスィ
演奏:SENZOKUオペラ管弦楽団
出演:フリッツ:勝又康介、スゼル:薮田瑞穂
   ダヴィッド:吉川賢太郎、べっぺ:小泉詠子
   フェデリーコ:畠伸吾、アネッツォ:後藤春馬
   カテリーナ:茂木真由美

文化庁委託事業「平成26年度、次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」での公演。舞台は屋敷の中と農園をそれぞれ大きなセットで作ったもので、ある程度本格的。

時代はナチス台頭の頃。フリッツたちがナチス風の敬礼をしたり、ナチスかぶれの若者が二人、黙役で登場したりする。彼らの張ったポスターをフリッツが引きちぎる場面もあった。2、3幕目の間奏曲の所ではこの2人がべっぺをいたぶって、挙句に1人がべっぺを拳銃で処刑しようとし、1人が止めに入る場面が演じられた。そのあと2人はべっぺの仲間に負い立てられて退場し、べっぺは難をのがれる。最近の世界的な民族意思の高まりや紛争、テロを意識した批評的な演出。フリッツとスゼルの農園での重唱では屋外に干された数枚のシーツが使われた。定番とは言え、効果的だった。ちょっと古い映画の面影を残した演出に感じた。出演者の大きな身振りのマイム、ボディランゲージも印象的だった。良い演出だと思う。

演奏には活力があり迫力に分厚さを感じた。2、3幕目の間奏曲には荒々しさがあった。

勝又と薮田は前半を抑え気味にしてラストを全開で歌った。大きなオーケストラとのアンサンブルだったが良く声が出ていた。吉川はものすごく強く鋭い感じのバリトンで、声が良く響いて気迫がすごかった。小泉の声は安定していて、低めの所が美しく声量が十分にあった。何よりもマイムがダンスになっていて踊りがうまい。キビキビと良く動いて小気味良く、ズボン役がぴったりとハマり、またミュージカルスターのようでもあった。

14.10.24 洗足学園、前田ホール
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ドン・ジョバンニ/新国立劇場14-15

2014-11-09 | オペラ
ドン・ジョバンニ/新国立劇場14-15

作曲:モーツァルト
指揮:ラルフ・ヴァイケルト
演出:グリシャ・アサガロフ
演奏:東京フィル
出演:ドン・ジョヴァンニ:アドリアン・エレート
レポレッロ:マルコ・ヴィンコ
エルヴィーラ:アガ・ミコライ
ドンナ・アンナ:カルメラ・レミージョ
オッターヴィオ:パオロ・ファナーレ
ツェルリーナ:鷲尾麻衣、マゼット:町英和
騎士長:妻屋秀和

これは2012年に見たプロダクション。この時のアガ・ミコライはドンナ・アンナ。ピュアで美しく透き通る声。拍手喝采だった。ドンナ・アンナの美しさが透明であることが良く理解できた。今回はエルヴィーラ。今回の公演では前回とは違う強烈な声だった。それでも声量を抑えたレチタティーボの所では安定した美しい声を聴くことが出来た。ドンナ・アンナのカルメラ・レミージョは今年サン・カルロのエフゲニー・オネーギンで強烈なタチアナをやった人。今回のドンナ・アンナも強烈で、激情を感じるものだった。ドンナ・アンナとエルヴィーラが同じような感じになったので、この2人が姉妹のように感じた。ツェルリーナの鷲尾もかなり強烈な印象だったので、3人姉妹だったかも知れない。アドリアン・エレートは優しいドン・ジョヴァンニで、マルコ・ヴィンコは気迫のある強烈なレポレッロ。これは普通のプロダクションとは逆の雰囲気だった。騎士長の妻屋は前回と同じだったが、今回は声の迫力がすごく、オーケストラの強烈な音と相まって、超弩級の音が聴かれた。本物の石像だ。前回の座席は最前列、今回は最上階だったので、そうした違いが関係してたかも知れない。

キャスティングが逆な感じで面白かったのと、全般に強烈さを感じる舞台だった。

14.10.19 新国立劇場、オペラパレス
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フィガロの結婚/国立音大2014

2014-11-08 | オペラ
フィガロの結婚/国立音大2014

作曲:モーツァルト、指揮:増田 宏昭
演出:中村敬一、演奏:国立音楽大学オーケストラ
出演:フィガロ:照屋博史、スザンナ:佐々木麻子
   アルマヴィーヴァ:大槻聡之介、ロッジーナ:高橋希絵
   ケルビーノ:細井暁子、バルバリーナ:砂村郁
   マルチェリーナ:遠藤千寿子、バジーリオ:瀧川幸裕

終幕の25番のマルチェリーナのアリアはカット。26番のバジーリオのアリアが歌われた。しばしばカットされるこの部分はメゾとテノールの出番が少ないために作られたものだと思うけれど、若手の育成のためにテノールの方だけカットしなかったのだと思われる。マルチェリーナにアリアは無かったが、遠藤の声は深く安定して美しく、滑らかに歌われたレチタティーボは良かった。マイムは落ち着いていて貫禄があり、背筋を伸ばした姿勢の良さが目に付いた。衣裳も豪華で着こなしも良い。上品なやや年配の貴婦人の雰囲気。

演奏は元気良く強靭。その中でホルンが優しく、バランスが良いと感じた。弦が強く管が優しい。歌唱も全体的に強く強靭な感じがした。

スザンナの佐々木はかなり強いソプラノ。スザンナには強すぎると感じていたが、最後のアリアでスザンナ風では無いドラマチックな声を聴くことになって、ここでこの人の持ち味が了解された。良いソプラノだった。バルバリーナの砂村は装飾的な歌唱が美しく、バルバリーナにはもったいない程だ。ロッジーナの高橋も強いソプラノ。フィガロの照屋は硬質なバリトン。手馴れた感じ。「もう飛ぶまいぞこの蝶々」は軍隊行進曲のようだった。アルマヴィーヴァの大槻は迫力のあるバリトンで、伯爵の怒りをシリアスに表現していた。ケルビーノの細井は女性的なメゾでこの人にも強さが感じられる。"Voi che sapete"は舞台前面でコンサートスタイルでしっかり歌われた。ケルビーノの一生懸命さが感じられた。

美術はドアが両サイドにある簡単なもの。演出はオリジナルをしっかり丁寧に表現したもので分かりやすかった。

14.10.18 国立音楽大学講堂大ホール
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夢遊病の娘/昭和音大2014

2014-11-01 | オペラ
夢遊病の娘/昭和音大2014

作曲:ベッリーニ、指揮:ダンテ・マッツォーラ
演出:マルコ・ガンディーニ、演奏:昭和音楽大学管弦楽団
出演:アミーナ:柏川翠、エルヴィーノ:岡坂弘毅
   リーザ:木全瑞穂、ロドルフォ:小田桐貴樹
   アレッシオ:市川宥一郎、テレーザ:吉田郁恵

熱いベッリーニの情熱と美しいソプラノの音。テノールの憂鬱とバスの重厚。母役のメゾは優しく、恋敵のメゾは元気良く。演奏は気合を入れて疾走し、緩急と間を持ちながら流麗にとどまる所を知らない。木管は情熱的に力強く装飾的に吹き鳴らされ、フルートの音色はイタリアの色に染まる。舞台全体に散らばった重唱のアンサブルは空間に満ち満ちて、合唱の力強さがホールの空気を圧縮する。

美術と衣裳は円と正方形をモチーフにした幾何学的なデザイン。半透明のスクリーンを張った壁を二枚使って、これを動かすことでバリエーションを出していた。アミーナとエルヴィーノが喧嘩する場面での幻想的な森のイメージが印象的だった。

透明な美しいソプラノの音、木管のイタリアっぽい情熱、「ああ信じられない」="Ah! non credea mirarti"が良かった。

14.10.12 テアトロ・ジーリオ・ショウワ
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