二銭銅貨

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セヴィリャの理髪師/ジーリオショウワ(日本オペラ振興会)2017

2017-05-02 | オペラ
セヴィリャの理髪師/ジーリオショウワ(日本オペラ振興会)2017

作曲:ロッシーニ、指揮:佐藤正浩
演出:松本重孝、美術:荒田良、衣裳:前岡直子
演奏:ジーリオ・ショウワ・オーケストラ
出演:
ロジーナ:脇園彩、アルマヴィーヴァ:中井亮一
フィガロ:谷友博、バルトロ:柴山昌宣
ドン・バジーリオ:田島達也、ベルタ:但馬由香
フィオレッロ:大石洋史

ゲネプロ:
ロジーナ:丹呉由利子、アルマヴィーヴァ:黄木透
フィガロ:押川浩士、バルトロ:田中大揮
ドン・バジーリオ:上野裕之、ベルタ:吉田郁恵
フィオレッロ:田村洋貴

2011年のプロダクション。下手にバルコニーがある室外と上手に窓のある室内を共用する装置。音楽重視の演出でスコアを可視化したような感じの動き。1幕目終わりの"Mi par d'essere con la testa"の合唱では、隊長とバルトロあるいはバジリオが縦に並んで交互に立ったり座ったりする。これはあたかも2気筒エンジンのピストンを思わせる動きで、良く音楽にあっていて楽しかった。さりげなくコミカルな場面も多く、笑いを多く取っていた。歌の練習場面では、脇園が夜の女王の第2のアリアのフレーズをちょっと口ずさむと、すかさずバルトロが「モーツァルト」と合いの手を入れて場内爆笑、盛大な拍手となった。衣裳はすっきりした原色主体のおもちゃの人形を思わせるもので、暗めで地味な美術に良く生えていた。楽しい演出と美術。

ロジーナの窓の下でアルマヴィーバがギター伴奏だけで歌う部分は、歌手によるギター伴奏だった。中井が最初の部分を弾き語りし、後半を谷が伴奏した。ゲネプロでは押川が全部を伴奏した。

脇園は悠々として強力なロジーナ。丹呉も強い声で共に低い声がしっかりと出ていた。谷は破壊力のある強烈な声でたくましいフィガロ。押川も強力なバリトンだが、こちらは紳士的なフィガロ。中井も黄木も声量のある美しいテノール。2人ともラストの長大なアリアが大変そうだったが何とか乗り切った。柴山はベテランな感じで余裕の歌と芝居。上手く笑いを取る場面が多く、かつらを使ったネタで受けていた。田中は若さが出るところもあったけれどもほぼ難なくこなしていた。田島は上品な感じで細身、上野はみすぼらしい感じが良く出ていた。「中傷はそよ風のように」はそれぞれ迫力があり、、大砲代わりの太鼓に合わせて傘を開く演出だった。但馬は真面目な感じのベルタで、一生懸命の舞台だった。合唱では高い音が良く通っていた。吉田はお人形さんのようなアニメっぽいカクカクした動きが可愛く、またクシャミのタイミングが完璧。素晴らしいベルタ。歌は低い声が安定していてこれも完璧。ベルタは通常ソプラノだと思われるが、この公演では両方メゾ。なお、同一プロダクションの2011年公演の時のベルタは牧野真由美(メゾ)、 宮本彩音(ソプラノ)だった。大石は紳士的で上品。歌はもとより場を良く仕切って良い芝居だった。安定感がある。田村は綺麗な声で歌も芝居も頑張っていた。

演奏は強く正しく美しく、元気良く明るい。アンサンブルも良い。編成規模が大きくないせいか、あるいは歌手が声量ゆたかなせいか、ホールの響きか、結構大きな音を出していたように思う。

血沸き肉躍る、楽しいプロダクション。

ロジーナが歌の練習で歌う歌:
Contro un cor che accende amore
di verace, invitto ardore,
s'arma invan poter tiranno
di rigor, di crudelta.
D'ogni assalto vincitore
sempre amor trionfera.

「無慈悲で残酷で暴力的な独裁者に対して愛は勝つ」という趣旨の歌詞で、今のご時世の風刺にもなっている。


17.04.29 ジーリオ・ショウワ
コメント
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