二銭銅貨

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10歌舞伎座8月/東海道四谷怪談/歌舞伎

2010-08-31 | 歌舞伎・文楽
10歌舞伎座8月/東海道四谷怪談/歌舞伎

東海道四谷怪談(とうかいどうよつやかいだん)
序幕、浅草観世音額堂の場より大詰、仇討の場まで
出演:
民谷伊右衛門:海老蔵、
お岩/小仏小平/佐藤与茂七:勘太郎、
直助権兵衛:獅童、お袖:七之助、お梅:新悟、
舞台番:猿弥、宅悦:市蔵

七之助のお袖が美しく、良く通る高い声が綺麗で背の高いすらりとした美人。相手役の与茂七が勘太郎で、ナヨっとしたお兄さんのこちらも美しい。海老蔵の伊右衛門はワル。善良さは微塵もない。同じくワルの獅童と並んでダブル・ワルのコンビネーションが良く、ワルがさらに増大する。不遜、冷酷、残虐。

それでも伊右衛門が主役なんだから面白い。悪者が主役で成立しているドラマが多数あるけれども、どうしてなんだろう。一般に悪者というのは忌避されるけれども、実はそうでも無いってことの反映なのか。悪者も世の中の成り立ちには必要なのかも知れない。必要悪っていうくらいだから。

物語は三角屋敷を除いた全部らしく、三角屋敷の部分は猿弥が舞台番として出て来て楽しく解説した。

10.08.12 新橋演舞場
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浪花の恋の物語

2010-08-29 | 邦画
浪花の恋の物語 ☆☆
1959.09.13 東映、カラー、横長サイズ
監督:内田吐夢、脚本:成沢昌茂、原作:近松門左衛門
出演:中村錦之助、有馬稲子、片岡千恵蔵、千秋実
   東野英治郎、進藤英太郎、田中絹代

着物の黒、襟の赤、
真っ赤な血の色、情けの色。
精緻な動き、
三味線の音、
手先、シャープな動き、
歌いものの大夫の高い、通る声、
梅川の情、梅川の悲しみ、
ずっと奥にしまわれて、
微かに放射する、
有馬稲子の踊り。
切れるような視線、
静止、姿勢。

人形の梅川に変わる。
人形の梅川は人間の梅川よりもっと情が深い。
人形遣いのせいか、大夫のせいか。
目隠しの父親と薄幸の忠兵衛の間を取り持つ梅川。
その人間的な泥臭い残酷な悲しみの深さは、
有馬稲子の端正な踊りと良く対照している。

中村錦之助の忠兵衛はボンボンの弱々しさと、封印切りでの青筋だった気迫の凄みを良く際立たせている。有馬稲子の梅川はちょっとクール。片岡千恵蔵は堂々たる近松門左衛門。

上映後に有馬稲子のトークイベントがあり、思い出話を中心に語った。内田監督は左翼っぽい人だったとか、高倉健を不器用な人だとか、自分の梅川の踊りの良さを言うのに吉永小百合を引き合いに出したりとか、ネガティブな中傷するような言い方ではなかったが、それでも言いたい放題の感じで、自分のことを小生意気な女優だったと何度も語っていたが、今でも十分に小生意気だった。この女優の元気な評判通りのトークは楽しかった。面白い人だ。

10.08.08 新文芸座
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森と湖のまつり

2010-08-28 | 邦画
森と湖のまつり ☆☆
1958.11.26 東映、カラー、横長サイズ
監督:内田吐夢、脚本:植草圭之助、原作:武田泰淳
出演:高倉健、香川京子、三国連太郎、中原ひとみ、有馬稲子
   加藤嘉、藤里まゆみ

大きな空と広い草原、
大きな大地、広い山々。
木々の揺れと川の流れ。
勇ましい海と強い波。
アイヌの人々の素朴な暮し。

香川京子は純真で真剣。
ちょっと強くてきつい感じの東京から来た若い女性の画家で、
アイヌ研究家の先生に付いて来た。
中原ひとみはアイヌと内地人の混血の娘で濃いメーク。
有馬稲子はアイヌの女性でキレが良い。バーのマダムで、
サイコロ代わりのコマをブンっと回して登場する。
アイヌ研究家の元妻という設定。
高倉健はアイヌの活動家。一途で寡黙。
加藤嘉は高倉健の姉役の藤里まゆみに惚れられる内地人の先生。
最後は生き仏のようなヨボヨボの老人のようになってしまう。
三国連太郎はひたすらワイルド。情熱が炸裂する。
鉄砲打ちで、漁師。

内地人とアイヌの深い溝を埋めようとする人々と、アイヌ固有の文化の独自性を維持しようとする人々との葛藤を描いた映画。何故か西部劇のような決闘場面には違和感があった。

文化というものは離合集散、増殖淘汰を繰り返して進化発展して来たもので、その意味では1つの文化がそのまま変化せずに維持されるという事はあり得ない。独自性を維持して変化しない文化があるとすれば、それはその文化の死を意味する。進化のためには離合集散、増殖淘汰が避けられない。

この離合集散の「合」と「集」とは多くの異文化がぶつかり合って、さらに多くの異文化が生まれるという事を意味している。当然、このぶつかり合いのためには、そもそもあらかじめ多数の異文化が必要である。そして、この異文化が多数存在するという事のためには、個々の異文化はその独自性が長く維持されなければならない。ところが文化の「合」「集」すなわち融合や、あるいは淘汰とは、その維持しなければならない独自性の一部を放棄することや変化を意味している。

つまり独自性の維持を壊す「合」「集」と、独自性の維持と言うことの両方が、進化のためには必要なのである。矛盾した2つの事が両方必要なのである。

特定の文化を絶滅させるのではなく、部分的あるいは緩和的なプロセスで融合や放棄を行って、文化の独自性の維持と変化のうまいバランスを保って離合集散、増殖淘汰を実現して行く事が進化には必要である。要するに異文化の統合を意味するグローバリズムと、文化の独自性維持を意味するローカリズムの適度なバランスが必要だという事である。これによって文化の進化が適度に促されて行く。この映画にはその事が良く表れていると思った。

10.08.08 新文芸座
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母情

2010-08-07 | 邦画
母情 ☆☆
1950.06.28 新東宝、白黒、普通サイズ
監督、脚本:清水宏、脚本:岸松雄
出演:清川虹子、山田五十鈴、黒川弥太郎

ゆっくりとした、
田舎の日差し、
山々の木々、
ゆるい山道、
のんびりとしたバス、
黙々とした人々。

寡黙な清川虹子はごっつい母さんだけれども、
それでも3人の母親で、母情というものがある。
旦那も無く、金も無く、
苦しい生活というものがあって、
暫くはその母情というものに蓋をして、
辛抱して、耐えて、つらいけれど、
子供2人までを親戚の家にあずけ、
ちょっとの我慢と理屈で、納得して、
山道を子供と一緒に登って行く。
それでも抑えきれない母情というものがあるので、
小便小僧の長男を浦辺粂子の所に置いていく、
その寸前のところで、
蓄積された総てが
さらけ出される。
その夜の小便小僧の立ち小便が開放的で明るい。

画家が黒川弥太郎、おじさんが古川緑波、先生が徳川夢声。

10.07.31 神保町シアター
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山びこ学校

2010-08-02 | 邦画
山びこ学校 ☆☆
1952.05.01 八木プロ、白黒、普通サイズ
監督:今井正、脚本:八木保太郎
原作:無着成恭
出演:木村功

小さい四角い白黒の、
素朴な画面の中で、
若い無着成恭が
めいっぱいはりきって、
頑張って活躍する、
山元小中学校の教員時代の話。

学校教育とはどうあるべきかという事を映画として展開した、ややドキュメンタリー風の物語。主人公は無着と子供達だが沢山いい俳優が脇で出ている。まじめに真の教育とはどうあるべきかについて考えている無着成恭一色の映画。なかなか、あそこまでやれる先生は居ないけれども、多かれ少なかれ、多くの先生はみんなあんな風に悩んで、それで頑張っているんだろうと思う。いい先生に恵まれれると生徒は幸せだ。

ウィキによると、この映画や本で地域や村の貧乏と恥を赤裸々に出してしまった為に無着成恭は村に居られなくなったとの事。なかなか難しいことだ。

映画の演出には若干、理念を宣伝するような所があって、ちょっと東北の田舎の素朴な雰囲気になじまない印象だった。

無着が木村功、その父母が滝沢修と北林谷栄、妹が丹阿弥谷津子、生徒の母親で病気で亡くなる女性役に本間文子、先生役に岡田英次、金子信雄、杉葉子、その他、東野英治郎、殿山泰司、西村晃などが出演。

10.07.25 神保町シアター
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