二銭銅貨

星の数: ☆良い ☆☆すごく良い ☆☆☆激しく良い ☆☆☆☆超激しく良い ☆☆☆☆☆ありえない

ばらの騎士/MET09-10舞台撮影

2010-01-31 | オペラ
ばらの騎士/MET09-10舞台撮影

作曲:R. シュトラウス、演出:ナサニエル・メリル
指揮:エド・デ・ワールト
出演:ルネ・フレミング、スーザン・グラハム、
   クリスティーネ・シェーファー、
   クリスティン・ジグムンドソン

スーザン・グラハムの透明でクリアなメゾ、
ルネ・フレミングの透明でクリアなソプラノ、
この2人がベッドの上でちちくりあってる。
とても、のんびりとした気分。
ゆっくりと、なめらかに、優雅に。

女装はしていても青年の若々しい瞳の輝きを失わないスーザン・グラハムの表情が素晴らしく、濃い緑、白、ピンクのそれぞれの衣装が良く似合う。特に白がその無邪気さ、純潔さを表現していた。ルネ・フレミングは揺れ動く元帥夫人の気持ちを細かく丁寧に描いていた。スーザン・グラハムをクリスティーネ・シェーファーに奪われて本当に悔しそうだった。2人の二重奏を残して舞台を去るのだから。クリスティーネ・シェーファーのゾフィーは世間知らずの幾らか神経質そうなお嬢様。

クリスティン・ジグムンドソンは、すけべ親父のエロ男爵。その巨漢が能天気な感じ。でも悪い奴じゃ無い。しっかりと舞台の土台になっていた。それでもこいつは女声3人からは切離しておきたい人物だ。

オレンジのゾフィー、濃い緑のオクタヴィアン、薄い紫の元帥夫人。色のアンサンブル、歌のアンサンブルが素晴らしい。抜けるような、ずっと向こうの遠い空のかなたに抜けていくような、透明で美しい純潔を表現する印象。

それでも、やっぱり、カンカンは、あんなに恋の真心を熱心に口にしていたのに、結局は、そっちの恋に落ちてしまうのだ。分かってはいても、理解はしていても、それでも、それでも、気持ちの中は張り裂けそうだ。

恋は浮気ものだ。

10.01.30 東劇
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ホフマン物語/MET09-10舞台撮影

2010-01-29 | オペラ
ホフマン物語/MET09-10舞台撮影

作曲:オッフェンバック、演出:バートレット・シャー
指揮:ジェイムズ・レバイン
出演:ジョセフ・カレーハ、ケイト・リンゼイ、アラン・ヘルド
   キャスリーン・キム、アンナ・ネトレプコ
   エカテリーナ・グバノヴァ

ショッキング・ピンクのオランピアがキム。
淡い薄いピンクのアントニアがネトレプコ。
濃いワインレッド気味のピンクのジュリエッタがグバノヴァ。
三者三様のピンクの衣装、三種のソプラノ、メゾ。
メカニカルで数学的、愉快で楽しいオランピア。
情熱的で純粋なアントニア。
恋愛地獄の奥深さ、大人の恋の爛熟を見せるジュリエッタ。
3つの恋にトチ狂う詩人のホフマンがジョセフ・カレーハ。
声のパワーと美しさがこの恋でヨレヨレの詩人を引き立てていた。

幕間インタビューで演出のシャーが「フェリーニの8・1/2やカフカを参考にした」というコメントが印象的で、確かにそういう演出になっていた。この演出を見て、8・1/2はそう見るのかと少し得心した。

この舞台の芯はケイト・リンゼイのミューズとニクラウスにあって、その聡明で理知的なメゾが素晴らしかった。恋にヨレヨレ、酒にフラフラ、恋と酒に酩酊のホフマンの行動に幾分当惑しながらも、やさしいニクラウスのホフマンへの気持ち。いたわる気持ち。こういうのをプラトニック・ラブと呼ぶのかも知れない。天使の人への愛だ。知性がある。ケイト・リンゼイへの幕間インタビューによると、このニコラウスはデートリッヒを意識した演出になっていたらしい。

オランピアのキャスリーン・キムの歌はパワーとメリハリがあり、メカニカルで冗談半分なコロラトゥーラが、コミカルでロボット・ライクなこれもメカニカルな振りに同期して、ドピンクな衣装と、かわいらしい金の王冠、低い背丈が、良くオランピアに似合っていた。ちょっと日本のアニメのコスプレのような印象だった。アリアの後、カーテンコールの時に観衆の拍手喝采を受けていた。

10.01.23 東劇
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トゥーランドット/MET09-10舞台撮影

2010-01-28 | オペラ
トゥーランドット/MET09-10舞台撮影

作曲:プッチーニ、演出:ゼフィレッリ
指揮:アンドリス・ネルソンズ
出演:マリア・グレギーナ、マルチェロ・ジョルダーニ
   マリーナ・ポプラフスカヤ、サミュエル・レイミー

水色の衣装で覆われたトゥーランドットは恋愛を信じない、頑なで潔癖な女性。男を近づけない。触れさせない。身も心も許さない。心が、その熱い気持ちが、ぶ厚い氷で覆われています。

カラフは突然、恋に墜ち、無謀な賭けに出て、ナゾナゾ3題に挑みます。そうして勝利して、トゥーランドットに無理矢理の口づけをします。ああ、そうすると何とトゥーランドットを覆っていた氷が融けて、そうして紅蓮に燃える恋の炎が心の中に透けて見えるではありませんか。そうです、トゥーランドットの心はカラフを一目見た時から恋に墜ちていたのです。本人も周囲もカラフも作家も観客も誰も気づいていなかったことです。

マリア・グレギーナのトゥーランドットは繊細で強力。マルチェロ・ジョルダーニのカラフとマリーナ・ポプラフスカヤのリューは誠実な印象。演出は豪華で金色が基調。ピンポンパンの踊りや歌が、カラフルにゆっくり大きく動いて印象的だった。皇帝アルトゥームは高齢のチャーリー・アンソニーで幕間のインタビューを受けていた。カラフの父のティムールはサミュエル・レイミー。

10.01.16 東劇
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渡り鳥いつ帰る

2010-01-27 | 邦画
渡り鳥いつ帰る ☆☆
1955.06.21 東宝、白黒、普通サイズ
監督:久松静児、脚本:八住利雄、原作:永井荷風
「春情鳩の街」、「にぎりめし、「渡り鳥いつかへる」
出演:田中絹代、森繁久彌、久慈あさみ、淡路恵子、桂木洋子
   高峰秀子、岡田茉莉子、太刀川洋一、水戸光子、織田政雄

田中絹代は色街のおかみさん。
元気いい。
火箸2本を手で掴み、
キリキリと火鉢に突き立て、
森繁久彌の浮気に気を揉んでいる。
その家で使われている若い娘の淡路恵子はアプレで、
遊びに森繁久彌を誘惑する。
鳥かごの小鳥2匹を可愛がっている、
その森繁久彌は別れた妻との間に出来た娘が忘れられないが、
それでも心の奥底では、
その妻の水戸光子が忘れられないのかも知れない。
その水戸光子は律儀な中年女性で、
旦那が織田政雄。
その夫婦の知り合いが岡田茉莉子で流しの歌うたい。
仲間の1人が太刀川洋一。
岡田茉莉子が渡そうとする手紙の相手が
田中絹代の店で働く桂木洋子で、病気持ち。
その心中しようとする相手が、
時計職人で淡路恵子にぞっこんの加藤春哉。
桂木洋子の同僚の久慈あさみも病気がちで、しかも子持ち。
その母が浦辺粂子で娘が二木てるみ。
久慈あさみの病気療養中に、
この店のやっかいになる、
調子のいい娘が高峰秀子。
現代っ子で現金な、
北海道から出てきたばかりの娘だ。

いくつものエピソードをばらばらにしてつなぎ合わせた映画。
「パリの空の下セーヌは流れる」と同じ手法。

10.01.16 神保町シアター
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女の園

2010-01-14 | 邦画
女の園 ☆☆
1954.03.16 松竹、白黒、普通サイズ
監督・脚本:木下恵介、原作:阿部知二
出演:高峰三枝子、高峰秀子、久我美子、岸恵子、田村高広
   金子信雄、山本和子

硬派な社会派ドラマとメロドラマの二本立て。高峰秀子は学園紛争には我関せずとばかりにメロドラマに一直線。相手役は田村高広。千路に乱れる心の内を、茫然とした表情の中に演じていた。芯がなくてナヨナヨしている。

久我美子と岸恵子がいつもと違うと感じだ。
自己主張がしっかりとしていて、ナヨナヨした所がない。
にんじんクラブを作るほどの人達だから、
むしろこういう自尊心の高い役のほうが自然なのかも知れない。
眼の鋭さ、姿勢のまっすぐさ、端正さが良い。

高峰三枝子は悪役で損な役だけれども、複雑な胸のうちをきっちり演じて映画のベースを支えていた。

硬い映画のわりに女優陣がすごく豪華だ。

10.01.10 神保町シアター
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