二銭銅貨

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イオランタ/新国立劇場オペラ研修所試演会2019

2019-07-07 | オペラ
イオランタ/新国立劇場オペラ研修所試演会2019

作曲:チャイコフスキー、指揮:鈴木恵里奈
演出・美術:ヤニス・コッコス
ピアノ:髙田絢子、原田園美

イオランタ:井口侑奏、ボデモン:増田貴寛
レネ王:湯浅貴斗、ロベルト:井上大聞
エブン=ハキヤ:仲田尋一、マルタ:十合翔子
アリメリク:鳥尾匠海、ベルトラン:高橋正尚
ブリギッタ:平野柚香、ラウラ:北村典子

誰かが必ず蹴とばしそうな具合に直径約5メートル程度の円に沿って短いローソクが等間隔に並べられている。おそらくLEDだと思うけれども灯が電灯色で灯っていて、目を動かすと赤い色が分離して見える。その中央に、天井からベニヤ板のような薄さのオブジェが釣り下がっている。このオブジェは糸杉のような形をしているが色はくすんだ濃い黄色。舞台にはあと30cm四方の四角いオブジェや、小さなベンチがあるだけ。色は黒。客席から舞台へ向かって入って行く所に、確か「不得侵入」と丸い円の中に大きく書かれている。またその横の、いつもオケピになるところには客席が2列あり、その列の後ろが通路になっていた。そこを歌手が通ることがある。2階3階席も舞台側に入りこんでいる。舞台横の2階席と「不得侵入」のところに歌手が立ってレディタティーボのやり取りをする場面もあった。舞台上手にピアノが2台、縦に並べて設置され、その手前側に指揮者が配置されていた。黒いカーテンでピアノと舞台は仕切られているが、指揮者のところはさえぎられていなくて、指揮者は目の前のピアノと舞台を両方見ることができるようになっていた。舞台奥は黒い壁で、上手側に細長い矩形の出入り口がある。黒い遮蔽物が上から降りて来てその出入り口が開閉するようになっている。衣裳は全員黒っぽい基調のシンプルなデザイン。イオランタだけが白のドレス。舞台装置が何も無いと、より一層人物の内面があらわにになるので役者や演出家の技量がものをいう。その意味で歌手陣にとっては難しいプロダクションだったと思う。

1時間30分程度の短いオペラで休憩なしで上演された。内容は単純だが、視覚とは何か、生きるは何か、教育とは、学習とは何かなど、色々と考えさせる内容を持っている。

井口は美しい声。増田は堂々としたテノール。湯浅、高橋は硬質な感じのバリトン。仲田は柔らかい感じ。井上は軽快な感じだった。十合は低い音がしっかり出る硬質なメゾ。ドイツ的な雰囲気が似合う声で、見た目もワーグナーとかが似合いそうだ感じた。前の終了公演ではメゾ役が無かったのでエルビーラを歌っていたけれど、今回は声が全然違う。

演奏はいつも通り、美しさと迫力を兼ね備えて大変良かった。冒頭で、楽師役がバイオリンを弾くふりをして、ピアノがその旋律を奏でるという場面があった。さすがにバイオリンの雰囲気は出ないけれど、弦楽器と打楽器の違いが良く分かって面白かった。去年まで出ていた石野真穂は今回は出てない。別の日に星和代の名が演奏者としてあがっていた。

最後のクライマックスに合わせて舞台とピアノを隔てていたカーテンが開き、奥の出入口も横に開いて夜明けの星の瞬きが見えるようになる。いままで隠蔽されていたものがあらわになるという仕掛けがイオランタの心理に同期していた。

LEDのろうそくを蹴とばさないように皆気を付けていたが、ロベルトはちょっとけつまずき、レネ王はろうそくを倒していた。あえて、ろうそくをけつまずくように配置したのは、何らかの演出意図なのだろうか?

良いプロダクションだった。

19.06.30 新国立劇場、小劇場
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