二銭銅貨

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点と線

2009-08-13 | 邦画
点と線 ☆☆
1958.11.11 東映、カラー、横長サイズ
監督:小林恒夫、脚本:井手雅人、原作:松本清張
出演:高峰三枝子、山形勲、南広、加藤嘉

ずっと持続する緊迫、
列車と時刻表と陰謀、
錯綜する事実、
錯綜する人々、
ワル、巨悪、
松本清張。

山形勲はワル。
ワルぶりが、てかてかしている。
実業家で官僚を手玉に取っている。
その官僚が通産の局長なのに、
オドオドした三島雅夫。

高峰三枝子はお姫様的ご夫人。
お美しく、
サスペンスにはちょっと、
もったいない。

南広は若くてアグレッシブな新進の刑事、
加藤嘉は弱々しい感じの刑事だけれども、
老練であなどれない雰囲気。

情死が出発点で巨悪が背景。

09.07.18 ラピュタ阿佐ヶ谷

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女の歴史

2009-08-12 | 成瀬映画
女の歴史 ☆☆
1963.11.16 東宝、白黒、横長サイズ
監督:成瀬巳喜男、脚本:笠原良三
出演:高峰秀子、賀原夏子、星由里子、仲代達矢、宝田明、山崎努

一代記。
高峰秀子のために書き下ろされたかのような女の半生を描いたもので、回想シーンが多用されている。しかし、それほど煩雑な使われかたでは無く効果的で分かりやすかった。

賀原夏子の、のったりした感じが、
高峰秀子のちょっとピリピリした気分と良く調子が合っている。
この人たちの二人芝居とも言える映画だ。

雨、
外は雨、
暗い部屋の中で、
左奥に茫然自失の高峰秀子、
右手前に離れて賀原夏子。
賀原夏子は居眠り。
長い、長い激流の回想からフッと戻ると、
部屋は森閑として、
外にはザッザッと雨の音。

団地に行く道すがら、
雨。
ザーザー降りの大雨で、
傘から落ちる雨のしずくが長く太く糸を引いている。
そんな中を黒い傘の高峰秀子と、
明るい色の傘の星由里子の気持ちが交錯する。
長く冷たい厳しい雨。

最後は明るくライトな感じで終わる。
映画全体もそれほど重苦しくは無く、軽い感じもある。
笠原良三のタッチなのでしょう。
全体に良く構成された脚本だと思った。

草笛光子はほんの少しだがパンパン娘役で、
そうとう崩したメークといでたちで出てくる。
またしても高峰秀子の敵役だ。
ワルの感じが良く出ている。

加東大介は定食屋のおやじ。
こちらもちょっとだけだが、
その顔を見るなり、
私はホッと一安心。

09.08.02 神保町シアター
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噂の娘

2009-08-11 | 成瀬映画
噂の娘 ☆☆
1935.12.22 PCL、白黒、普通サイズ
監督・脚本:成瀬巳喜男
出演:千葉早智子、梅園龍子、伊藤智子、汐見洋、御橋公

酒屋の話。
きりっとした娘の千葉早智子は姉で和服が似合う。
現代っ子の梅園龍子は妹で洋装で、
ちょっとわがまま。

鷹揚な隠居のじいさんが汐見洋で、
まじめな父が御橋公で、養子で当主。
その妾が伊藤智子で人の良さそうな感じ。
向かいの床屋の若いおやじが三島雅夫。

いろいろな事件と人々の思いが錯綜する。
入れ違う。

コンパクトに良くまとまっている映画。

09.08.01 神保町シアター

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妻よ薔薇のやうに

2009-08-10 | 成瀬映画
妻よ薔薇のやうに ☆☆
1935.08.15 PCL、白黒、普通サイズ
監督・脚本:成瀬巳喜男、原作:中野実「二人妻」
出演:千葉早智子、大川平八郎、丸山定夫、英百合子、伊藤智子
   堀越節子

二人妻と言うのは東京の正妻と、
田舎ずまいの妾のこと。
おとうさんは妾のほうが居心地がいいらしく、
信州の田舎に住んでいて、
東京にはまったく帰って来ない。

千葉早智子は東京の正妻の娘で、
くったくが無くて明るい現代娘。
堀越節子は田舎の妾の娘で、
ちょっと陰があるけれど、健気で地道な感じ。
ぼーっとした感じの正妻が伊藤智子で、
思いやりがあって律儀な妾が英百合子。
ちょっととらえどころのない父親が丸山定夫で、
千葉早智子の彼氏が大川平八郎。

全体に明るく、軽いタッチだ。

おじさん役の藤原鎌足がヘタな義太夫をうなる場面がある。稽古本を数冊持って来て、その一番上に「壷坂霊験記」。これを語っていたようだ。壷坂は有名な演目で、若い盲目の按摩と妻の夫婦愛の物語。これをこの映画の夫婦愛についてのテーマに重ねているのだろう。

壷坂は明治時代の三味線の名人だった団平の作曲で、もともとあった浄瑠璃に団平の妻のお千賀が輔筆したもの。この夫婦の物語を芸道ものとして映画化したのが溝口健二の「浪速女」(1940)。田中絹代がお千賀をやっている。今はフィルムが消失していて見ることができない。

この映画のおとうさん役の丸山定夫は終戦まぎわに移動演劇隊で巡業中に広島で被爆して死亡した「さくら隊」のリーダ。新藤兼人のセミドキュメンタリー「さくら隊散る」に出てくる。通称ガンさん。無くなったのは16日だったようなので8月6日は命日ではありませんが、その日にも神保町シアターではこの映画の上映があった。

09.08.01 神保町シアター
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夫婦

2009-08-02 | 成瀬映画
夫婦 ☆☆
1953.01.22 東宝、白黒、普通サイズ
監督:成瀬巳喜男、脚本:井手俊郎 水木洋子
出演:上原謙、杉葉子、三国連太郎、木匠マユリ、豊島美智子

あい変わらず口数が少なくて、
前後左右のはっきりしない、
しっかりしない、
ご亭主が上原謙。
かいがいしく、しっかりものの妻が杉葉子。
これに最近、妻を無くしたばかりの三国連太郎が、
なにか書生気分のだらしなさと一途さでからむ。まとわりつく。
何かとボーっとした感じの上原謙だが、
それでも嫉妬の嵐、
怒りの渦が、
心中にワサワサワサワサと湧き起こる。
巻き起こる。

ベンチに腰をおろした杉葉子は、
せっぱつまって沈痛な心持ち。
子を産むかどうするか?
どうしても産婦人科には行けない。
経済的に不可能だからとて、
どうしてもこの子は産みたい育てたい。
経済的に不可能だからと、
そばにボソッと立つ上原謙の顔には困惑の表情。
サワサワと風にうるさく騒ぐ公園の木々の枝、葉。
冷たく強い風。
貧乏な夫婦

「帰ろう」と上原謙。
「えっ」と驚きの目で上原謙を見上げる杉葉子のクローズアップ。
柔らかい、
白と黒の画像の中に、
連れ添って帰る姿のこの夫婦。

杉葉子の妹役が岡田茉莉子で元気良くてパッと明るい。
映画が引き締まる。

09.07.25 神保町シアター
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