二銭銅貨

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ランスへの旅(日本オペラ振興会)2019

2019-09-28 | オペラ
ランスへの旅(日本オペラ振興会)2019

作曲:ロッシーニ、指揮:園田隆一郎
演出:松本重孝、美術:荒田良、衣裳:前岡直子
演奏:東フィル
出演:
コリンナ (詩人):光岡暁恵
メリベーア侯爵夫人 (ポーランド出身):富岡明子
フォルヴィル伯爵夫人 (パリジェンヌ):横前奈緒
コルテーゼ夫人 (女主人):坂口裕子
騎士ベルフィオーレ (フランス):糸賀修平
リーベンスコフ伯爵 (ロシア将軍):山本康寛
シドニー卿 (イギリス大佐):小野寺光
ドン・プロフォンド (骨董収集家):押川浩士
トロンボノク男爵 (ドイツ少佐) :折江忠道
ドン・アルヴァーロ (スペイン大公):上江隼人
ドン・プルデンツィオ (医者):田島達也
ドン・ルイジーノ (フォルヴィル夫人いとこ):曽我雄一
デリア (コリンナが保護者):中井奈穂
マッダレーナ (女中頭):髙橋未来子
モデスティーナ (フォルヴィル夫人小間使):田代直子
ゼフィリーノ (世話人):有本康人
アントーニオ (ボーイ長):田村洋貴

女主人とフォルヴィル夫人のアリアのあと、決闘になりそうな場面での六重唱「私はいかなる危険も恐れない」がなかなかすごいと思っていると、2階の窓辺でハープを伴ってのコリンナの独唱が始まる。伴奏はハープのみ。美しい。みんな決闘のことなんて忘れてしまう。続いてシドニー卿のアリア。途中にある小規模な女性合唱が美しい。さらに続いてコリンナとベルフィオーレのコミカルな重唱がある。その後、プロフォンドの各国なまりっぽい歌のあとに14重唱が来て休憩。再開後、メリベーア夫人、リーベンスコフ伯爵のアリアと重唱があって、パーティー場面に移る。ここでも最後に歌うのがコリンナで、美しい。初演でのコリンナはジュディッタ・パスタ。

この公演でのコリンナは光岡。美しく透明。クリーンでクリア。白の衣裳が良く似合う。ハープの音色が良く似合う。

富岡は低い声が安定して頼もしい。ノルマの時のアダルジーザを思い出す。横前は高く強い声でコロラトゥーラも良い。芝居は若いおねえさんな感じ。坂口も安定している。その他、全員アジリタとかがしっかりしていて安心して聴けた。

演奏は美しく安定していて、良く歌にアンサンブルしていた。

美術衣裳はカラフルで楽しい感じ。

2015年のプロダクションと同じ。
二期会、新国が共催で合唱団は3者合同。ソリストに関しては二期会から3名が参加。上江は二期会から藤原に移ったらしく、この時点では藤原団員になっている。藤原の多くの歌手と二期会の富岡、指揮の園田はペーザロのアカデミア参加者。

宿屋の名前は金の百合亭。ほとんどコンサートに近いオペラ。歌、音楽をたっぷり楽しめる。金の百合亭。

19.09.08 新国立劇場オペラパレス
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トスカ/ハーモニーホール2019

2019-09-14 | オペラ
トスカ/ハーモニーホール2019

作曲:プッチーニ、指揮:瀬山智博
演出:古川寛泰
舞台装置:鈴木俊朗
演奏:テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ
出演:トスカ:中村真紀、カヴァラドッシ:宮里直樹
   スカルピア:上江隼人、アンジェロッティ:妻屋秀和
   堂守:志村文彦

サンタンジェロの城壁の上部の凸凹が舞台上に配置されていて、これは1幕目2幕目では目立たないように工夫されている。1幕目では奥に水色の大きな柱のようなものが十字にセットされていて、横の柱がやや斜めにかしいでいる。その手前に小さな質素な祭壇がある。テーブルに白い布を掛けた程度のもの。トスカとカヴァラドッシが口論をしている最中に合唱団が次々とやって来て祭壇にお祈りをする。出番の少ない合唱団への配慮があったかも知れない。舞台上手に人の身長ほどのおそらく子供を抱いた白い聖母像がある。トスカは花束を持って登場し、この像にお供えする。下手にはカラバドッシが製作中の絵と階段のついた大きな製作台。テデウムは合唱団が出て来て勢揃いで歌う形式。スカルピアは中央前面で歌う。2幕目は、中央に書斎風のテーブルと長椅子を設置して、下手に骨組みだけのドアを置いた簡単なもの。上手のカーテンに白い格子状の模様をプロジェクターで映し出していた。3幕目の舞台装置はサンタンジェロの屋上。装置としては、この構築物しか作っていなくて、これを全幕通しで使っていたようだ。奥の壁面に大天使ミカエラとバチカンのシルエットがプロジェクターで映し出されている。セットとしては、小さな書き物の机がある程度。羊飼いの歌の場面ではジャラジャラと鈴の音が聞こえて来たような気がした。

visi darte visi damore の時は全体に照明が落ちて、トスカにスポットライトが淡くあたるような照明デザインを使っていた。歌の後半ではやや明るくなる。スカルピアの方もやや明るくなり、スカルピアはその俯いていた顔をやや上げて会場の方を無表情で見つめるようにしていた。歌は抑え気味の歌唱で、祈るような歌い方だった。拍手はここだけ。

スカルピアの死に方はリアルっぽい感じ。地味に断末魔を表現していた。死に方がいい。死に絶えたスカルピアのご遺体の前に蝋燭を2本、胸に十字架を置くシーンは型どおりだったけれども、良かった。どうしてトスカにあんなことをさせてしまったのかと悲しい気持ちになる。

中村は強いソプラノで声も美しく、ドスの効いた低い声も出る。芝居は堂々としてディーバらしい感じだった。赤のドレス。宮里は高い声が楽々と響き渡る気持ちのいいテノール。2つのアリアがとても短く感じた。この2つのアリアが終わった後は、即座に次に続けるようにしていたので拍手はなかった。カヴァラドッシの芝居も気持ちが入っていて良かった。愛と革命に燃えている。スカルピアは悪人だ。出刃包丁のような鈍い切れ味。さっぱりした感じではあるが、本当にファシズムっぽい悪がにじみ出ていた。でも、声は綺麗だし、良く通って安定している。妻屋はいい声を聴かせていた。体格が良いので舞台せましと走り回るのが印象に残った。志村の声も良い。綺麗で声量がある。芝居もいい。妻屋と志村のおかげで、この2役に結構出番があるし、見どころもあると分かった。ハイレベルな歌手陣のキャスティングはオーディションの結果らしい。普通の市民オペラでは考えられないレベルが揃った。

低予算で質素な舞台装置ではあったが、美しく迫力に満ちた演奏が十二分にカバーしていた。特に金管が安定していて良かった。美しい弦と木管と一緒にテデウムをはじめとするクライマックスを大きく美しく盛り上げた。

全体としてハイレベルな良いプロダクションになった。
19.09.01 ハーモニーホール
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椿姫/MET18-19舞台撮影

2019-09-08 | オペラ
椿姫/MET18-19舞台撮影

作曲:ヴェルディ、指揮:ヤニック・ネゼ=セガン
演出:マイケル・メイヤー
美術:C・ジョーンズ、衣裳 S・ヒルファーティ
出演:ヴィオレッタ:ディアナ・ダムラウ
   アルフレード:フアン・ディエゴ・フローレス
   ジェルモン:クイン・ケルシー

悲しげなメロディーを奏で、ゆっくりと始まる序曲は、やがて少し軽やかな美しくゆったりとしたメロディーに変わる。静かにこの序曲が終わると、さあ幕開けだ。

アルフレードがヴィオレッタに紹介され、しばらくパーティー参加者の会話が続き、そして乾杯の歌。アルフレードが詩を披露するという趣向なので、男声先、女声後。その後、合唱。その合唱団が退いて、アルフレードとヴィオレッタは二人きりになる。少し会話した後、アルフレードが口説きのフレーズを歌う。
Di quell amore che palpito.
引き続きヴィオレッタとの重唱。ヴィオレッタは最初は冷たくあしらうが、最後に花を渡す。アルフレードはルンルンになって帰る。ヴィオレッタは何故かうずく心に動揺して歌いだす。
E strano, e strano.
でも、そんなわけない、と、緩から急へテンポが変わる。
follie, follie.
そこからさらに明るい気分になって、
Sempre libera deggio, Follegiar di gioia in gioia.
と歌いだすが、途中、アルフレードの口説きのフレーズが舞台裏から聞こえてきて、ah とか amore とか声が出てしまう。でも、最後は不安と期待が一緒になって激しく燃え上がり、そして幕。

郊外のヴィオレッタの家で、アルフレードの短いアリアの後、二人のやり取りがあって、アルフレードが退場したあとにジェルモンが訪ねてくる。かなり激しいやり取りのあと、ほぼ重唱と言えるやり取りが続く。まず最初はゆっくりと
non sapete quale affetto
から始まる激しい葛藤。それが、
cosi alla misera
へつながり、さらに抜き差しならない感じになるけれど、その後半に一転、覚悟を決める。
Ah! dite alla giovine, Si bella e pura から始まる美しくゆったりとした歌が哀しく歌われる。ジェルモンに迫られて、覚悟を決める、ここが、このドラマの芯。

ヴィオレッタが可哀想。

この後、Siate felice addioまで劇的なテンポの早い重唱が続く。全体としてかなり長大な緩急の二重唱とも言える。

二人が退場した後、アルフレードに続いてジェルモンが登場し、若干の口論の後、プロヴァンスの海と陸が歌われ、再び口論となって二人退場となり、次のパーティー会場の場面に移る。

パーティー会場では、ジプシー風に続き闘牛士風の舞曲が演奏される。バレエを想定したもののようだ。続いて、不気味にリズミカルな合唱があり、全員退場の後、ヴィオレッタとアルフレードの口論があって、その最後にアルフレードがヴィオレッタに札束を叩きつける。ジェルモンが激怒した後に、
Alfredo, Alfredo.
と、ヴィオレッタがゆったりと美しく歌い始める。ここは合唱付の多重唱なのだが、あまりに美しく、それはあたかもヴィオレッタのアリアのような印象だ。でも最後は合唱が盛り上がって、幕。

病気の部屋でヴィオレッタとアンニーナのやり取りの後、手紙の朗読がある。演奏はアルフレードのDi quell amore che palpito。朗読の後、E tardi と激怒して、Attendo. Attendo と続く。最初は激して歌い始め、一呼吸後に、ゆっくりと
Addio del passato (過ぎし日よ、さようなら)
が美しく始まる。うっとりとする歌。この後パリの祭りの音がバンダで入って、さらに、アルフレードが飛び込んできて、美しく強力な二重唱が始まる。最期は、ジェルモン、アンニーナ、医者もそろってその場に立ち会う。

突然、ヴィオレッタが朗読調となり、痛みが消えた旨を叫ぶ。

聖母被昇天(Assunzione di Maria)

ダムラウは声が美しく強く、なおかつ芝居も良い。どちらかと言えば芝居を激しく集中してやっているのに声がまったく乱れない。演出もディテールにこだわった細かい演出だった。フアン・ディエゴ・フローレスも良い芝居だった。声は問題なし。クイン・ケルシーはやさしい感じのお父さん。やはり声に安定感がある。演奏は強力。

セットは背の高い壁があ使われ、その全面にツタのようなデコレーションが施されている。全幕、この壁が使われるが照明でまったく違う雰囲気を出していた。衣裳も豪華で、全体に豪華絢爛なオーソドックスな美術だった。

ヤニック・ネゼ=セガンがMET音楽監督就任後、最初に指揮した公演

19.08.16 東劇
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フィガロの結婚/MET14-15舞台撮影

2019-09-07 | オペラ
フィガロの結婚/MET14-15舞台撮影

作曲:モーツアルト、指揮:ジェイムズ・レヴァイン
演出:リチャード・エア、美術・衣裳:Rob Howell
出演:フィガロ:イルダール・アブドラザコフ
スザンナ:マルリース・ペーターセン
伯爵:ペーター・マッテイ
伯爵夫人:アマンダ・マジェスキー
ケルビーノ:イザベル・レナード

セットは骨組みだけの建物で、舞台が回るようになっているので各部屋への場面転換がスムースにできる。1920年~30年頃の時代を想定していて、その頃のファッションが衣裳として使われた。いくらか退廃的な印象の演出だった。

イザベル・レナードがズボン役にぴったりの印象で良かった。声は低い声も高い音も美しく、しっかりとしたメゾだった。その他の歌手もしっかり安定感のある声だった。

スピード感のある勢いの良い演奏だったように思う。

19.08.15 東劇
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蝶々夫人/Festival Puccini2019

2019-09-01 | オペラ
蝶々夫人/Festival Puccini2019

作曲:プッチーニ
指揮:Alberto Veronesi
合唱指揮:Roberto Ardigo
演出:Stefano Mazzonis di Pralafera
衣裳:Fernando Ruiz
美術:Jean-Guy Lecat
照明:Fernando Ruiz
演奏:Orchestra del Festival Puccini
合唱:Coro del Festival Puccini
出演:
蝶々さん:大村博美、ピンカートン:Stefan Pop
シャープレス:Bruno De Simone、スズキ:Annunziata Vestri
ゴロー:Marco Voleri

天気予報通り午後6時頃から雷雨となり、雨風ともに強く、今夜の屋外オペラの開催が危ぶまれた。主催者側は開演時刻までに中止にすることがなく、また開演時刻後に中止した場合は払い戻しがない。要するに中止でも払い戻しはない。これはべローナの場合も同じ。覚悟は出来ている。でも、にわか雨だ。これはやむかもしれない。

8時頃に小降りとなり、風は強いもののほとんど雨があがる。湖側から会場へ直接行ける小さな橋は閉鎖されていたが、陸側の道から会場に人々が集まり始めている。客席はまだオープンしていないので、ホワイエはそのうち客で一杯になる。しかし9時頃になると再び雨が降り始め雨足が強くなる。風も強い。9時15分開演は延期された。主催者側によると延期の最長は90分。観客のほとんどは辛抱強く待っている。座り込んでいる人も多い。にわか雨だし。これはやむかもしれない。

10時過ぎる頃に雨があがり、10時30分頃に開演となった。舞台ではスタッフが水をかきだしたり、準備にあわただしく働いている。風がやや強くテーブルにかけられた布が大きくたなびき、テーブル横の、ビーチパラソルのような大きな傘は閉じられている。オケピでは、べローナでもそうだったように、皆、洗濯挟みで楽譜を押さえている。でも、終盤近くで風が強まった時には、楽譜がめくれてしまったり、落ちたりすることもあった。

公演開始からしばらくは、風も弱まり安定していたが、終盤になると再び風が強くなりだす。オケピの演奏中でない人たちは、時々、空を見上げている。気が気でない。ポツ、ポツと2、3滴、雨粒が落ちてくる。大丈夫かな?
でも、大丈夫。最後まで終わった。カーテンコールもやった。団員も雨が降り出しそうな中、楽器をしまってカーテンコール中に無事撤退。全部やれた。

奇蹟。聖母さまのおかげ。かな。

開幕は普通の蝶々さん。セットも金閣寺のような形の質素な形の屋敷。芸者衆も蝶々さんも見た目は普通の和服。ところが2幕目から雰囲気が、がらりとかわる。蝶々さんはややショートカット気味のヘアスタイルで洋装。白ぽいブラウスに薄いくすんだ緑、無地のシンプルなロングスカート。登場人物も、スズキとボンゾを除いて皆洋装。蝶々さんの所作も西洋風。長崎でなくてイタリアのどこかの港街のよう。

子供は出て来ない。乳母車にのせて観客には見せない。蝶々さんが死ぬ間際、舞台上手にピンカートン、ケイト、シャープレス、スズキがいて、乳母車に乗せていた人形がばらばらになる。同時に頸動脈を切った蝶々さんが家の中から飛び出して来てドウと倒れる。ピンカートンがバタフラーイと叫ぶ。

ベリズモだ。蝶々さんってベリズモだったんだ。

面白いと思った。多分もう二度と見られないと思うけど、落ち着いた環境で、もう一度見てみたいと思った。

蝶々さんは、声がやや低めに聞こえるけれど、大音量の中でも負けない声量だった。何よりもベリズモっぽい芝居と歌が良かったと思う。スズキはやや神経質そうな芝居がこの演出に合っていた。シャープレスも神経質そうな小柄なおじさんだったが、声に迫力があった。ピンカートンは堂々とした感じ。

演奏は悪環境の中、破綻なく最後まで行くことができた。

とにかくワイルドな公演だった。終演後しばらくして雨になった模様で、翌朝は雨。 雨の中、会場のいくつかの旗の中央にタイトルロールの国籍を示す日の丸がはためいていた。

このプロダクションはベルギーのOpera Royal de Wallonie-Liege との共同新制作らしい.Wallonie-Liegeの9月の公演では佐藤康子がタイトルロールを歌う予定。Alberto Veronesiと大村博美は2017年や今年前半にラトヴィアでも一緒に出ている。

会場近くのプッチーニの別荘で今は記念館になっている所に三浦環のサイン入りのブロマイドあるいは絵葉書が額に入れて飾ってあった。「Al Mio Grande Maestro Giacomo Pucchini Tamaki Miura Milano 1923, 恩愛なるジャコモプッチーニ先生...」と書いてあった。

19.07.27 Gran Teatro All'aperto Giacomo Puccini
65 Festival Puccini (Torre del Lago Puccini)
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