二銭銅貨

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エフゲニー・オネーギン/サンカルロ2014

2014-03-29 | オペラ
エフゲニー・オネーギン/サンカルロ2014

作曲:チャイコフスキー
指揮:John Axelrod
合唱:Salvatore Caputo
バレエ監督:Alessandra Panzavolta
演出・衣裳: Michal Znaniecki
美術: Luigi Scoglio
振付:Diana Theocharridis
照明:Bogumil Palewicz
演奏:Teatro di San Carlo
出演:
オネーギン:Igor Golovatenko
タチアナ: Carmela Remigio
レンスキー:Marius Brenciu
オルガ:Ketevan Kemoklidze
Larina(母): Giovanna Lanza
Gremin(公爵): Dmitrij Beloselskij
Filippevna(乳母): Elena Sommer

白樺の木が何本も天井からぶら下がっているようなシーン、氷で閉ざされたような世界がこの物語の始まり。全幕を通じてこの白樺の木のような柱と氷のイメージがこのプロダクションのモチーフになっていた。白と水色の世界。

演奏はアグレッシブ。アクセルロッドはかなり大きな声で調子をとりながら激しい身振りの指揮だった。指揮者は一段高い位置にいてスポットライトが当たっていた。歌手陣が指揮者を注視しながら集中して歌う姿が良く見えた。音楽は強く激しく、また歌手と楽団のアンサンブルも良かった。舞曲のエネルギーは高く美しく、ワルツのある最初の舞踏会も良かったが、3幕目冒頭のポロネーズとその後に続くエコセーズも元気でエネルギッシュだった。バレエはややコンテンポラリーな感じで、ポロネーズでは曲に合わせて足で水しぶきを上げる振り付けだった。曲に良く合って面白い。

大きな舞台に大きなセット。強力な音楽、合唱はやや合っていないと思う時があったものの、総てが良くアンサブルしていて見事な公演だと感じた。来て、見て、楽しかった。舞曲満載でうれしい。

氷に閉ざされたタチアナの白い衣裳のスカート部分の正面がわずかに真っ赤になっていて、タチアナの燃える情熱を表現している。良い衣裳。最後にオネーギンに誘惑されるタチアナは逃げるようにして舞台を去るが、この演出では、タチアナはとても苦しそうで、この分では結局オネーギンに篭絡されてしまうのではないかと思われた。

カルメラ・レミージョは強いソプラノで手紙のところの長い長いアリアをしっかりと歌いきった。10月の新国立劇場でのドンジョバンニに出演が予定されている。ケテワン・ケモクリーゼは低い声が安定している強いメゾで、若々しいオルガの活発さを軽い感じに性格描写していた。芝居もうまい。この人も来年4月の新国立劇場の運命の力に出演が予定されていて、最近のカルメンにも出演している。出だしの母親と乳母の声は強く安定したニ重唱で、最初から盛り上がりのある良いプロダクションとなった。レンスキーのMarius Brenciuはややおとなしめのテノールで、Igor Golovatenkoはちょっとワルめの迫力のあるオネーギンだった。Dmitrij Beloselskijは出番は少ないながら安定した大きなバスで、そのアリアは拍手喝采となった。

強力で、なによりアンサンブルが良く、また美しかった。

14.03.04 サンカルロ
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セビリアの理髪師/フェニーチェ2014

2014-03-25 | オペラ
セビリアの理髪師/フェニーチェ2014

作曲:ロッシーニ
指揮:Giovanni Battista Rigon
演出:Bepi Morassi
美術・衣裳:Lauro Crisman
演奏:Teatro La Fenice
出演:
伯爵:Giorgio Misseri
バルトロ:Omar Montanari
ロジーナ:Marina Comparato
フィガロ:Julian Kim
バジリコ:Luca Dall’Amico

全体にコミカルな芝居が主体で、音楽がそれに合わせている感じ。セットは古典的な感じであまり場面は動かない。歌手達も芝居に重点を置いて激しく動き回りながらの歌唱だった。小さい劇場であるためか、それぞれ声量があって、また演奏も小編成ながら大きな音が出ていた。ややアンサンブルは悪いと感じた。皆、芝居っけの多い人達だったが、特にベルタ役のGiovanna Donadiniは出番が少ないわりに目だっていたように思う。

マリーナ・コンパラートはこの公演の後、日本でのリサイタルが予定されている人で安定感のある強いメゾ。ロッシーニの早い装飾的な歌を何なくこなしてうまい。芝居も活発でお茶目な感じ。ウナボーチェは演劇的な歌い方だったが安定した低い声で装飾が美しかった。速くても安定している。歌の練習場面でも装飾的な歌を長めに披露して大拍手をもらっていた。

14.03.02 フェニーチェ
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蝶々夫人/カルロフェリーチェ2014

2014-03-24 | オペラ
蝶々夫人/カルロフェリーチェ2014

作曲:プッチーニ
指揮:Valerio Galli
演出:Daniela Dessi
美術:Beni Montresor
衣裳:Alice Montini
照明:Luciano Novelli
演奏:Teatro Carlo Felice
出演:
蝶々夫人:Maria Luigia Borsi
ピンカートン:Fabio Armiliato
シャープレス:Sergio Bologna
スズキ:Renata Lamanda
ゴロー:Enrico Salsi

蝶々さんとスズキが花を集めるあたり、「ある晴れた日に」のメロディ(多分)が使われて一瞬の休止があるところで、舞台下手半分で上からドサッとオレンジ系のカラフルな花びらのようなものが大量に舞い落ちてくる。演奏中にもかかわらず、これに観客が大拍手。

2幕目終わりの静かなコーラスと間奏曲のところでは、舞台の奥に蝶々さん、スズキ、子供の3人が静かに向こう向きに座っている。舞台は暗く、奥がやや濃い透明感のある青で静かに波打っている。小さな3人の像がシルエットになって、蝶々さんの打ちかけは巫女さん衣裳のように見える。SF映画の一場面によう。音楽に調和した静かな場面で、幕間の一瞬の休止のところの大拍手を挟んで同じ場面が続いた。全体に良い美術、演出、プロダクションだと思った。

腕を胸の前で組む中国風の所作や美術、衣裳、結髪にやや中国でも日本でもない幻の東洋の国風の所はあったが、全体に和風の雰囲気は良く出ていると思った。特に後半の舞台奥に映写される襖絵は中々良かった。金箔に黒の大きな梅風の枝に花。小物もある程度和風になっていて、全体にそれほど違和感は無く、良く日本のものを調べているなと感じた。着物を舞台上で着替えるという演出もあった。着物も帯もマジックテープのようなもので簡単に脱着できるようになっていて、スズキが素早く衣装替えを手伝っていた。

金箔の屏風絵の下手いっぱいいっぱいの所に「希望」と漢字が縦書きで大書されている。これが後、自害の場面では屏風の色が白く抜け落ちて「希望」の文字が「死」に変る。屏風の上手部分では小さな赤い多分花びらが膨れ上がり、日の丸のような赤い大きな丸になる。一方、蝶々さんは星条旗を床に広げてその上に座り、そして刃が頚動脈に突き刺さるその瞬間、全画面は真っ赤に染まる。「蝶々さん、蝶々さん」ピンカートンの声は虚しく、幕は閉じられる。

舞台は奥行きも幅も高さもあって大きな空間だった。大きな空間をセットで埋めるのは大変なので、映像をうまく使って大きさを出していた。声も拡散気味で、全体にやや声量不足な印象を受けた。ただ、スズキと蝶々さんは良く声が出ていて、短いけれども花を散らす場面あたりの二重唱は美しかった。スズキのRenata Lamandaは声に張りもあり歌も良く芝居も良かった。やや猫背で神経質そうな所作にちょっとウルサイ感じの年配女性の雰囲気が良く出ていた。蝶々さんのマリア・ルイジア・ボルシは特にその後半は気合が入って良い声になっていたように思う。メイクも和風で、それなりに日本人ぽく見えた。

演奏は元気良く勢いがあって観客からの拍手も盛大だった。

マリア・ルイジア・ボルシは新国立劇場でフィオルデリージとデズデーモナをやったことのある人。演出のダニエラ・デッシーは別の回のタイトルロールで有名なソプラノ。

14.03.01 カルロフェリーチェ
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ランメルモールのルチア/スカラ座2014

2014-03-22 | オペラ
ランメルモールのルチア/スカラ座2014

作曲:ドニゼッティ
指揮:Pier Giorgio Morandi
演出:Mary Zimmerman
美術:Daniel Ostling
衣裳:Mara Blumenfeld
照明:T.J. Gerckens
振付:Daniel Pelzig
演奏:スカラ座
出演:
ルチア:Albina Shagimuratova
エンリーコ:Massimo Cavalletti
エドガルド:Vittorio Grigolo

アルビナ・シャギムラトヴァの出だしはやや低い声に感じたけれども、狂乱の場では高い音がしっかり強力に出て迫力があった。狂乱の場のカデンツはフルートとの掛け合い二重唱。楽しい音楽だった。本作はMETからのレンタルプロダクションで、METの映像で2度見たものと同じ。最後の場面でのルチアの亡霊とエドガルドのイメージは前と同じだけれども、キリストと聖母のピエタ像のような印象だった。またこの亡霊と同じ衣裳の亡霊が最初から出て来るので、ルチアが生きているうちから、その恋愛の怨念が全部の場を支配しているようにも感じた。3度も見てしまったけれども良い演出だと思う。

演奏は元気があって溌剌とし、良く揃って迫力があった。

14.02.28 スカラ座

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オリィ伯爵/東京文化会館(日本オペラ振興会)2014

2014-03-15 | オペラ
オリィ伯爵/東京文化会館(日本オペラ振興会)2014

作曲:ロッシーニ、演出:松本重孝
指揮:デニス・ヴラセンコ、演奏:東京フィル
出演:オリィ:アントニーノ・シラグーザ
   アデール:光岡暁恵、イゾリエ:松浦麗
   ラゴンド:吉田郁恵、教育係:彭康亮
   ランボー:森口賢二

一幕目は淡いパステルカラーの明るい雰囲気の美術。木の緑や青い空。ハケで掃いたような雲が美しく明るい。柔らかい雰囲気で優しい。サイドにベージュっぽい壁、壁の中央が2つに割れて奥と手前に分かれている。床はやや斜めに傾斜している木の床。2幕目も同じ床と壁で、奥が空の景色から城の内部の壁に変る。黄色、茶、白、黒など重い色を多用した衣裳と美術で中世ヨーロッパの絵画を思わせる。重厚。1幕目からは雰囲気ががらりと変る。オリー一行による潜入宴会のオチャラケ音楽の明るさ楽しさとは対照的な背景となっていた。美術は簡素でオーソドックスながら美しく、衣裳は豪華で楽しい。

アントニーノ・シラグーザはロッシーニの快速音楽を軽々と楽しそうに歌っていた。途中で「おもてなし」などの日本語を歌詞に折り混ぜて、観客に受けていた。光岡暁恵は強く美しいソプラノ。松浦麗は低音が強い安定したズボン役。重唱のアンサンブルが良かった。吉田郁恵は安定した低音のメゾで素朴でまじめな感じ。彭康亮も安定したバスで迫力があった。森口賢二は硬質でキレの良いバリトン。重唱でも切れ味の良い声が聴けた。潜入宴会での早口アリアも美しい旋律に乗って鋭く、また楽しそうだった。

掛け合いのような重唱が楽しいオペラで、オリィ伯とイゾリエの重唱、1幕目フィナーレの多重唱、潜入宴会でのコーラスや重唱、オリィ伯とアデールの重唱、主役3人の3重唱などがある。

演奏は緻密で丁寧な感じの演奏で歌に良くアンサブルしていた。

美術:荒田 良、衣裳:前岡直子

02月29日ゲネプロ
   オリィ:アントニーノ・シラグーザ
   アデール:佐藤美枝子、イゾリエ:向野由美子
   ラゴンド:牧野真由美、教育係:彭康亮
   ランボー:柴山昌宣

佐藤美枝子はコロラトゥーラが強く、やや演劇的で情熱的な歌い方。向野由美子はストレートに良く通る高い声のメゾで、ソプラノとの重唱は高い声同士の美しい重唱だった。牧野真由美は迫力のある低い声のメゾで柴山昌宣も迫力のあるスマートなバリトンだった。

14.02.02 東京文化会館
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