二銭銅貨

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ノルマ/オーチャードホール(二期会)2018

2018-03-31 | オペラ
ノルマ/オーチャードホール(二期会)2018

作曲:ベッリーニ、指揮:リッカルド・フリッツァ
演出:菊池裕美子
演奏:東フィル
出演:
ノルマ:大村博美、ポリオーネ:樋口達哉
アダルジーザ:富岡明子、オロヴェーゾ:狩野賢一
クロティルデ:大賀真理子、フラーヴィオ:新海康仁

casta divaはとてもゆっくりと歌われた。この歌をゆっくり歌うのは大変そうだ。大村の低音は安定して強く美しく、高い声も軽々と破綻なく響いた。声量がある強い声。オーケストラの向こうの舞台中央で歌った。

セミステージ形式で、オーケストラは舞台前面、その後方に歌手が歌うエリアがあり、さらにその奥に合唱団が入る構成だった。オーケストラの前には細いエリアがあって、歌手がそこで歌うこともある。美術は無く、照明だけ。背景にプロジェクション・マッピングでガリア地方っぽい森や滝や馬の映像を流していた。

樋口は貫禄のある声で迫力があった。今までの若者風とは違う感じ。富岡は強いメゾで安定していた。迫力もあった。大村との声のコンビネーションも良かった。狩野は安定したバス。

演奏はメリハリのある強い演奏だった。舞台前面だったので各楽器の音が良く聴こえ、また音を強めに感じる故かベルディっぽいと思った。ベッリーニには強さもあるんだ。

ノルマとアダルジーザの重唱は、前半と後半に1づつ。後半は2つが連続しているのかも知れない。後の方が明るいアップテンポな曲。最後のノルマとポリオーネの重唱が綺麗だし聴かせどころだ。

当初予定されていた大隅智佳子は、諸事情により初日に歌った大村に代わった。

18.03.18 オーチャードホール
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イル・カンピエッロ/新国立劇場オペラ研修所公演2018

2018-03-24 | オペラ
イル・カンピエッロ/新国立劇場オペラ研修所公演2018

作曲:フェッラーリ、演出:粟國淳
指揮:柴田真郁、演奏:新国立アカデミーアンサンブル
美術:横田あつみ、衣裳コーディネーター:加藤寿子

出演:
ガスパリーナ:宮地江奈
ファブリーツィオ(ガスパリーナ父):清水那由太
ルシエータ:砂田愛梨
ドナ・カーテ(ルシエータ母):水野優
アンゾレート(ルシエータ婚約者):氷見健一郎
ニェーゼ:吉田美咲子
ドナ・パスクア(ニェーゼ母):濱松孝行
ゾルゼート(ニェーゼ彼氏):荏原孝弥
オルソラ(ゾルゼート母):十合翔子
アストルフィ(旅の騎士):高橋正尚

ガスパリーナのレティタティーボ:
Cara la mia Venezia,
Me dezpiazera certo de lazzarla;
Ma prima de andar via voi zaludarla.

ここから歌が始まる。
Bondi Venezia cara
Bondi Venezia mia,
Venezziani zioria.
ここで若干の合唱。

再びガスパリーナの歌。
Bondi, caro Campielo,
No diro, che ti zii bruto, ne belo.
Ze bruto ti ze zta, mi me dezpiaze:
No ze bel quel, ch'e bel, ma quel che piaze.

ここで合唱、同じ歌詞を繰り返す。
終わりの方でガスパリーナが加わり、最後は
bondi, bondi.
で終わる。

buondiはbuongiornoと同じ意味の挨拶語。bondiは多分そのベネチアなまりかあるいはベネチア語。ここではさよならの意味なんだろう。Venezzianiは複数形への形容詞「ベネチアの」。zioriaは多分signoriaがなまったもの。トスカーナ語とか、ベネチア語とか、なまりも入っているらしく何が何やら分からないけれど...

序曲、2つの間奏曲にはこのbodi venezia caraのメロディが使われていてそれぞれ別々のイメージで変奏される。多分、朝、昼、夜のイメージなんだろう。

なんかこのメロディーの揺れはなんなんだろう。ベネチアの海の揺れなのだろうか?

ベネチアを俯瞰したセピア色の地図を背景にして板と柱づくりの長屋が5件建てられている。そこを舞台にベネチアの人々の人情喜劇が展開される。衣裳はパステルカラーのゆっくりとした印象の色合いで、美しい歌に良く似合っている。アンゾレートとルシエータがやりあう場面では何かプッチーニっぽい音が引用されたように思ったが、何だったかは分からない。2幕目終わりは金銀の紙切れを降らせて豪華に終わる。最後は、ちょっとベネチアになじんでいなかった感じのガスパリーナが、ベネチアへの思いを歌にしたbodi venezia caraを歌う。最後のささやかな逆転劇。ずっと喜劇を見て来て、最後にこの歌を聴くところがいいんだな。

演奏は美しく優しい。強さもあって、そろっていて、うまい。sol, solとかいう舞踏曲の途中で多分ユーフォニアムと木管がずっこけながら演奏するところがあるけれど、それを除けば弦も管も打楽器も上手だ。謎のオーケストラで、この名称のオーケストラを聴くのは2度目。多分、一応、新国立劇場専属楽団なのかな。指揮は柴田真郁。初めてイル・カンピエッロを聞いた2010.11.13のテアトロ・ジーリオ・ショウワでの公演の時も指揮は柴田真郁だった。

出演者が多いので各歌手の特徴がちょっとつかみずらい。砂田はしっかりとした強い声、宮地は端正な感じの声、吉田は高音が綺麗な軽い声。氷見は若者らしい強い調子のはきはきした声、清水と高橋は落ち着いた声。

合唱は、国立、昭和、桐朋、武蔵野各音大学生有志で全部で10名前後。

今は定住する人も少なく観光客だらけのベネチアだけれど、小さなマリブラン劇場の前はカンピエッロのようになっていた。中心街から外れているので人は誰も居なくて、そしてそこでイル・カンピエッロがかかっていたのを思い出す。スケジュールの都合で見られなかったけれど。Bondi, caro Campielo. Bondi Venezia cara.

18.03.11 新国立劇場、中劇場
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ローエングリン/東京文化会館(二期会)2018

2018-03-11 | オペラ
ローエングリン/東京文化会館(二期会)2018

作曲:ワーグナー、指揮:準・メルクル
演出:深作健太
美術:松井るみ、衣裳:前田文子
演奏:東京都交響楽団
出演:ローエングリン:小原啓楼、エルザ:木下美穂子
   テルラムント:小森輝彦、オルトルート:清水華澄
   ハインリヒ:金子宏、王の伝令:加賀清孝

透明なビニールのような素材で覆われて、鉄パイプらしきもので組まれた大きな壁が2個。これが主要な装置で、これを幕ごとに移動させて雰囲気を変えていた。壁の中に光源があるようで舞台照明に合わせて時々光っていた。上手には小さなノイシュバイシュタイン城の模型。それぞれ舞台終盤に崩れ墜ちる。壁はみずぼらしく、城の模型は矮小である。権力の脆弱さや矮小さを表現していたのだろうか?崩壊前後の落差があまりなくて、崩壊のインパクトは弱かった。

舞台手前の横の位置に複数の点からなる、もしかしたらLEDかも知れない強力な光源があって、それが天井の反響板を照らしていた。これによって客席が間接照明されていて、照明効果が客席にまで及んでいた。

開幕と同時に見えるのは大きな三角形の床で、その中央が外側と同型の三角形にくり抜かれている。表面にパイプのようなものがはりめぐらされていて、ゲームのホライゾン・ゼロドーンの機械炉で見たようなデザイン。SFにありがちな雰囲気のものである。この中央部分に白い服の少年がうずくまっているが、すぐにこの床は釣り上げられて天井に変化する。最後の場面ではこれが降下して来て、下に居た人々を押しつぶすような形になり、その中央に少年が立って、劇が終わる。

権力の繁栄と崩壊、建設と破壊といったような人類史にみられるアニーリング「焼きなまし法」をテーマにしていたように思えた。

小原は朗々として情感豊かな声だった。木下はビブラートのある強く美しい声で、劇場全体に響いていた。清水の声には迫力があり、エルザを篭絡する時の高い声も、普段の低い声も両方しっかりとしていた。芝居と声に悪辣さがあり、隻眼の衣装が良く似合ってカッコ良かった。小森、金子、加賀はぞれぞれ安定した声。全員、声量があって、迫力のあるオーケストラに負けていなかった。

衣裳ではウエディングドレスが豪華絢爛だった。腰のところに黒が入ったデザインで締まって見える。気合いのドレス。

ローエングリンの間奏曲として有名な曲は3幕目への間奏曲で、それに引き続いて、3幕目冒頭で結婚式で良く使われる合唱曲が登場する。

演奏は迫力に満ちた強い演奏だった。

18.02.25 東京文化会館
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夕鶴/新宿文化センター(日本オペラ振興会)2018

2018-03-10 | オペラ
夕鶴/新宿文化センター(日本オペラ振興会)2018

作曲:團伊玖磨、指揮:園田隆一郎、演出:岩田達宗
美術:島次郎、衣裳:半田悦子
演奏:東フィル
出演:お馬:伊藤晴、与ひょう:中鉢聡、
   運ず:清水良一、惣ど:豊嶋祐壹

中央部分を大きく雲形にくりぬいた板を舞台正面に置き、その奥に小さな農家の一部屋を再現した美術。色合いは渋く彩度の低いもので、いくらか日本昔話アニメ風の作りだった。衣裳も同様に地味な色合い。雪をたっぷり降らせて楽しい。

伊藤はピュアで強い声。白い鶴に良く似合う。中鉢は演劇的な強いテノールの声。清水はコミカルで、豊嶋に迫力があった。それぞれしっかりした声だった。

演奏は力強く良く揃って美しかった。ハープ、弦楽器、管楽器、それぞれ美しかった。間奏曲の間の機織りの音をハープと打楽器で表現していて、それが印象に残った。

18.02.18 新宿文化センター
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